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2025年7月4日更新
【創刊40周年特集②】「お住まい拝見」40年 延べ53物件を掲載|東設計工房 建築家・山城東雄さん(80)
創刊から今も続く人気コーナ−「お住まい拝見」。県内のすてきな住宅を紹介してきた。建築家の山城東雄さんは創刊1年目から現在まで、「お住まい拝見」などの巻頭コーナーに設計物件を延べ53件掲載。山城さんは「40周年おめでとうございます。いい住宅を造り、披露できる場があることは、とてもありがたい」と話す。
東設計工房 建築家・山城東雄さん(80)
やましろ・あずまお/1944年、竹富町小浜島出身。沖縄工業高校建築科卒業後、建築設計会社での勤務を経て、東設計工房を設立して独立。一級建築士。本紙で風景画の連載「絵になる風景」を2022年4月~24年3月に掲載。24年に第15回かりゆし美術展の日本画部門で金賞受賞。同年、日本建築家協会の名誉会員に選出された。25年には第76回沖展の絵画部門に入選。著書に「沖縄の瓦はなぜ赤いのか」がある。座右の銘は「一生勉強、一生青春」。
「お住まい拝見」40年 延べ53物件を掲載
創刊から今も続く人気コーナ−「お住まい拝見」。県内のすてきな住宅を紹介してきた。建築家の山城東雄さんは創刊1年目から現在まで、「お住まい拝見」などの巻頭コーナーに設計物件を延べ53件掲載。山城さんは「40周年おめでとうございます。いい住宅を造り、披露できる場があることは、とてもありがたい」と話す。
意義大きい「お住まい拝見」
沖縄建築のレベルを上げた
創 刊1年目から現在まで、本紙巻頭のコーナー「お住まい拝見」などに設計物件を掲載し続けている〝レジェンド建築家〟がいる。山城東雄さんだ。
本紙に初めて物件を掲載したのは、実は「お住まい拝見」ではなく85年9月、沖縄県建築士事務所協会が主催していた「住宅設計展」の作品紹介コーナー=下紙面。「これをきっかけに住宅新聞の方から、『お住まい拝見にも掲載させてほしい』と声を掛けていただいたように思う」と山城さん。以来、東設計工房で「200件以上の住宅を手掛けてきた」中から、40年で延べ53物件を掲載した。
「東設計工房」の住宅を初掲載したのは「住宅設計展作品集から(85年9月6日発行・第10号)」
ローコストや多世帯
山城さんの設計物件を掲載した「お住まい拝見」から40年の住宅変遷をたどる。
初登場は86年1月。独立した居間や庭を望む和室がある、昔ながらの間取りの住まい。その2カ月後に掲載した家はLDKがひと続きになり、リビングは高い吹き抜け、トイレや浴室には坪庭が隣接した、現在の住宅でも見られる開放的な造りだ。
87年5月には、二間続きの和室がある伝統的なたたずまいで、家の中央に中庭を設けたコートハウスが登場した。「この40年での間取りの変化というのは、私はあまり感じていない。施主の要望や立地次第だから」。
バブル崩壊後の不況を受け、90年代は「ローコスト」というキーワードが出てくる。96年5月に掲載した物件も「安く仕上げたいという施主の要望もあり、部屋数を減らし、内装仕上げを簡略化」と記事にある。約33坪の2階建て住宅で「建築費用は約1700万円程」とも書かれている。山城さんは「今ではとても無理な金額だ」と話す。
2000年以降は「多世帯住宅」にさまざまなスタイルが見られるようになった。07年11月には4世代で住む3階建ての家、18年7月には庭でつながる二棟の2世帯住宅を掲載した。「近からず遠からず、互いの暮らしを尊重しながら助け合えるよう意識している」
直近では、24年6月に傾斜地に立つ家を掲載した。建築費が高騰する昨今、90年代以上にコスト面はシビアだ。同物件は地階を設けて造成費を削減。収納は施主がDIYすることでコストダウンを図った。
さまざまな物件を掲載してきたが、一貫しているのが、ふく射熱を和らげる赤瓦の木造屋根と、頑丈な鉄筋コンクリートの壁という混構造スタイル。「沖縄の風土に根ざした住まいで、時代の変化にも耐えうる付加価値の高い住宅を目指している」と熱く語る。
披露する場あってこそ
山城さんは「沖縄建築のレベルを上げた歴史的ポイントはいくつかあると思う」と言う。その一つが「1978年、琉球大学に『建設工学科』が創設され、地元の大学で建築を学んだ者が活躍するようになったこと。そこに『お住まい拝見』という発表の場ができ、沖縄の建築家の意識も変わったように感じる」と話す。
紙面の効果は大きく、「設計依頼だけでなく、『働かせてほしい』と若者が来たこともあった」と振り返る。
「2015年から始まった『沖縄建築賞』も意義深い。県内の建築家のレベルアップにつながり、個性的な建築が続々と誕生している。実に喜ばしい」と話す。山城さんも同賞の創設に尽力した。「建築士団体などで顕彰事業はやっていたが、新聞社と共催することで賞の知名度を上げたかった」。
「建築とは〝総合芸術〟だと思っている。心血を注いで造るだけでなく、披露して意見をもらうことで自分の糧になり、次の客へとつながる。『お住まい拝見』は、その役割を果たしてくれている。私もまだまだチャレンジしたい」と力を込めた。
東設計工房が登場した本紙紙面
1986年1月31日発行(第30号)
初登場
当時の「お住まい拝見」は表紙のみの1ページ構成。山城さんが手がけた物件の初掲載は創刊から半年たったころ。赤瓦の木造屋根とコンクリート壁の混構造の2階建て住宅。クロキやマツなどの庭園も相まって「和」の雰囲気を醸す。山城さんの混構造スタイルは、現在に至るまで一貫している
1986年3月14日発行(第36号)
吹き抜けリビングの洋風な家
こちらのお宅はLDKがひと続きになっていているほか、吹き抜けリビングには暖炉がある洋風な造り
1987年5月15日発行(第96号)
伝統的たたずまいのコートハウス
伝統的な造りを取り入れた寄棟の赤瓦屋根と庭の緑が映えるお宅。中庭を囲むコートハウスで、家中に光が巡る。
1996年5月10日発行(第556号)
90年代から目に付く「ローコスト」
表紙だけだった「お住まい拝見」コーナーだが、この頃には2ページ目の約半分まで記事になった、左紙面で紹介している物件は「コスト削減を追求」とある。部屋数や間仕切りを減らしたり、内装などを簡略化して、ローコストながら機能性も追求した
2005年7月15日発行(第1028号)
創刊20周年「あの住宅は今!」
本紙1987年5月15日(第96号)掲載後、創刊20周年企画「あの住宅は今!」にも登場。外観や庭の風情が増し、より魅力的になっていた
2007年11月30日発行(第1150号)
2000年以降 多様化する「多世帯住宅」
お住まい拝見は表紙〜3ページ建てに、1階が祖父母・父親世帯、2階が息子夫婦と子ども世帯、階層で分離し互いに気兼ねなく暮らせるようにした
2018年7月27日発行(第1699号)
2000年以降 多様化する「多世帯住宅」
2棟の平屋が並ぶ完全独立型の2世帯住宅。中庭を挟んだ先に親世帯が建つ
2024年6月21日発行(第2007号)
直近の登場
木のぬくもりあふれる住宅。施主は、山城さんが手掛けた物件を見て「木とコンクリートが融合したデザインがいい」と依頼したそう。木製の収納棚などは施主が一つ一つ手づくりしている
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