家づくり
2023年10月13日更新
吹き抜け・ホール・らせん階段・天窓| 集まりたくなる バリアフリーの家[家づくり 発想変えるヒント]⑦
20年ほど前、本島中部の住宅密集地に写真の住宅を設計した。家主はハンディキャップのある初老の女性。
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吹き抜け・ホール・らせん階段・天窓
集まりたくなる バリアフリーの家
20年ほど前、本島中部の住宅密集地に写真の住宅を設計した。家主はハンディキャップのある初老の女性。沖縄戦、本土復帰など激動の沖縄で、両親や家族を支えて教職の仕事をしてきたが、50歳で突然倒れ半身不随の体になった。長期の入院生活と家に引きこもった療養生活で、いつの間にか社会との間に大きなバリアーができ、多くの知人友人や教え子との交流の機会を失い、最愛の両親も亡くなった。閉め切った木造セメント瓦ぶき住宅で、訪れる人もなくヘルパーさんの助けに頼る閉じこもりの生活が続くことになった。
ある日、自立して生きていける家づくりを思い立ち、設計を依頼してきた。家主のこれまでの人生や日常生活の細かい事などさまざまな話を聞きながら、希望するバリアフリーの家づくりが始まった。家主は機能性一辺倒のバリアフリー住宅でなく、多くの人々が訪れ語り合い、自分が身障者であることを気にせず元気な時のように楽しい生活を誘発する住宅を望んだ。
吹き抜け・天窓・階段のある楕円形のホール。大勢が集える広さがある
多くの人が集まった竣工パーティー
このカウンターにいつも知人友人が集う
家主が参加する教会の出張礼拝
知人がこの住宅で催したピアノ演奏会
椅子に座ったままで作業できるキッチン
庭の見える寝室、家中に手すりが巡る
手すりがたくさんついたバスルーム
3階の書斎・展望室にはEVとトイレがある
手すりがたくさんついたバスルーム
3階の書斎・展望室にはEVとトイレがある
仕掛け満載
敷地は約4メートルの段差のある不整形の土地。高い方に駐車場・玄関・和室を設けた。低い方にはダイニング・キッチンと楕(だ)円(えん)形のホールを中心に、寝室やバスルーム、勝手口などを配置。それらすべてを大きな吹き抜けと長く緩やかな階段、ホームエレベーター(EV)で結ぶことにした。
玄関上の3階には展望室を兼ねた書斎があり、街や遠くの海も眺めることができた。ホールのらせん階段は段差が小さいリハビリ用階段で、両側に手すりがある。天井には円形のトップライトがあり、差し込む陽光が室内を巡る日時計だ。家主は食卓と一体になったキッチンカウンターに座り、接客や食事、テレビや音楽を楽しみながら1日を過ごす。トイレは各階にあり、手すりは家中に設置されているが目立たないようにしている。オール電化で玄関や勝手口はオートロック、緊急を知らせる非常用ボタンも取り付けた。
一日中照明と空調をつけ外界とはつながりのない閉じこもりの生活から、多くの人々が出入りするカフェのような明るい住まいになった。外出しづらいなら人が訪ねて来やすい家にすればいい。さまざまなハンディを乗り越え、第二の開かれた人生が始まったようだった。
ふくむら・しゅんじ
1953年滋賀県生まれ。関西大学建築学科大学院修了後、原広司+アトリエファイ建築研究所に勤務。1990年空間計画VOYAGER、1997年teamDREAM設立。沖縄県平和祈念資料館、沖縄県総合福祉センター、那覇市役所銘苅庁舎のほか、個人住宅などを手掛ける
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1971号・2023年10月13日紙面から掲載
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