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2024年9月27日更新

【第10回沖縄建築賞】タイムス住宅新聞社賞|「自然との境界」(名護市)|畠山武史氏(49)|(株)クレールアーキラボ

県内の優れた建築物や建築士を顕彰する第10回沖縄建築賞(主催・同実行委員会)は9月13日、全20作品(住宅11作品、一般7作品、リフォーム・リノベーション・コンバージョン2作品)の中から入賞作品9点を決定した。


深い軒がある通路に沿うよう、やんばるの在来植物を植えた坪庭がある。軒と壁、壁と地面の間にはスリットを設け、日差しと風を室内に呼び込む



タイムス住宅新聞社賞
「自然との境界」(名護市)


内外つなぎ 自然存分に

軒の深い通路に坪庭

「自然との境界」は不動産会社のオフィス。畠山氏は「建物を単なる箱としてではなく、外部とつながる有機的な空間になるよう計画。建物の魅力を最大限引き出すことにつなげた」と話す。

建物は勾配屋根とし、敷地の中央に残る大木に面するよう、開口部を西側に大きく設けた。室内からの眺めをよくし、既存の植物を借景として取り込んだほか、クロキなどを新しく植栽した。「建物は既存の樹木を伐採せず、自然に寄り添うように配置した」。

建物内部の通路は軒の深い外部空間とし、沿うように坪庭を設けた。やんばるの在来植物と本部産の石を積み、空間を演出している。「建物内に外部空間を取り込むことで、光や影、風、雨を感じられる曖昧な空間が生まれる」。坪庭を囲む東側の壁は上下にスリット(隙間)を設けて、風と日差しなどを室内に取り込む。

審査では「植生と建物の相乗効果を引き出す絶妙な計画。植栽されたクロキなどと既存の樹木のバランスに加え、開口部や外部空間で建物の内外をつなげる、巧みな技が随所に光っていた」と高く評価された。
 


大木を望む開口部は勾配屋根から影が落ちるよう、計画されている
 


敷地の中央に元々あった大木が目を引く
 


建物近くにはクロキなどを新しく植えている


断面図

 

設計者/畠山武史氏(49) (株)クレールアーキラボ


このたびタイムス住宅新聞社賞をいただき、大変光栄に思います。本作品は建築が自然の一部として存在することを目指しました。既存の樹木を可能な限り残し、建物の内部と外部の境界を曖昧にすることで、自然と共生する空間を創り出す設計を心がけました。この提案を受け入れていただいた、施主さまならびに施工関係者さま、そしてチームの皆に感謝いたします。今回の受賞を励みに、今後も沖縄の建築や環境に貢献できるよう、一層努力してまいります。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


審査講評・小倉暢之氏(琉球大学名誉教授)


建築士の繊細な感覚・技光る

この建物は自然環境の魅力をいかにオフィス空間に取り込むかが大きなテーマであることから、室内両側に大きな開口部を設け、開放感に満ちていた。室内に続く通路の庇と坪庭が壁面と一体になって心地よい半戸外空間を形成している。

この通路は内部でもなければ全くの外部でもなく、何となく自然との曖昧な境界を成している点が魅力的。殊に庇と壁面の間にあるスリットから入る自然光が坪庭と室内を照らす仕掛けは巧みな技である。

道路側の大きな開口部は敷地入り口から視覚的にも内部空間へと自然に誘導しており、敷地環境との一体感が読み取れる。さらに、打ち放しコンクリート仕上げの躯体と木製建具の組み合わせは細部の収まりまで注意が払われ、建物内外に新たに植えた植物の配置にも作者の繊細な感覚が表現されている。

自然環境との調和を図る優れた設計内容はタイムス住宅新聞社賞にふさわしい作品である。



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◇古谷誠章審査委員長から総評
入選作品紹介

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2021号・2024年09月27日紙面から掲載

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