沖縄建築賞
2024年9月27日更新
【第10回沖縄建築賞】住宅建築部門 正賞|「亜熱帯のいえ」(豊見城市)|仲本昌司氏(45)|(株)ADeR
県内の優れた建築物や建築士を顕彰する第10回沖縄建築賞(主催・同実行委員会)は9月13日、全20作品(住宅11作品、一般7作品、リフォーム・リノベーション・コンバージョン2作品)の中から入賞作品9点を決定した。
テラスからリビングを見る。鉄筋コンクリートの外壁の中に木の屋根や建具の開放的な内部空間が広がっている
住宅建築部門 正賞
「亜熱帯のいえ」(豊見城市)
木とRCで造る沖縄の家
自然を取り込む
「亜熱帯のいえ」は仲本氏の自邸。設計するにあたり、「沖縄の気候風土に適した建築を、とことん考えて形にした」と力を込める。
仲本氏は「伝統的な民家は木造だが、敷地内にフクギの木や石積みを設けて防風していた。しかし、昨今の敷地条件では難しいこともある。本物件では、それを克服するために鉄筋コンクリート(RC)の外壁と木を組み合わせた」と説明する。
外壁は耐風性や耐震性の高いRC造で、屋根や内部空間は蓄熱しづらく調湿効果のある木造の混構造にした。RCの外壁は開口部を限定して、台風や強烈な日射も制御する。
そのため、外から見ると四角い穴が随所に開いた無機質な雰囲気だが、内部に入ると一変。木造の伸びやかな空間が広がる。特にリビングは北西2面の大開口が眺望を切り取り、圧巻の開放感。開け放てば南東にある中庭から心地よい風が抜けていく。
テラスや中庭には、ソテツやヤシなど南国らしい植物や水盤を配置し、自然をふんだんに取り入れた。テラスは水盤を設けることで手すりを無くし、眺望を確保している。さらに、内壁にはクチャ、エントランスには赤瓦れんがブロックなど地元の素材も使用した。
審査員は「木とRCを巧みに用いて、沖縄の気候風土にしっかり寄り添っている。混構造の可能性を感じさせる素晴らしい作品」と高く評価し、正賞に選ばれた。
外観は、開口部を限定した鉄筋コンクリート造
リビング横のテラス。水盤を設けることで手すりをなくした。また、「木々と水盤が一つの風景に見えるようにした」
ダイニングから中庭を眺める。奥の赤瓦れんがブロックを通し、心地よい風が入ってくる
▼断面図
設計者/仲本昌司氏(45) (株)ADeR
この家は「亜熱帯気候の沖縄に適した住宅とは」を私なりに考え、出した答えです。昔の民家で考えられていた敷地境界、庭、建築の関係性を一つの建物で再構築し、豊かだけれど、台風・強い日差し・多湿などの厳しい環境もある沖縄ならではの形が生まれました。これからも沖縄の気候風土と向き合い、ならではの建築を造りたいと思います。
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審査講評・伊佐強氏(県建築士会会長)
混構造の可能性を感じさせる
コンクリート打ち放しと、粗面のビシャン仕上げの二つを取り入れた外壁と、勾配屋根の外観が印象的な建物である。室内に入ると、外観とは対照的に開放的な木屋根が目に飛び込み、緑が見渡せる。高低のある地形を上手に生かして風を取り込み、影をつくり、風景を楽しめる住空間になっている。
台風が多く高温多湿の沖縄で、鉄筋コンクリート(RC)の外壁と木造を組み合わせたダブルスキンの設計で、地元の素材でもあるクチャの塗り壁や赤瓦れんがブロックなども取り入れている。室内にいると同ブロックを介して南東からの心地よい風が通り抜ける。沖縄の気候を熟知した設計となっている。
各部屋の高さを抑えて天井に抜けを造ることで室内を広く見せているほか、屋根の木材は梁間によって杉・松を使い分けることで構造にも配慮している。
沖縄でのRCと木造の混構造の可能性を感じさせる建築で、正賞にふさわしい。
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◇古谷誠章審査委員長から総評
◆入選作品紹介
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2021号・2024年09月27日紙面から掲載