家づくり
2025年7月18日更新
AI活用 在宅介護にも[介護を支える 住まいの工夫㊼]
7月4日、5日に沖縄県総合福祉センターで「福祉機器展2025」が開催された。介護現場で活用される最新の福祉機器が集結。特に介護の新時代を切り開くAIを活用した製品には注目が集まった。

AI活用 在宅介護にも
沖縄最大の福祉機器展毎年、多くの家族介護者や介護関係者でにぎわう「福祉機器展」。今回は全国から56社の福祉機器メーカーが参加し、それぞれの最新技術を披露した。
そのうち、約20社以上が「防災にも役立つ商品」を提案。近年の自然災害の増加を受け、平常時の介護支援だけでなく、緊急時にも対応できるものへの需要が高まっていることを示した。停電時でも稼働するトイレなど、各メーカーは防災関連商品を積極的にアピール。福祉業界全体で「災害に強い介護環境づくり」に注力していることがうかがえた。

県総合福祉センターに全国から56社の福祉機器メーカーが集い開催された「福祉機器展2025」。医療・福祉の関係者や学生をはじめ介護に関心を持つ人々で賑わった
見守りロボットに注目
今回の展示会で特に注目を集めたのが、(有)テレマーケティング沖縄が扱う「在宅用見守り介護ロボット まもる~のONE」。ZIPCARE社が開発したもので、在宅介護の現場に革新をもたらすものとして、国内外から高い評価を受ける。
「まもる~のONE」は、センサーを使って利用者の心拍や呼吸、体動を24時間モニタリングし、異常を検知すると家族や介護者のスマートフォンに通知する仕組みだ。メーカー担当の仲本翼さんは「従来は介護士の経験と勘に頼っていた利用者の状態把握が、データに基づいた客観的な判断に変わることで、介護の質の向上と効率化、標準化が期待できる」と説明する。
特に注目されているのは、今後実装が予定されている人工知能(AI)を活用したデータ分析機能で、現在開発が進められている。「今までは介護士がデータを見て、その人の変化を判断していたが、製品の側からアセスメントする機能を搭載した」。利用者の行動パターンの変化から認知症の兆候や床擦れのリスクを早期に発見できるという。
沖縄で同製品の普及を目指すテレマーケティング沖縄代表の国吉一さんは「月額4500円という手頃な価格設定に加え、専用の送信機を組み合わせることで在宅ナースコール機能も実現でき、施設レベルの見守り体制を一般家庭でも構築できるようになる」と力を込める。

多くの人が関心を寄せた「在宅用見守り介護ロボット まもる~のONE」。国吉さん(右)と仲本さんが次々とくる質問に答えていた
展示会では在宅介護の可能性を広げる製品が数多く展示された。特にAIとIoTを活用した次世代の見守りシステムは、高齢化が進む沖縄でも重要な役割を果たすと期待される。
進化する福祉機器によって、在宅介護の負担軽減と質の向上につながれば、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせる社会の構築にもつながる。
県総合福祉センター1階では福祉機器の常設展示場があり、誰でも見学し、試すことができる。介護の不安や負担軽減のためにも、積極的に活用したい。

トイレや食品など介護用だが防災にも役立つ商品も数多く提案された
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2063号・2025年7月18日紙面から掲載