2026年1月23日更新
荷物で埋まる“元”子ども部屋を片付けたい…60代女性、プロからの提案で“変えたもの”|人生の輪郭 暮らしが映すもの④
片付けや掃除のプロとして悩める人々をサポートをする、暮らしかたらぼの代表・根原典枝さんが「人生の輪郭」を綴る。今回は、子どもは成人したのに残っている“元”子ども部屋の荷物に悩んでいた60代女性。「いつか本人が片付けるはず」の物で埋まった部屋を、根原さんと一緒に片付けていくと、家の空気が少しずつ変わり始めました。

文/根原典枝(暮らしかたらぼ)
ストーリー④ “元”子ども部屋と向き合う60代女性
片付けや掃除のプロとして悩める人々をサポートをする、暮らしかたらぼの代表・根原典枝さんが「人生の輪郭」を綴る。今回は、子どもは成人したのに残っている“元”子ども部屋の荷物に悩んでいた60代女性。「いつか本人が片付けるはず」の物で埋まった部屋を、根原さんと一緒に片付けていくと、家の空気が少しずつ変わり始めました。
「母親」から「私」へ暮らし直し
服や教科書、学習机…
「子ども部屋に残っている荷物を片付けたいんです。結婚した娘に声をかけても、今の生活でいっぱいみたいで。同居している息子の部屋も、片付けができなくて困っています」
電話をくださったのは60代の女性。数年前に定年退職し、現在は夫と独身の長男と3人暮らし。長女は県外の大学へ進学し、その後、沖縄に戻って就職。現在は結婚して新居で家族と暮らしています。
気づけば十数年、〝元〟子ども部屋には学生時代の服や教科書、使わなくなった学習机や段ボール箱がそのままの状態で残っているとのこと。
定年して数年がたち、孫が生まれたことで、「この部屋に向き合わなければ」と決心したそうです。

時が止まった部屋
数日後、お宅を訪問しました。元子ども部屋の扉を開けると、時間が止まったかのような空間が広がっていました。動物柄の壁紙、ほこりをかぶった文房具や本。クローゼットには服だけでなく、ランドセルまで残っていました。それどころか、長女が県外で1人暮らしをしていた時代の荷物が段ボールのまま置かれていました。
これまで何度か子どもたちに「時間がある時に一緒に片付けよう」と声をかけたそうです。しかし返ってくるのは「仕事が忙しいから今度でいい?」
「こっちで処分していい?」と聞いても、「とりあえず置いといて」。結果、部屋は使われないまま“倉庫化”していきました。
家の主役は「今の住人」
私は女性にお伝えしました。「子どもにとって実家は自分の家のようで、もう自分の家ではないんです」。仕事や家庭を持った今、日々の暮らしで精いっぱい。過去の物と向き合うのはどうしても後回しになります。
しかし、親は待ち続けます。その優しさが、「部屋を使えない」「家全体が整わない」「気持ちの区切りがつかない」という形で、暮らしを止めてしまうことがあるのです。
途中、女性は打ち明けてくれました。「実は、夫婦の寝室はあるのですが、自分だけの部屋は一度も持ったことがないんです。だから、リビングダイニングに私の物があふれてしまって。家族がくつろぐ場所なのに、落ち着かなくなってしまいました」
私は女性に、「親子であっても、それぞれ別の人生を生きる大人同士です」「大切なのは子どもがどうするかではなく、今のあなたがこの家でどう暮らしたいのかです」と伝えました。
女性に「これからの自分の居場所にしていい」というGOサインを出してほしい。そのために期限を子どもたちに伝え、最終的には親の判断で整理しましょうと提案しました。
後日、依頼主である女性が「母親」から「私」に戻る暮らしへ変えると、家の空気が少しずつ変わり始め、これまでが嘘のようにどんどん片付いていきました。さらに、長男も自分の部屋を片付け始めるなどの変化が見え始めたのです。
家は「過去の保管場所」でなく、「今とこれから」を心地よく生きるための器です。そして、物を通して家族の関係性を見つめ直すことで、その距離感は重たさではなく心地よさへと変わります。子どもの巣立ちは、主役を「私」や「夫婦」に変えるチャンスだと思います。
執筆者

ねはら・のりえ/
1972年うるま市出身。3人の子育てに追われる中、テレビ番組で赤字企業が3S「整理・整頓・清掃」を通して再生する様子に感化され、2010年に片付け・掃除で悩む人をサポートする(株)暮らしかたらぼを設立。
080・2731・8883
https://kurashikata.co.jp
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2090号・2026年01月23日紙面から掲載











