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2026年1月16日更新
「教えて!見せて!」沖縄のラグ専門店バイヤーが大興奮 イランの海抜1400メートルの町で収穫した“もの”|ラグの世界㉒
イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんによるラグ買い付け旅記。今回はイランで3番目に高いサバラーン山の麓の町「メシキン」で出合ったラグの話。そこで初めて耳にしたラグ名に大興奮。その正体は?

エピソード㉒ イランでの買い付け旅記

メシキンの町のラグ店には、鮮やかな赤が印象的な「ヘリース」のラグがたくさん
麓の町メシキンで
初耳のラグ「ヴァルニ」
カ スピ海から比較的近いアルダビールの町からぐっと内陸に進むと、また景色が変わってきた。次の目的地は「メシキン」。正しくはペルシャ語で「メシギン シャハル」と言い、直訳すると「メシギンの町」となるが、英語などの外国語に訳す際は「メシキン」といわれることが多い。現地で聞いていても「メシギン」とは聞こえないので私たちも「メシキン」と表記している。日本語にない音のペルシャ語をカタカナにするのにはけっこう苦戦する。
鮮やかな赤色のラグ
メシキンの近くまで来ると、日中の気温は30度以上あるのに遠くの山の上には雲のすき間から雪が見える。メシキンはイランでも3番目に高い「サバラーン山(標高4811メートル)」の麓に位置する高原の町。海抜は約1400メートルとアルダビール州の中でも標高が高い。夏は涼しいが、冬はとても寒くなり雪が降る。このような場所にはかつて多くの遊牧民が暮らし、羊やヤギなどと一緒に行き交い、ラグを織ってきた。

メシキンの町の近くの景色。日中の気温は30度近いのに山の上には雪が積もっている
町へ来る前に、メシキン出身の仕上げ職人にラグの店を紹介してもらっていた。町の中にある小さな店で、中へ入った途端、鮮やかな赤が私の視界をいっぱいに満たした。
この鮮やかなラグはいわゆる「へリース」の町のデザインのラグで、コントラストの強い赤をベースに、直線的なラインで中央に大きく花のような形のメダリオンが織り込まれている。経糸や緯糸はとても太く、厚みもたっぷりで重たい。最近ではメシキン付近でもへリースデザインのラグを織ることが多いそう。私の探す素朴なメシキンのラグはヴィンテージじゃないと見つからないかもしれない。

「へリース」のラグは糸が太くてずっしり重たいのも特徴
ローカルネーム収集家
店主がメシキンの織り手の女性のところへ連れて行ってくれた。その女性もまた、へリースのラグを、うどんのような太さの緯糸を通して織っていた。それに圧倒され、夢中でシャッターを切っていると「ヴァルニは知ってる?」と聞かれた。初めて聞くワードに「教えて! 見せて!」と私の心拍数は急上昇。
「ヴァルニ」という敷物を見せてもらうと、結び糸の構造ではなく、チェーンステッチのように経糸に対して緯糸を斜めに巻き付けながら織ってある。「これってスマックでは?」と頭に?が浮かんだ。
スマックとは、毛足が短くて丈夫な平織りのラグ「キリム(ギリーム)」の一種だ。ラグの織り手として広く知られる遊牧民族「シャーセヴァン」が織るラグの代名詞が「スマック」なのだ。

メシキンで「ヴァルニ」と呼ばれていた平織りのラグ。毛足が短く丈夫
織り手の女性たちが「ヴァルニ」と呼んでいた敷物は「スマック」のことだった。このあたりではこの敷物をヴァルニと呼ぶことがわかり、自称“ローカルネーム収集家”の私にとっては大変うれしい収穫だった。
織り手にお礼を言い、お家をあとに。アテンドしてくれているアリさんから「今日は山の上のキャンプに泊まるよ」と告げられる。このメシキンの山の上で素晴らしい体験をすることになる。

執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1
電話=098・975・9798
https://shop.layout.casa
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2089号・2026年1月16日紙面から掲載









