沖縄建築賞
2024年9月27日更新
【第10回沖縄建築賞】奨励賞 住宅建築部門|「継承する家」(宮古島市)|畠山武史氏(49)|(株)クレールアーキラボ
沖縄県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」。ここでは奨励賞を受賞した6作品の1つ「継承する家」を紹介する。
敷地にもともと生えていた植物を残すために分棟にして建物を配置した
奨励賞 住宅建築部門
「継承する家」(宮古島市)
既存の植物生かし建物配置
高さ抑えた分棟に
畠山氏が設計した「継承する家」は、宮古島の古くからの集落の中に位置する。
自然豊かな島を気に入ってこの土地を購入した施主の思いを汲み、もともと生えていた木々を避けるようにして建物を分棟スタイルで配置した。敷地の中央にあったソテツとリュウキュウマツを核とし、最もよく見える場所にLDKの棟を据えた。LDK棟と浴室やトイレなどの水回りを有する棟、寝室のある棟は室内から行き来できる。離れの棟だけが、完全分離になっている。各棟は高さを抑えて、周辺環境になじませた。
畠山氏は「土地に対し素直に建物を配置して、その土地の魅力を最大限に残した。さらにその魅力を、視線の抜けや自然環境と一体になるような建築でより引き出すように計画した」と説明した。
畠山氏は今回、タイムス住宅新聞社賞も受賞した。審査員からは「自然環境と建築の調和が巧み。示唆に富んだ作品である」と、2作品とも高く評価された。
LDKの大開口からは庭の核であるソテツやリュウキュウマツがよく見える
LDKは2方向から風と視線が抜ける
設計者/畠山武史氏(49) (株)クレールアーキラボ
このたび奨励賞をいただき、誠にありがとうございます。本作品では、宮古島の豊かな自然と調和する住空間を目指しました。既存の植物を生かし、自然と建築が一体となる設計が評価されたことを大変うれしく思います。
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審査講評・小倉暢之氏(琉球大学名誉教授)
建築と自然との調和が秀逸
既存樹木をほぼそのまま生かし、豊かな住環境を作り上げた。敷地周辺には御嶽の林や高い樹木の列があり、借景にもなっている。敷地中央にある大きなソテツとリュウキュウマツを室内から眺められるように住居棟を配置。ソテツの背面には独立した離れを設けて、ソテツ外周をグルッと回ることで敷地全体を散策できるようになっている。
離れからの眺望は、住居棟とは趣を異にした活動的で伸びのある風景。唯一、新たに植えたのは駐車場と離れの間にあるヤシで、来訪者の視線を捉えるアクセントとなっている。
ソテツを中心にし、室内からの視線、日当たりに応じた向き、風の流れといった要素が巧みに処理され、継承された植栽の豊かさが室内に効果的に反映されている。また、コンクリ打ち放し仕上げは経年変化と共に植栽になじませようという意図が込められている。
同作品は建築と自然環境との調和を考える上で示唆に富む優れた内容である。
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◇古谷誠章審査委員長から総評
◆入選作品紹介
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2021号・2024年09月27日紙面から掲載