沖縄建築賞
2024年9月27日更新
【第10回沖縄建築賞】古谷誠章審査委員長から総評
古谷誠章氏による、第10回沖縄建築賞の総評。
古谷誠章審査委員長(建築家・早稲田大学教授)
地域や気候に寄り添う建築
今年は昨年同様、単に沖縄らしいという範疇を超えて、気候や建設条件の厳しい沖縄だからこそ先駆けて、世の中に一石を投じようとする果敢な作品が多かったと思う。
世に先駆け 一石投じる作品
住宅建築部門の正賞「亜熱帯のいえ」は敷地の高低差を生かし、コンクリートの外郭と木構造を入れ子にした住宅。台風や強い日射などを巧みに緩衝しながら、絶好の景観を取り込む設計密度の高い傑作。そのほか、住宅部門では沖縄の気候風土に適合させつつ、ZEHを達成した「ミニマル×マキシマル」が価値ある挑戦だった。
一般建築部門の正賞は「コンクリートを結う 琉球調理製菓専門学校」。建主が型枠業を営むこともあり、コンクリートを編んだようなファサードが圧巻であった。僅差で正賞を逃した「自然との境界」は自然と建築を結びつけており、結果としてタイムス住宅新聞社賞を受賞した。
新設されたリノベ部門の2作品のうちでは「瀬底の家」が琉球古民家を改修しただけでなく、移住者が居を構えたこと自体がこの地域をリノベーションするものとして、私としては高く評価したいと感じた。
他の入選作もそれぞれに示唆に富む佳作であった。
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【第10回沖縄建築賞】
◆住宅建築部門 正賞「亜熱帯のいえ」(豊見城市)
◆一般建築部門 正賞「コンクリートを結う 琉球調理製菓専門学校」(浦添市)
◆タイムス住宅新聞社賞「自然との境界」(名護市)
◆奨励賞 住宅建築部門「継承する家」(宮古島市)
◆奨励賞 住宅建築部門「ミニマル×マキシマル」(沖縄市)
◆奨励賞 一般建築部門「勝連のリゾートオフィス」(うるま市)
◆奨励賞 一般建築部門「緑庭のメディカルケア」(沖縄市)
◆奨励賞 リフォーム・リノベーション・コンバージョン部門「わんさか大浦パーク」(名護市)
◆奨励賞 リフォーム・リノベーション・コンバージョン部門「瀬底の家」(本部町)
◇古谷誠章審査委員長から総評
◆入選作品紹介
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2021号・2024年09月27日紙面から掲載