街並みつくる外観 コストかけず魅力的に| 光でつくる美しいファサード[家づくり 発想変えるヒント]⑧|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

家づくりのこと

家づくり

2023年11月10日更新

街並みつくる外観 コストかけず魅力的に| 光でつくる美しいファサード[家づくり 発想変えるヒント]⑧

建物を建てる場合、建築基準法によって道路に面して建てなければならない。つまり道路に面する建物の外観・ファサードの集合が街並みを構成する。一戸建てが多い日本では街並みの景観の良しあしが住宅のファサードにかかっている。

街並みつくる外観 コストかけず魅力的に
光でつくる美しいファサード

建物を建てる場合、建築基準法によって道路に面して建てなければならない。つまり道路に面する建物の外観・ファサードの集合が街並みを構成する。一戸建てが多い日本では街並みの景観の良しあしが住宅のファサードにかかっている。

かつて沖縄の集落では、豊かな自然の中にあって敷地も広く個々の建物は個性的ではないが、石垣や防風林、そして赤瓦やかやぶき木造住宅が並ぶ美しい街並みがあった。しかし、戦後の都市化と自由度のある鉄筋コンリート造に移り変わり、住宅の規模も形も色も多様な住宅が出現した。その街並みを見て、乱雑・カオスだと嘆く人もいれば、これこそが沖縄のチャンプルー文化だと言う人もいる。景観に携わる関係者は、街並みを良くするために沖縄らしさを醸し出す琉球石灰岩や花ブロック、赤瓦や緑の前庭などを付加したファサードを推奨する。しかし土地や建設費の高騰によって敷地が狭くなり、それらの建築資材を使う経済的ゆとりがなくなっている。
 

昼のファサード。玄関上の大きなパティオ開口と飛び出した庇
 
ファサードの夜景。諸室とパティオの明かりが外部に漏れる
 
LDKから見るパティオと子ども部屋3室
 
パティオに開いた、勾配天井の明るく広いLDK
 
半戸外のパティオには自然光が差し込み、風が通り抜ける


無表情な外観増え

最近の住宅には緑の前庭もなく舗装された駐車場だけがあって、玄関ドアと開口部の少ない大きな壁面のファサードの住宅が増えている。それは建設コスト高騰を理由に、外構や外観より住宅内部を重視し、防犯や外部の環境悪化から住まいを守るために開口部を減らし、空調や照明設備に頼る住み方に変わりつつあるためだ。それに、生活感がない無表情なファサードのほうがよりデザイン的だと考える建築士も多い。

さまざまな住宅が並ぶ街も夜になるとその煩雑さが闇に消える。かつては、家族だんらんの笑い声や三線の音、部屋から漏れる光、時には料理の匂いなどが道路に漏れ、街らしさを感じたが、最近は減った。今の時代、小規模な住宅のファサードの設計は実に難しい。沖縄の街並みをよりよくする決定打は今のところ考えつかないが、光の演出はスペースやコストをかけずにできるのではないか?

写真は本島中部の新興住宅地に立つ鉄筋コンクリート造の平屋だ。前面に4台の駐車場があり庭はないが、家の中央に半戸外のパティオがあって、諸室はそこから自然の光や風を導くと同時に、屋根の庇(ひさし)と夜景が住み手のセンスの良さと街への心遣いを表す。



[沖縄・建築探訪PartⅡ]福村俊治
ふくむら・しゅんじ
1953年滋賀県生まれ。関西大学建築学科大学院修了後、原広司+アトリエファイ建築研究所に勤務。1990年空間計画VOYAGER、1997年teamDREAM設立。沖縄県平和祈念資料館、沖縄県総合福祉センター、那覇市役所銘苅庁舎のほか、個人住宅などを手掛ける

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1975号・2023年11月10日紙面から掲載

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2128

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る