家づくり
2024年2月9日更新
景観・プール・近所付き合い|付加価値の高い集合住宅を[家づくり 発想変えるヒント](11)
土地と建築費の値上がりが止まらない。昨年の沖縄県の基準地価の上昇率(全用途)は4.9%で全国トップだった。10年前と比べると、那覇の地価は1.6~1.7倍になり、鉄筋コンクリート造住宅建設費も約1.5倍になっている。しかし、県民所得は数パーセントしか上昇していないため、住宅の購入が難しくなっている。
家づくり
景観・プール・近所付き合い
付加価値の高い集合住宅を
土地と建築費の値上がりが止まらない。昨年の沖縄県の基準地価の上昇率(全用途)は4.9%で全国トップだった。10年前と比べると、那覇の地価は1.6~1.7倍になり、鉄筋コンクリート造住宅建設費も約1.5倍になっている。しかし、県民所得は数パーセントしか上昇していないため、住宅の購入が難しくなっている。
かつては、一生に一度の住宅づくりということで家主の肝いりで、個性あふれる夢の住宅造りが多かった。しかし今、建設場所が市街地から離れた郊外に移り、その土地も住宅床面積も小さくなった。以前は鉄筋コンクリート造が多かったが、最近はコスト面から箱型の木造や平屋も増えている。一方、マンションも土地と建設費の高騰で専有坪単価が200万円を超え、販売価格を抑えるために住戸面積が小さく単純化されている。つまり、LDKや水回りは同じでも個室や収納がコンパクトになっている。そして住戸プランもどこも似たり寄ったりで全てコスト優先の結果だ。かつては豪華さを連想させるような植栽庭や子供たちの遊び場もあったが、最近は植栽もなく駐車場だけが並ぶものが多い。
浦添大平にあった4階建て12戸のメゾネット式アパート。17坪の極小住戸だが、広めのテラスや緑、内部の吹き抜けによって狭さを感じさせない。オープンな住戸は住人のお気に入りだった
メゾネット住戸の吹き抜け
確かに、庭付きの戸建住宅は手の出しようがないほど高根の花となってしまった。私は既存市街地に立つ集合住宅をもっと拡充すべきと考える。なぜなら、宅地不足、少子高齢化、中心市街地の空洞化などの都市や環境、そして交通問題を抱える既存市街地を再生するような賃貸や分譲マンションを造るべきだと考えるからだ。近い将来の人口減少も考慮し、お互いが支え合って楽しく暮らしていけるコミュニティーを育む建物づくり・街づくりが大切である。
写真は読谷と浦添に立てた集合住宅だ。前者は見晴らしの良い景勝地にあって、半地下に温水プールがあり日常的に利用できる。後者は特別の建築仕掛けはないが、住民同士が出会い、親しく近所づきあいができ、時にはバーベキューの食事会をする。どちらも住戸面積そのものは小さくローコストだが、お金では買えない、心地よく楽しい生活感を感じられる高付加価値のついた住環境の建物だ。
ふくむら・しゅんじ
1953年滋賀県生まれ。関西大学建築学科大学院修了後、原広司+アトリエファイ建築研究所に勤務。1990年空間計画VOYAGER、1997年teamDREAM設立。沖縄県平和祈念資料館、沖縄県総合福祉センター、那覇市役所銘苅庁舎のほか、個人住宅などを手掛ける
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1988号・2024年2月9日紙面から掲載
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