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2025年7月4日更新

「クール寝室」で熱帯夜も快眠|扇風機や除湿機を併用&接触冷感の寝具で|家と心理㊵

空間デザイン心理士Ⓡで一級建築士。2児の母でもある、まえうみ・さきこさんが、空間を心理的に解析。今回は、寝苦しい日が続く夏場におすすめな「クール寝室」の作り方。冷房の設定温度を下げ過ぎなくても体感温度を下げる工夫や、寝具の選び方などを紹介する。

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深部体温を下げる

タイムス住宅新聞の創刊40周年おめでとうございます。偶然にも、この連載も今回で40回! 2022年4月からスタートし、3年と少し。これからも宜しくお願いいたします。

さて、7月の沖縄は、最低気温でも27度を超えるのが当たり前です。暑いというだけで毎日ヘトヘトになってしまいますよね。夜はそんな〝暑さ疲れ〟を癒やしたいのに、「寝苦しい」という人も多いでしょう。

熱帯夜の「眠れない」「寝付きが浅い」などの睡眠障害は特に50代~高齢者にとって重大な健康リスクになります。東京大学や岡山大学の調査によると、夜間気温が25度を超えると睡眠障害が増え、その被害は熱中症に匹敵すると報告されています。

猛暑に睡眠の質が悪くなる理由の一つは「夜間の深部体温低下が阻害されるため」だそうです。深部体温とは、脳や臓器など体内の温度で、その深部温度が下がることで体が休まり、深く眠ることができます。それを暑さが阻害してしまっているのです。

そこで今回は、深部体温が下がりやすい「クール寝室」の作り方を紹介します。
 

①冷気の流れをつくる

エアコンの設定温度が低過ぎると体の不調につながりますし、電気料金にも大きく影響します。節電のためには、なるべく温度を下げたくないですよね。ちなみに、環境省は28度を節電の目安として推奨しています。しかし、場合によっては「暑い」と感じるでしょう。

そこでエアコンの設定温度はそのままに、扇風機やサーキュレーターを併用して冷気を部屋中に循環させ、体感温度を下げましょう。

ポイントは「冷気を上から斜めへ流す」。冷たい空気は下に溜まりやすいので、循環させることが大切です。まずエアコンの吹き出し口を天井方向にします。その風下に扇風機やサーキュレーターを置き、対角に向けて弱風で回すと、部屋全体に緩やかな気流が生まれ冷気が部屋中に行き渡り、体感温度が2~3度下がります。
 
冷気の流れ「上から斜めへ」
冷たい空気は下に溜まるという性質があるため、扇風機やサーキュレーターを使って循環させる。ポイントはエアコンの吹き出し口を天井に向け、その風下に扇風機やサーキュレーターを置いて対角へ向けて弱風で回す。
 

②熱逃がす寝具選ぶ

最近は夏場になると「接触冷感」の製品があれこれ登場しますね。触れたときに冷たいと感じる指標の一つが「Q-max」値で、これが大きいほど接触したときに冷たく感じます。

夏用敷きパッドは、この値が大きい製品を選ぶと、触れた瞬間の熱奪取力が高く、ひんやり感が長続きします。

さらに、最近人気があるのがリバーシブル仕様です。表は接触冷感で裏面がパイル地になっていて、秋口まで使え収納を圧縮できます。

また、通常のベッドよりはお値段は高いですが、「スマートベッド」という高機能製品も登場しています。最新型は、センサーで体温上昇を検知するとマット内部が自動で冷却し、快適な温度を保ってくれます。いびき抑制の機能を搭載する機種も登場しており、寝苦しさと夫婦間の〝騒音トラブル〟を同時に軽減してくれるそうです。
 

③夜間除湿で湿度60%をキープ

湿度が60%を超えると汗の蒸発が妨げられ、寝具が体に張り付き寝苦しさの元凶に。

また、家族一室で寝ている場合は、就寝時の呼吸の蒸気で湿度が高くなるそうです。

湿度を下げるためには除湿機を「寝る前90分だけ強運転」し「就寝中は自動」モードに設定してみてください。余分な湿気を寝る前に除去しておくと、エアコンの冷房効率も上がります。ただ、音や乾燥が気になる方は、就寝時には消して、起きた時に除湿機をかけると良いですよ。

また、①で説明したように、冷気を循環させることは、室内温度を下げるだけでなく湿度も下げるので、オススメです。私も効果を実感しています!
 

④減光で中途覚醒防ぐ

睡眠ホルモンともいわれる「メラトニン」は、明るい場所では分泌が抑制されてしまい、中途覚醒につながります。50代を過ぎると睡眠が浅くなり、深夜1時頃に目覚めやすいと言われます。

寝る直前まで本を読んだり、テレビを見ているという方は、30分後に照明が自動減光するようにしたり、テレビの主電源をオフにするなどのタイマー設定をしておくとメラトニンの分泌を妨げません。外からの光が入りやすい場所であれば、遮光カーテンやアイマスクなどで光を遮りましょう。

また、スマートフォンやパソコンなどの機器から発せられるブルーライトは睡眠リズムを乱す恐れがあります。できれば就寝1時間前から使用を控えるのが望ましいですが、難しい場合はブルーライトカットモードにしましょう。
 
減光して中途覚醒を防ぐ
青白い光(昼白色)はメラトニンの分泌を抑制してしまいます。夜はオレンジ色の光にするのがおすすめです。外の街灯の光や車のライトが入りやすい部屋ならば、遮光カーテンやアイマスクで光を遮り、メラトニンが減るのを防ぎましょう
 

番外・「昼の15分散歩」が夜の熟睡度上げる

「寝室づくり」とはまた別ですが、昼間に日差しを浴びることも睡眠の質に影響します。

意外に思われるかもしれませんが、日光を浴びることで分泌されるセロトニンはメラトニンの原料で、夜間の熟睡度を底上げしてくれます。

とはいえ、猛暑の直射日光を浴びるのは熱中症の心配もありますので朝夕の涼しい時間帯に15分程度の「日陰歩き」を取り入れましょう。
 
日中の「日影歩き」で熟睡度UP
日光を浴びると、睡眠ホルモンである「メラトニン」の原料となる「セロトニン」の分泌が促される。しかし夏場の日射はかなり強烈なので、朝夕に「日陰散歩」をするなど、ほどよく日光を浴びよう
  
 ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

いかがでしたでしょうか? 蒸し暑い夜でも涼やかに過ごせる「クール寝室」は、〝睡眠赤字〟を解消する未来への〝預金〟です。今年の夏は、家電の使い方を工夫したり、少しだけ日差しを浴びたりすることを心掛けて、快眠を取り戻しましょう!




[文・イラスト]
まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹で暮らす。
http://ielie.net


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2061号 2025年7月4日紙面から掲載

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