建築士の日
2025年6月27日更新
[7月1日は建築士の日]家族で建築士|② 平田 歩さん・平田 寛さん|(株)平田設計、平田寛建築設計事務所
建築士法が施行された7月1日の「建築士の日」を前に、親子・兄弟・夫妻で建築士の資格を持つ3組を紹介する。家族だからこそ、良き理解者であり良きライバルでもある。互いに対する思いやそれぞれの建築観などを聞いた。

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兄弟で建築士

平田 歩さん=写真右 平田 寛さん=写真左
(株)平田設計、平田寛建築設計事務所
兄:ひらた・あゆむ/1983年宜野座村出身。1級建築士。2013年に愛知県の大学を卒業し、同県の建築会社に就職。その後、帰沖し父が営む平田設計へ入社。21年に同社の代表に就任
弟:ひらた・ひろむ/1988年宜野座村出身。1級建築士。2009年に沖縄職業能力開発大学校を卒業し、平田設計へ入社したのち、県内のアトリエ系の建築事務所で修行。21年に平田寛建築設計事務所を設立
「似てない」ことが強み
顔 や性格はあまり似ていない2人だが、同じ「建築士」になったのは父・努さん(77)の影響。一級建築士として長年、住宅や宜野座村の公共施設などを手掛けてきた。「実家が事務所も兼ねていて、製図台や建築模型がとても身近にありました」と話す弟の寬さん(37)に、兄の歩さん(42)も大きくうなずく。2人は四兄弟の三、四男。長男(49)と次男(47)は建築とは別の仕事をしている。「上の2人が幼いころは、父はまだ若く食べていくのも大変で、あまり建築士になってほしくなかったそうです。経験を積んだころ生まれた私たちには、その気持ちも和らぎ、むしろ逆に。本土の大学に行きたかった私は『建築科に行く』という名目で許してもらえました」と歩さん。
寛さんは「長男から『実は建築をやってみたかった』と言われたことがあります」と話す。

兄は承継 弟は独立
同じ道に進んだが、その経歴や建築観はまったく違う。
歩さんは愛知県の大学を卒業後、同県の建設会社に就職。現場監督として主に施工に携わった。
寬さんは沖縄職業能力開発大学校で建築を学び、父が営む平田設計に就職した。そこに帰沖した歩さんも合流した。「はじめは設計は私、現場は兄という分担でやっていました。次第に建築の面白さにのめり込み、もっといろいろな事務所で経験を積みたくなり、県内のアトリエ系設計事務所で修業しました。自身のデザインの軸が見えてきたことで独立を決意し、那覇市に事務所を構えました」。
先に平田設計を継いでいた歩さんは「一緒にやらないの? とも思いましたが、『これからは自分が平田設計を背負わなくては』と腹を決めました」。中間子と末っ子らしい流れで、それぞれの場所で活動を始めた。
「宜野座ヌルドゥンチ」

「兄は施工の経験があり、机上に留まらないダイナミックな設計ができる。私は、細かいところまで作り込んでいくのが得意」「弟は発想力が豊かでアーティスト気質。私は、周囲と調整しながらものづくりをするデザイナーという感じ」と互いを語る。
そんな2人の違いが生きたのが、2021年に共同設計した「宜野座ヌルドゥンチ」。村の拝所の建て替えで、平田設計が依頼を受けた。地元に事務所を構える歩さんが行政や地域住民との調整や現場監理を、寬さんがデザインや図面などを担当した。「弟から模型を見せてもらったときに『絶対、形にしたい』と思いました」と話す。寛さんは「大変な部分は全部兄がやってくれた」と恐縮しながらも「兄弟で協力し、地元にとって意味のある建物をつくれたことは大きな経験になりました」と話す。
「年が近いことから、昔はよくケンカしていた」という2人。同じ道をそれぞれの足で歩き出した今は、よき理解者として助け合い高め合う。


影響を受けた建築物&建築士
(株)平田設計
◆平田 歩さん住宅をメインに手掛ける建築家の手嶋保さん(1963年~)です。ディティールや、素材へのこだわり、陰影の付け方が素晴らしい。実は私の事務所の壁=下写真=を荒々しいビシャン仕上げにしたのも、手嶋建築のオマージュです。

平田寛建築設計事務所
私の師である建築家・五十嵐敏恭さんの自邸「玉城の家」=下写真=は、建築人生の中で大きな影響を受け、私のターニングポイントともなった建築です。建物における配置の重要さ、思想、素材感、プロポーションなどシンプルな構成ながらも建築の重要な要素が詰め込まれています。この建物で過ごした時間が、今の私の大きな糧になっています。

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取材/東江菜穂
『週刊タイムス住宅新聞』建築士の日特集
第2060号 2025年06月27日掲載