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2025年8月1日更新
間取りを味方に付けて時短!|移動や収納の動作を少なくする|家と心理㊶
空間デザイン心理士Ⓡで一級建築士。2児の母でもある、まえうみ・さきこさんが、空間を心理的に解析。夏休みに入り、朝から晩まで炊事・洗濯に追われ忙しい日々をちょっとラクにする空間の仕組みを紹介します。「間取りを味方に付けると、作業効率がアップして時短になります」と説明します。

回遊動線がおすすめ
学校が夏休みに入り、家族の食事作りや洗濯などに追われ「朝からバタバタ」「いつも夕方にはヘトヘトになってしまう…」という方も多いのでは? そんな忙しい毎日をちょっとラクにするカギは、「間取り」にあります。行ったり来たりする時間を減らすだけで、あら不思議! 暮らしにゆとりが生まれます。今回は、新築やリフォームを考えている方に、家事などの作業効率を上げて時短できる間取りのポイントをご紹介します。
◆家事動線は「ぐるぐる回遊式」に
炊事や洗濯の主となるキッチン・洗面脱衣所・物干し場・クローゼットが〝ぐるぐる〟回遊できると、作業がとてもスムーズになります。特に、洗濯の「洗う→干す→たたむ→しまう」の動線が直線や回遊動線でつながっていると、驚くほど作業がラクになりますよ。

◆家族動線と家事動線は分けて考え、渋滞を軽減
朝、何かと混雑する洗面脱衣所。その奥に洗濯機と物干し場があると、洗濯したいのに家族で混雑して通れない…、なんてことも。動線が交差しやすい場所では、家事をする人と家族の動線を別にするのがポイントです。例えば、洗面・脱衣・洗濯室→ファミリークローゼット→物干し場と抜けられる間取りにしたり、キッチン側からも洗濯室に入れるようにすると動線が交差しません。
また家族動線も渋滞しないよう配慮しましょう。子どものランドセルや上履き、夫のカバン、妻のエコバッグなどが、玄関先の同じ収納にまとめられていると、朝みんなが同時に取り出そうとして混雑。さらにモノが行方不明になりがちです。
玄関先に家族それぞれの「朝の準備ゾーン」を作るだけでも、動きが分散され、バタバタが軽減されます。

◆「よく使う場所」に「よく使うモノ」を
当たり前に思えるこのルール、意外とできていないことも。お風呂掃除用の道具が洗面台収納の奥にあったり、日焼け止めが寝室にあったり、「収納がある場所」に収めてしまっていませんか?使う場所のすぐ近くに必要な物を置けば「取りに行く時間」が減り、動作がスムーズになります。
そして子どもにもわかりやすい位置にすれば「取って〜」「どこ〜?」と呼ばれる回数もぐんと減るはずです。

◆収納を「出す→しまう」の動作で考える
家の中で片付かない場所には、意外と「しまう動作が面倒」な構造が潜んでいます。キッチンでよく使う調理ツールは引き出しに収納せずサッと取れる位置に出しておく、キッチンのごみ箱を足元ペダル式にする、洋服は畳まずハンガーに掛けて収納するなど、動作の手間を一つ減らすだけでも心理的ハードルが下がり「やろう」と思えるはずです。

◆忙しいときこそ、空間が心を整える
最後に、時短とは少し離れますが、心理的に大切なのが「空間の余白」です。散らかった部屋は思考のノイズになり、探し物や段取りに時間を奪われがち。モノの住所を決め、見える範囲はモノを置き過ぎず余白をつくることで、心にゆとりが生まれ、家族への言葉も優しくなります。

既存の家でもできる工夫

動線の途中にある収納を活用しよう!
間取りを変えることのできない既存の家の場合、移動する途中にある収納に、行く先で使うモノをしまうようにすると時短になりますよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まずはわが家の家事動線やバタバタゾーンを見直してみませんか? それを新築やリフォームを機に改善しましょう。「毎日が、ちょっとラクに」なれば、それは住まいからの最高のプレゼントです♪

[文・イラスト]
まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹で暮らす。
http://ielie.net
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2065号 2025年08月01日紙面から掲載
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