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2025年8月22日更新
子どもの転落事故調査|ソファやいす、室外機など 7割超の死亡事故に「足掛かり」あり
子どもが住宅の窓やベランダから転落する事故が後を絶たない。消費者安全調査委員会(消費者事故調)は、1993年~2024年に起きた6歳未満の子どもの転落死亡事故134件を調査し6月24日、転落に至る過程や再発防止策をまとめた報告書を公表した。その結果、7割超のケースで窓や手すりの近くにソファやいす、室外機など「足掛かり」があったことが分かった。

ソファやいす、室外機など
7割超の死亡事故に「足掛かり」あり
「住宅の窓及びベランダからの子どもの転落事故」報告書から
32年で134件発生
消費者事故調によると、過去32年間で、6歳以下の子どもが住宅の窓から転落して死亡した事故は42件、ベランダからは92件あった。うち、窓からの転落事故は1歳が最も多く12件、ベランダからは3歳が最も多く41件だった=表①。「子どもは身長に対して頭部が大きくて重心が高い分、頭から転落する可能性が高い」と警鐘を鳴らす。
表① 窓・ベランダからの転落死亡者数

実際に発生した事故の内容は「1歳児が玩具のテーブル(高さ30㌢)を足掛かりに窓枠をよじ登り転落したと推定される」「3歳児がリビングにあったキャスター付きの台をベランダの柵の近くに移動させ、よじ登って転落したと見られる」「4歳児がベランダの室外機に上って転落したと推定される」など、7割を超えるケースで、子どもが窓や手すりによじ登るための「足掛かり」があったことが分かった。
「足掛かり」は窓のそばに置いているソファやベッド、机やタンス、もともとベランダに置かれていたイスやプランター、室外機など。ほかにも、子どもがイスや踏み台、クッションなどを持ち込み、足掛かりにしたケースも少なくない=下表。

半数が保護者の在宅時
また、窓が無施錠だったことが確認されているのは134件中43件、残りの91件は子どもが開けた可能性があるという調査結果が出た。さらに、約半数が保護者の在宅時に起きていることも明らかになった=表②。つまり、保護者が家にいて窓に鍵をかけていても、場合によっては事故が起こりうるということだ。
表② 事故発生時における保護者の在宅状況

同報告書では「日常生活を営む中で子どもの行動を常に監視し続けることは困難」とし、人的(ソフト面)な対応だけでなく、子どもが開錠できない鍵に替えたり、ベランダの手すりを容易によじ登ることができない仕様のものにしたりなど、「ハード面」と合わせた対応が必要だとしている。
消費者庁では、転落に至る状況を再現した動画や、転落防止のチェックリストも公開。窓の近くに家具が置かれていないか、窓の鍵に子どもの手が届かないか、ベランダに物が置かれていないか、室外機が手すりの近くに置かれていないか、手すりの仕様がよじ登りやすい・すりぬけやすい物になっていないかなど確認し、是正することを呼び掛けている。

消費者庁のホームページでは、転落に至る状況を再現した動画(上)や転落防止のチェックリストが公開されている
子どもの転落事故防止のためのチェックリスト
(消費者安全調査委員会資料より)


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2068号・2025年08月22日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。