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2024年9月27日更新

【第10回沖縄建築賞】奨励賞 一般建築部門|「緑庭のメディカルケア」(沖縄市)|平良和礼氏(42)|(株)渡久山設計

沖縄県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」。ここでは奨励賞を受賞した6作品の1つ「緑庭のメディカルケア」を紹介する。

日常的に医療ケアが必要な子どもたちの発達支援などを行う施設。随所の緑が地域の彩りになっている。2階には園庭があり、子どもたちが収穫などを楽しむ




奨励賞 一般建築部門
「緑庭のメディカルケ」(沖縄市)


地域に開く支援・ケア施設

植栽や収穫楽しむ

平良氏が設計した「緑庭のメディカルケア」は日常的に医療ケアを必要とする子どものケアや発達支援などを行う施設。屋上園庭や道路側に大開口を設けた。審査では「こうした施設は囲って利用者を守ろうとするところが多かったが、外に開き自然や地域とつながろうとする試みが新しい。このような施設が増えてほしい」と評価された。

1階は道路側に大きな窓を設けて内外から互いの様子が伺えるようにし、施主の掲げる「障害の有無に関係なく、だれもが互いを認め合い、支え合う思いやりの心」を育む造りにした。

2階には園庭や芝生がある。これらの植栽は利用者と一緒に手入れをしている。日除けのパーゴラ下では、誕生パーティーや収穫祭も楽しんでいる。同施設のスタッフは「利用日でなくても菜園を見に来るのが日課になっている子もいる」と笑顔で話す。

平良氏は「光、風、音、質感などを体感して、子どもたちの日常に豊かさを付加したい」と話した。
 


2階の園庭は、芝生や畑、パーゴラがあり子どもたちが自然を感じながら遊ぶ
 


指導・訓練室。道路に向けて開くことで、地域とつながる

 


設計者/平良和礼氏(42) (株)渡久山設計


誰もが互いを認め支え合う「共生社会の場」としての、施設の在り方や地域との関わり方について施主と対話を重ねました。施設の子どもたちや地域にとって彩りのある豊かな建築になったと感じています。医療ケア施設としても新しい提案ができたのでないかと思います。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


審査講評・仲本兼一郎氏(前回一般建築部門 正賞受賞者)


利用者や地域に優しい設計

周辺環境は古い住宅や古い店舗が並ぶ、ある種乾いた街並み。そこに、「緑庭のメディカルケア」を取り囲むみずみずしい緑が優しさを与えてくれる建築だと感じた。

もともと、この地域で古い住宅を改修して事業を行ってきたNPO法人の新たな施設。日常的に医療ケアが必要な子どもたちが利用しているが、のちのちは地域の子どもたちも学校帰りに立ち寄れるような施設にしたいと話していたことから、一つの建物が単体で完結するのではなく、地域に対して相互に良い影響を与えていくであろうと期待が広がった。

まだ開所して間もないが、すでに屋上庭園では野菜を収穫したとのこと。実際に使われている様子も、設計者の意図したもの、もしくはそれ以上に良い使い方をされていると感じた。

大きくはない建物だが、街や地域の人々に与える影響は大きく、巨大開発ではできない優しさを感じさせる設計である。


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◇古谷誠章審査委員長から総評
入選作品紹介
 

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2021号・2024年09月27日紙面から掲載

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