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2024年9月27日更新

【第10回沖縄建築賞】一般建築部門 正賞|「コンクリートを結う 琉球調理製菓専門学校」(浦添市)|石川保氏(48))|(株)かみもり設計

県内の優れた建築物や建築士を顕彰する第10回沖縄建築賞(主催・同実行委員会)は9月13日、全20作品(住宅11作品、一般7作品、リフォーム・リノベーション・コンバージョン2作品)の中から入賞作品9点を決定した。


その名の通り、コンクリートを「結う」のように造られた格子。この格子が日射を遮り、外からの視線もゆるく遮る。同格子には光沢のある撥水(はっすい)塗装を施している



一般建築部門正賞
「コンクリートを結う 琉球調理製菓専門学校」(浦添市)


高い技術で街をつなげる

格子は現場打ちで製作

外周4面をコンクリート格子で囲ったデザインが特徴的な「コンクリートを結う 琉球調理製菓専門学校」は、沖縄都市モノレール・てだこ浦西駅近くの新しい街区に建つ。「この建物が街ににぎわいを与え、今後建つ建物にもその思いがつながっていってほしいという、事業主の希望を表現した」と設計者の石川氏は説明する。

このコンクリ格子は、現場で型枠を造って生コンを流しむ「現場打ち」で製作した。「施工者は型枠業を主体としており、その高い技術力を生かした」。型枠の造り方や打設の手順を原寸大の模型を用いて検討し、「縦格子を造ってから横格子を製作。織物の縦糸と横糸を結うように造った」。

格子の内側にはバルコニーがあり、室内をぐるりと囲む。この格子とバルコニーが緩衝帯となって直射日光を遮り、近い将来、周辺に建つであろう建物からの視線を穏やかに遮る。また、同格子は消防隊の進入が可能な直径1㍍以上の開口を確保している。

室内空間はオープンスペースを中心にし、その周りに教室や実習室を配置。学生がクラスを超えて交流しやすい間取りになっている。

審査では「新しい街に建つということを思考した跡が伺える。コンクリ格子も、工場で製作したパーツを現場で組むのではなく、現場打ちというのが沖縄ならでは。沖縄の型枠の技術は高い。それをうまく生かしていて技術の継承にもなっている」と評価された。
 


コンクリート格子の内側にはバルコニーを配置。外との緩衝空間となっている
 


格子の縦部分の型枠をユニット化して、現場でクレーンで立て込んでいる
 


各階の中央にはホール(オープンスペース)を設けて学生たちの交流を促す。ホールを囲むように各教室を配置している

 


製菓実習室。同施設は製菓や調理の専門学校のため、普通教室に加えて実習室も複数有する


設計者/石川保氏(48) (株)かみもり設計


このたびは、大変栄誉ある賞を頂戴し、誠に光栄に思います。学校関係者の皆さまや、建設工事関係者の皆さまのお力添えあっての成果です。特に、難しいコンクリート工事について、設計段階から一緒に製作方法を検討していただいた現場監督や、困難な工事を丁寧な仕事で成し遂げてくださった職人の皆さまに、この場をお借りして感謝を申し上げます。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


審査講評・伊良波朝義氏(日本建築家協会沖縄支部支部長)


発展していく街に寄与する建築

敷地周辺の緑化や建物のセットバックにより、街区全体の潤いとにぎわいを生み出している。建物の外周4面は、人と人を結びつける「ゆい」をイメージし、コンクリートを編んだような格子のダブルスキン構造とし、外部と室内をつなぐ緩衝エリアとして機能させている。格子は、型枠業を主体とする施工者の高い技術力とその継承を考慮し、あえて現場打ちコンクリートによって高度な精度で仕上げている。

内部は、ホールを中心に教室や実習室、図書室、職員室などの諸室を配置したシンプルで分かりやすい構成。ホールは直接、外気に面さないが、壁面照明などを取り入れて暗さを感じさせない工夫も施されている。

周辺環境を読み解き、これから発展してゆく街に寄与する建築である。さらに沖縄の気候風土を反映し、時代性をふまえた企画力、機能性にも優れ、未来へつながる建築だと高く評価されたので、一般建築部門正賞を贈るものである。


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◇古谷誠章審査委員長から総評
入選作品紹介

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2021号・2024年09月27日紙面から掲載

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