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2025年6月20日更新
[イランでの買い付け旅記]ラグ美しく仕上げる 倉庫で見た職人仕事|ラグの世界⑯
イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんによるラグ買い付け旅記。今回は、ラグ最大の産地・イランの倉庫で再会した「仕上げのプロフェッショナル」たちの仕事ぶりを紹介します。

エピソード⑯ イランでの買い付け旅記

職人たちの手で丁寧にブラシをかけ、フリンジを美しくカットしていく
イランの6月はいつもすごく暑い。いざスカーフを頭に巻いて飛行機から出ると、あれ? 寒い? というのがテヘランに到着しての感想だった。日の出前だからかと思ったが、今日は特別気温が低いそう。
いつもお世話になっているカーゼムさんが到着ゲートで迎えてくれる。到着ゲートでは、花束を持って大切な人の到着を待っている人や、家族との再会を喜ぶ人など、ドラマチックな光景が広がり、いつもあたたかい気持ちになる。
朝の5時前、空港を出ると朝焼けの空の中にダマ-ヴァンド山のシルエットが見えた。ひと際高いその山は標高5610メートルでアジアで最も高い火山。そのシルエットや雪を被る様子が富士山にも例えられるように、多くの神話や伝説を持つ、イランの人々にとっても大切な山。ようこそ! と迎えてもらえているようだ。
久しぶりの再会
まだ時間は早いが、空港から職人さんたちが働く倉庫へ向かう。大きな扉をノックすると夜番の警備員さんが開けてくれた。
辺りが明るくなると掃除がはじまる。この倉庫がいつもきれいなのは、こうやってこまめに掃除をしてくれる方がいるからなのか。こういうことも現地へ来てみないとわからない。
7時前、続々と職人さんたちが出勤してきた。久しぶりに会うがみんな変わらず元気そうで安心した。7時になると4人それぞれが定位置で自分の仕事をはじめる。
買い付けの旅では、仕上げや修理の職人さんたちに会うことも多いが、こんなに美しく縁をかがり、まるで髪をとかすようにフリンジの表と裏にブラシをかけて丁寧にカットする仕上げを他で見たことがない。彼らはラグのプロフェッショナルなので、技術はもちろん、やるべきことを瞬時に判断し黙々と手を動かしていく。その仕事の姿勢も彼らを尊敬する大きな理由だ。技術も大切だがやっぱり「人」なんだなぁと思う。

レイアウトのラグを倉庫で美しく仕上げてくれる4人の職人
ラグの上で朝ごはん
8時半、朝ごはんの時間だ。私たちの倉庫はみんなの希望で早く帰れるように始業時間が早いので朝ごはんとお昼ごはん、2食をここでみんなで食べる。
ごはん用のラグを敷いて、その上に汚れないようにビニールのソフレ(ランチョンマットのようなもの)を敷く。このソフレは、今ではレストランや家でもビニールのものが主流だが、昔の遊牧民が平織りのラグで作り始めたのがルーツだ。

食事用のラグの上にビニール製のランチョンマットのような「ソフレ」を敷いて朝ごはん。シンプルにナンとチーズと野菜
朝ごはんはシンプルに、ナンとチーズ、トマトやきゅうりの野菜とたまにジャム。みんな「マイチーズ」を冷蔵庫に入れていて、自分好みのチーズを挟んでさっと朝食を済ませる。
職人たちに「いつも本当にありがとう」と伝え、倉庫を後にする。最初に目指すのはサファヴィー朝時代、ペルシャ帝国の都でもあったガズヴィーン。テヘランから北西に約150キロの歴史の古い町で、初めて訪れる。いい出逢(あ)いがありますように!
※今回の買い付け旅は6月6日~12日のお話です。15日には帰国しました。

執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1
電話=098・975・9798
https://shop.layout.casa
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2059号・2025年06月20日紙面から掲載