【第10回沖縄建築賞】奨励賞 リフォーム・リノベーション・コンバージョン部門|「瀬底の家」(本部町)|藤野敬史氏(48)・1級建築士事務所あまはじ|藤野菜々恵氏(38)・あまはじランドスケーププランニング|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2024年9月27日更新

【第10回沖縄建築賞】奨励賞 リフォーム・リノベーション・コンバージョン部門|「瀬底の家」(本部町)|藤野敬史氏(48)・1級建築士事務所あまはじ|藤野菜々恵氏(38)・あまはじランドスケーププランニング

沖縄県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」。ここでは奨励賞を受賞した6作品の1つ「瀬底の家」を紹介する。

屋根裏まであらわになったLDK。藤野さんは「天井裏にあった『しびらんか』など改修を通して沖縄の文化も知ることができた」と話す




奨励賞 リフォーム・リノベーション・コンバージョン部門
「瀬底の家」(本部町)


古民家を広々ワンルームに

造り変えず住みやすく

「瀬底の家」は築50年の古民家を改修し、藤野氏の家族が暮らしている。藤野氏は「改修前の室内はどこか薄暗く、こもった熱で蒸し暑かった」と振り返る。何かを加えるのではなく、構成要素をどうそぎ落とすか考え、「古民家全体が広々としたワンルームになるよう計画した」。

住宅はフクギの防風林で囲まれ、一番座、二番座、裏座と伝統的な間取り。各座を分断していた間仕切り壁を含む建具は全て撤去。個室以外の天井は剥がして、小屋組みをあらわにしたほか、床はフルフラットにした。「伝統的な造りは尊重しつつも、風通し、見通し、回遊動線と暮らしやすいよう造り替えた」。

審査では「沖縄の伝統的な造りと暮らし方に敬意を払い、少ない作業工程で家族が住みやすいようリノベーションされていた」と評された。
 


改修前は建具で部屋が仕切られていた
 


仏壇など必要なものは残しつつ、裏座まで風が抜けるようにリノベーションした
 


水回りは居室と行き来しやすいよう床の高さを上げた



設計者/藤野敬史氏(48)・1級建築士事務所あまはじ=左、
藤野菜々恵氏(38)・あまはじランドスケーププランニング=右



映画「男はつらいよ」に登場する寅さんとリリーさんような暮らしを求め、瀬底島の琉球古民家と出合いました。歴史を学び、敬意を持って家族が暮らしやすいよう、内部空間を開放的に改修させていただきました。「瀬底の家」を通じて古き良き空間や風景が少しでもながらえるきっかけの一つになれれば嬉しいです



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


審査講評・仲本兼一郎氏(前回一般建築部門 正賞受賞者)


歴史を知り 建物と地域をつなぐ

瀬底島の集落内にある古民家の形を大きく変えず、現代の暮らし方に適応させるべく、設計者の工夫で程よい改修がされていた。

県外から移住してきた設計者兼住人は歴史を丁寧に学んでいた。沖縄の伝統建築は何が大事でどのように使われてきたか。そしてどう現代につないでいくか、ということに対して誠実に向き合い、建物と地域を紡いでいるように感じた。

今後増えていくであろうリノベーション案件に対して、ただ機能を満たすだけではなく、地域とのつながりや使われ方のイノベーション、建築における歴史と現代の相乗効果などに重点を置く姿勢。これらの点を大切に、私も含めた設計者が設計を行っていかなければならない、と改めて感じさせてくれるリノベーション住宅であった。

設計者はこれから敷地内にある畑の開拓、その先に地域とのつながりも計画しているとのこと。今後の瀬底島に行く楽しみが増えそうだ。



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奨励賞 リフォーム・リノベーション・コンバージョン部門「瀬底の家」(本部町)
◇古谷誠章審査委員長から総評
入選作品紹介
 

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2021号・2024年09月27日紙面から掲載

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