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2023年9月8日更新

工事費は面積に比例 ムダを省いてコンパクトに|外とつなげ広さも見せ場も[家づくり 発想変えるヒント]⑥

建築設計の中で最も難しいのは住宅だ。多くの家主は次のような要望を持つ。立派に見え、使い勝手がよく、快適な生活ができ、広くゆとりがあって、子や孫そして多くの知人友人が集まり、耐久性があって、維持管理が楽で、将来の改装にも応えられるなど。

工事費は面積に比例 ムダを省いてコンパクトに
外とつなげ広さも見せ場も

建築設計の中で最も難しいのは住宅だ。多くの家主は次のような要望を持つ。立派に見え、使い勝手がよく、快適な生活ができ、広くゆとりがあって、子や孫そして多くの知人友人が集まり、耐久性があって、維持管理が楽で、将来の改装にも応えられるなど。つまり建築士は、与えられた敷地と予算で多くの要望を満たす住宅を家主と一緒に実現しなければならない。住宅は家主にとって人生を賭けた夢だ。また、設計の工夫やアイデアで、安くてより良い設計をするのが腕の見せどころでもある。

家主の要望を満たすためには、普通でない建築のテクニックが必要だ。長年こんな要望の住宅ばかりを悩みに悩んで設計し続けてくると、四角い箱の住宅はどこか物足りない。家主と一緒にあれこれ議論していると、意外と新たな工夫やテクニックのアイデアが出てくるものだ。そんなアイデアが感動的な建築空間を生み出し、まさに「どこにもない自慢の住宅」となる。

住宅の工事費は基本的に面積規模に比例する。家主の多くの要望をそのまま聞き入れると広い面積の住宅になってしまうから、床面積をコンパクトにまとめることが基本だ。つまり、廊下など無駄なスペースをできるだけ少なくし、細かく部屋を仕切らないこと。時には可動間仕切りなどによってワンルームになるような工夫も大切だ。

温暖な沖縄なら室内を補完する半戸外スペースを生活に活用するのも大切だ。最近は、防犯や省エネのために窓が小さく閉じた住宅が増えつつあるが、うまく外と連続する開口部を作れば、室内が広く感じられ、その家の「見せ場」となる魅力ある空間づくりができる。
 
この住宅の一番の見せ場。母屋のリビングルームの大きな開口から、木造赤瓦葺きの離れが見える
この住宅の一番の見せ場。母屋のリビングルームの大きな開口から、木造赤瓦葺きの離れが見える
 
住宅の外観。RC造の母屋と木造の離れが並ぶ
住宅の外観。RC造の母屋と木造の離れが並ぶ
 
母屋のリビングルームから離れ側を見る。左はテラス
母屋のリビングルームから離れ側を見る。左はテラス
 
母屋のリビングルームから室内側を見る。奥は主寝室
 
離れの和室。6畳ほどの広さ
離れの和室。6畳ほどの広さ

離れの雨端。下に照明がある
離れの雨端。下に照明がある
 
大勢が集えるテラスで手打ちそばパーティー
大勢が集えるテラスで手打ちそばパーティー


沖縄の良さ取り込む

写真の住宅は自然の残る本島南部の郊外に立つ。那覇市街地で長年仕事一筋に忙しく生きてきた夫婦の老後を楽しむ住宅だ。家に居ながらにして常に沖縄を感じたい、沖縄の海や緑や空の素晴らしさを感じたいという家主の強い要望があった。コンパクトなLDKと寝室が連続するワンルームの母屋と、木造赤瓦葺きの離れの2棟建てとした。そして、両方の棟には室内の狭さをカバーする広い半戸外のテラスと伝統的な雨端を設けた。沖縄のありったけの良さを室内に取り込んだ自慢の住宅だ。



[沖縄・建築探訪PartⅡ]福村俊治
ふくむら・しゅんじ 1953年滋賀県生まれ。関西大学建築学科大学院修了後、原広司+アトリエファイ建築研究所に勤務。1990年空間計画VOYAGER、1997年teamDREAM設立。沖縄県平和祈念資料館、沖縄県総合福祉センター、那覇市役所銘苅庁舎のほか、個人住宅などを手掛ける

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1966号・2023年9月8日紙面から掲載

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