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2026年1月30日更新

図書館…なのにスタバの香り漂う 沖縄・読谷村の「ゆんラボ・未来館」から探る、公共施設にカフェが増えたワケ

2025年、那覇市の都市公園内にカフェがオープン。読谷村ではカフェを併設した図書館が開館し、話題となった。今年も県内随所で飲食店などを併設する都市公園が誕生する。背景には、公共の施設や公園を民間の資金やノウハウで建築・運営する「PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業」の増加がある。民間が主導することで、今までにない公共空間・サービスの提供やコスト削減、行政の業務効率化などのメリットがある。

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沖縄県内でも広がるPFI事業
図書館や公園にカフェ増 なぜ?


 
 「PFI事業」とは 
 
PFI事業は、公共施設の資金調達から設計・建設、維持管理、運営まで一括して民間企業に委ねる手法。行政はその品質を評価(モニタリング)し、対価を長期にわたって支払う。官民が長期間連携し、公共サービスを提供する仕組み
 


内閣府 民間資金等活用事業推進室(2025年9月公表)

漫湖公園(那覇市)ー事例1ー
「パークPFI事業」により2025年9月、漫湖公園(那覇市)内にスターバックスコーヒーがオープンした(写真提供・沖縄タイムス社)

ゆんラボ・未来館(読谷村)
ー事例2ー
大型PFI事業の一環として昨年10月に開館したゆんラボ・未来館(読谷村)。村立図書館を中心にした施設で、館内にカフェを併設。コーヒーやスイーツ片手に読書が楽しめる


 図書館や公園にカフェ増 なぜ? 
「ゆんラボ・未来館」(読谷村)から探る
民間の知恵や力 公共空間に反映

PFI事業を請け負う企業「SPC」
「ゆんラボ・未来館」のPFI事業を請け負うのは「黄金環(くがにかん)株式会社」。七つの企業で構成するSPC(特別目的会社※)だ。うち五つは地元・読谷村内の会社。「PFI事業は大手企業が主導になりがちだが、ゆんラボは地元企業が主体となって進めた」と黄金環㈱の専務取締役・林拓司さんは話す。テナントからの賃料収益などの民間収益事業に関しては㈱飛翔の風(林拓司代表取締役)が行っている。

※SPC(Special Purpose Company・特別目的会社)とは、ある特別の事業を行うために設立された事業会社。一般的にPFI事業は、いくつかの企業でSPCを設立することが多い。特定の事業しか行うことができないため、各会社の他の事業と資産やリスクを切り離すことができる。
 
 
貸し出し数は約6倍に
オープンで広々とした読谷村立図書館。併設しているカフェで購入した飲み物はどの座席でも自由に楽しめる。カフェで購入した食事については、所定の場所(土間床のスペース)のみOK


PFIでサービス拡充
読谷村に昨年10月、村立図書館を軸とした複合施設「ゆんラボ・未来館」がオープンした。館内には「スターバックスコーヒー読谷村立図書館店」が併設され、コーヒーの香りが漂う。ドリンクやスイーツ片手に読書をする人のほか、会話を楽しむ人も多い。今までにないスタイルの図書館だ。

開館時間は朝10時~午後10時で休館日は慰霊の日のみ。従来よりも大幅に拡大したほか、日本国内に居住している人なら誰でも図書を借りられる。


 
「こどもとしょかん」には子ども向けの図書だけでなく、ネット遊具や滑り台などもある

集中ゾーンにある「学習スペース」はガラス戸で区切られている。一席ごとに仕切られ、各席にコンセントが用意されている。パソコンの持ち込みも可能
 
公共施設でありながら、ここまでサービスを拡充できたのは、行政の発注を受けた民間企業が資金調達から設計・建設・維持管理・運営まで一体的に行う「PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業」だからこそ。同館のPFI事業は、七つの民間企業で構成する「黄金環(くがにかん)㈱」=下図=が受注した。民間資金で設計・建設し、完成後は村に所有権を移したが、運営や維持管理は黄金環㈱が担っている。村は建設の対価を所有権移転時に支払い、運営・維持管理の対価を20年間、同社に支払う。
 

同社の専務取締役・林拓司さんは、「発注者である村から求められたのは『出逢(あ)い』『つながり』『賑(にぎ)わい』を創出する施設。多様な人が気軽に訪れ、さまざまな過ごし方ができる空間を提案した」と話す。

カフェを併設しコミュニケーションの場としても利用できるゾーンや、ネット遊具や滑り台がありアクティブにも遊べる「こどもとしょかん」、学習室は一つ一つの席にコンセントを備えパソコンの持ち込みもOK。従来の図書館では珍しい設備やサービスをちりばめた。

設計を手掛けた黄金環㈱の副社長で、NDアーキテクトンの代表・大城貢さんは「理屈抜きで安心でき、自然とリラックスできる『家のような居場所』をつくることに注力した。間接照明によって天井にやわらかな表情を生み出したり、本棚に光と影を落としたりと、落ち着きのある空間づくりを心がけた」と話す。

また、PFI事業について「異業種間での調整は大変だった。何度も議論を重ねて提案事項をまとめ、設計の意図を守りながらコストコントロールを行った。苦労した分、村内外から多くの人が集い、『出逢い、つながり、にぎわいを生む創造拠点』というコンセプトを確かに形にできたことに、設計者として大きな喜びを感じている」と話した。

林さんは「2025年10月の図書貸出数は2万8749冊だった。前年同月の5017冊と比べると573%増。今まで図書館に足を運ばなかった人たちも来てくれているようだ」と話す。利用者比率は、村内6・村外4の割合だそう。


地元企業力合わせ実現
PFI事業のメリットとしては、利用者側は公共サービスの質の向上、行政は業務負担の軽減や初期投資が抑えられ支出を平準化できる、受注企業は長期にわたって安定した収益が見込める、などが挙げられる。

厳しい財政状況の中でも施設・設備の老朽化に対応でき、魅力的な地域拠点の創出につながるとして、県内でもPFI事業による公共施設や都市公園のリニューアルが増えている。

 

林さんは「ゆんラボ・未来館においては、村内の企業が主体となっていることに注目して欲しい」と話す。同事業を受注した黄金環㈱の構成企業7社のうち、5社が村内企業。「ほかにも多くの地元企業に協力してもらった。一つ一つは小さな会社だが〝地元愛〟で結束し、力を合わせて実現にこぎつけた。読谷村の魅力や課題をよく知る地元企業が手掛けた意義は大きいと思う。モデルケースになれば」と力を込めた。
 
 公園に出店「Park−PFI」も続々 
新都心公園(那覇市)
 コナズ珈琲 
ことし4月に、那覇市の新都心公園内にオープン予定のカフェ「コナズ珈琲」のイメージ図(パース図提供・那覇市)
 21世紀の森公園(名護市)
 あけみおてらす 
21世紀の森公園で整備が進む公募対象公園施設「あけみおてらす」のイメージ。カフェやレストラン、食堂、マリンレジャー施設などが出店予定(パース図提供・ゆがふホールディングス)
昨年9月には「漫湖公園(那覇市)」内にスターバックスがオープンした。今年3月には「21世紀の森公園(名護市)」に、4月には「新都心公園(那覇市)」にカフェなどの収益施設がオープンする。これらは「Park−PFI(公募設置管理制度)」=下図=の活用によるもの。

同制度では、公園内に収益施設(飲食店や売店など)の設置・運営を行う民間事業者を公募により選定。選ばれた事業者はその収益施設から得られた収益の一部を公園整備に還元することを条件に、都市公園法の特例措置が適用される。
(特例措置)
①施設の設置管理許可期間が20年まで延長可能(通常最長10年)
②建ぺい率規制を12%まで緩和(通常、便益施設の上限は2%)
③自転車駐車場や看板・広告塔を利便増進施設として設置可能
ParkーPFI制度を活用した公園整備イメージ 

 

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2091号・2026年1月30
日紙面から掲載

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スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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