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2024年3月29日更新

[お住まい拝見 特別対談]建築家・窪田勝文さん×施主(建築家)・金城司さん

今号の「お住まい拝見」の施主で建築家の金城司さんと、設計した窪田勝文さんによる“建築対談”。窪田さんの建築は造形に目が行きがちだが、本質にあるのは「ストレスを感じさせないスムーズな空間」。金城さんも住み手として「大いに実感している」と話す。

くぼた・かつふみ(右) 1957年、山口県出身。日本大学工学部建築学科卒、K構造研究所勤務をへて、88年、同県に窪田建築アトリエを設立。国内外で数々の建築賞を受賞する。最新はArchitecture MasterPrize 2022 small architecture部門受賞

きんじょう・つかさ 1972年、南風原町出身。武蔵野美術大学卒、2001年、兄の豊さんと(有)門一級建築士事務所を設立。同事務所で200件以上を手掛ける。17年、第3回沖縄建築賞 住宅部門正賞受賞



「家はストレスから開放されるための場所。少しの引っ掛かりもなくスムーズに暮らせる空間設計を心掛けている」(窪田さん)

「正直、デザイン重視だと思っていました(笑)。住んでみると、細部まで機能的で心地よい」(金城さん)


 

スムーズでこそ解き放たれる

単体美よりも調和

金城 平地だったのに土を盛ったり、ガラス張りだけど開閉できる窓は少なかったり。僕の建築観とは逆で、住み心地に関しては半信半疑だった。だけど土に埋まっていることで気温が安定しているし、開口部が限定的だから虫も人も侵入しにくい。『落ち着かないんじゃない?』とよく言われるが、逆に守られているという安心感がある。

窪田 やはり家というのは、日ごろのストレスから開放される場所であるべきで、不快な場所があるといけない。少しの引っ掛かりもなく、流れるように過ごせる空間を常に意識している。金城邸は、基礎を造るときに出た残土を利用して開放的な住まいを造ろうと考えた。

金城 窪田先生とは17年の付き合いになるが、自分が施主になるまでデザイン重視の建築家だと思っていた(笑)。

窪田 建築単体のデザインよりも、場所の特性を生かすことを心掛けている。金城邸は斎場御嶽や久高島に囲まれた、荘厳な聖地に建つ。なるべく建物のボリュームを隠して、自然と調和させることを心がけた。

金城 敷地の正面だけでなく、あらゆる場所から建物の見え方を確認しながら、収まりなどの微調整を重ねていたのが印象的だった。例えば、建物の裏側に給排水管やエアコンの室外機を配しがちだが、そこが道路から見える場所ならもはや裏ではない。こうした「環境と建築」を突き詰める姿勢に、襟を正された。

窪田さんが設計した金城さん宅は、南城市の海抜30メートルの高台に建つ


心を動かす「動線」

金城 動線の設計も非常に勉強になった。効率的に動けるよう設計するのがセオリーだと思っていたが、窪田先生は動線によって建築の魅力を高めている。

窪田 リラックスできる空間において、自然の力はとても大きい。最大限に活かすためには、開口部と動線を組み合わせた「シークエンス(移動することで変化していく景色)」の設計がとても重要。

建築の手法として、ある場所を最も心地よい空間にするため、他の場所の快適性を落とすというやり方がある。私はそれは違うと思っている。明暗や広狭の差は付けても、不快感を与えたり不便にしたりはしない。シークエンスと快適性の両立こそが建築家の力量だと思う。

金城 コストとの兼ね合いで『いっそ、玄関アプローチ前の屋根を無くしましょう!』と窪田先生に言ったら、ものすごく怒られた。確かに、シークエンスが台無しになってしまう。妥協するなと言う叱咤(しった)だったのですね。

窪田建築アトリエ
https://katsufumikubota.jp/

門一級建築士事務所
https://www.jo1q.com/





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撮影/矢嶋健吾 文/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1995号・2024年3月29日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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