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2023年8月11日更新

人と自然、人と人つなぐ空間づくりに重点を|「もの」でなく「空間」で沖縄らしさ[家づくり 発想変えるヒント]⑤

今、沖縄の住宅づくりで「沖縄らしさ」が問われている。街並みや景観を考えた、沖縄特有の建材である赤瓦屋根や琉球石灰岩や花ブロックなどを使った建築意匠だ。

人と自然、人と人つなぐ空間づくりに重点を
「もの」でなく「空間」で沖縄らしさ

今、沖縄の住宅づくりで「沖縄らしさ」が問われている。街並みや景観を考えた、沖縄特有の建材である赤瓦屋根や琉球石灰岩や花ブロックなどを使った建築意匠だ。また環境へのやさしさと快適さを求めて、太陽光パネルやLED照明、省エネ空調などの住宅設備機器、そして環境負荷を小さくする塗料や断熱材、サッシ、ガラスなどの新しい建築資材を採用している。沖縄らしい快適な住宅をつくろうとするほど建設コストがかかることになる。

沖縄の住宅の歴史を振り返ると、そもそもは茅葺(かやぶ)き、もしくは赤瓦葺きの開放的な木造住宅だった。それが沖縄戦や台風で失われ、戦後身近な米軍基地から新しい造り方をまねた。閉じた箱の鉄筋コンクリート住宅は沖縄の高温多湿の気候風土に合わなかったが、資材の種類が少なくて入手しやすく、しかも台風や火事に強いために急速に普及した。その後、住みづらい閉じた箱のコンクリート住宅をより良くするために、前述した沖縄特有の建築資材や、新しい設備機器・資材といった「もの」を付加することが推奨されている。
 
読谷村に立つ住宅。住宅の中央に大きな開口と屋根を持つ半戸外スペースがある
読谷村に立つ住宅。住宅の中央に大きな開口と屋根を持つ半戸外スペースがある
 
室内と半戸外と外部が連続する沖縄らしい空間。大きな北側開口から緑が見え、風や光が入る快適なところ。多くの人が集う場でもある。床は石とタイル張り
室内と半戸外と外部が連続する沖縄らしい空間。大きな北側開口から緑が見え、風や光が入る快適なところ。多くの人が集う場でもある。床は石とタイル張り
 
住宅の夕焼け時の夕景。シンプルな外観だが照明が美しいシルエットをつくる
住宅の夕焼け時の夕景。シンプルな外観だが照明が美しいシルエットをつくる
 
普段は室内と半戸外スペースがアルミ引き込みハンガー戸によって区切られている
普段は室内と半戸外スペースがアルミ引き込みハンガー戸によって区切られている
 
アルミ引き戸が収納されて、内部と外部が一体となり、沖縄らしい空間を作る
アルミ引き戸が収納されて、内部と外部が一体となり、沖縄らしい空間を作る

住宅中央の半戸外スペースは中村家の室内に囲まれたナー(中庭)と同じ空間
住宅中央の半戸外スペースは中村家の室内に囲まれたナー(中庭)と同じ空間
 
北中城にある伝統的木造住宅の中村家の空間構成。室内、雨端、中庭の空間構成
北中城にある伝統的木造住宅の中村家の空間構成。室内、雨端、中庭の空間構成


「仕掛け」のある住宅を

私はかつての伝統的住宅の復活を求めるものではないし、住宅設備のみに頼って快適性を求めるものでもない。なぜなら現在、伝統的木造住宅をつくることは経済的・技術的にも容易でなく、住みづらさもあると思うからだ。また、高気密高断熱のために窓を小さくした閉じた家で、年中空調や照明などの設備機器に頼る生活も味気ない。年に何度かの暴風雨や肌寒い日、猛暑の日があるが、日常的に心地よい風が吹き温暖な亜熱帯気候の沖縄では、広く窓を開け、風を受けながら外の緑を見たい。そして人を招きたい。つまり、外部環境の良い日には開き、悪い日には閉じるような「仕掛けのある住宅」が良い。言い換えれば外と内をしっかり区切って沖縄らしさや快適性のために「もの」を付加し、常に「もの」に頼ってコストをかけるのではなく、人と自然、人と人をつなぐ沖縄らしい「空間」をつくることに重点を置くほうがコスト的に安上がりと考えている。心地よい自然や人とのコミュニティーを享受できる「空間(スペース)」を持つ住宅こそ、先人が長年かかって育んだ沖縄の伝統的住宅の建築文化だ。



[沖縄・建築探訪PartⅡ]福村俊治
ふくむら・しゅんじ 1953年滋賀県生まれ。関西大学建築学科大学院修了後、原広司+アトリエファイ建築研究所に勤務。1990年空間計画VOYAGER、1997年teamDREAM設立。沖縄県平和祈念資料館、沖縄県総合福祉センター、那覇市役所銘苅庁舎のほか、個人住宅などを手掛ける

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1962号・2023年8月11日紙面から掲載

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