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2024年11月15日更新

[お住まい拝見]大空間で集い 楽しむ|(株)エーアンドシーワークショップ

[思い入れの地に2世帯住宅]Aさん宅は家族7人と両親が暮らす2世帯住宅。「生まれ育った地でこれからも住み続けたい」と実家を建て替えた。各階にAさん一家が集い、楽しむ大空間が広がる。西海岸を望める屋上もバーベキューや花火鑑賞など2世帯の憩いの場だ。

2階、Aさん家族が暮らすLDK。床は隣接する子ども室より一段低くし、腰かけられるように。家具を極力置かず、また折り上げ天井で高さをつけ、開放感のある空間となっている


奥行き4メートル超 玄関から広々

Aさん宅
 RC造/自由設計/子世帯7人+親世帯2人 

高台に建つAさん宅は1階に親世帯、2階にAさん一家が暮らす。「ここで生まれ育ち、母親は保育園を営んでいた。両親も思い入れのある土地、地域でこれからも暮らしていけるのが何よりうれしい」とAさんは笑う。借家だった実家を購入し、2世帯住宅に建て替え。各階ともに大勢が集い、楽しむ大空間を計画し、親戚に紹介された建築士に設計を依頼した。

1階は全面バリアフリー。玄関から最も離れた水回りまでフラットにつながり、和室の障子を開け放てば、LDK・廊下まで一体となる広々とした空間に。Aさんの母は「暮らしやすいうえ、孫とも食卓を囲めてうれしい」と満足げ。廊下の壁は孫それぞれの新生児写真や家族写真などが数多く飾られ、一家の軌跡がうかがえる。


1階、親世帯のLDK。全面バリアフリーのほか、2階に住む孫が宿泊できるよう、奥に個室を三つ設けた


1階の和室。右側の廊下には孫の新生児写真などが飾られ、向かい合うように出窓を設置。腰かけて写真を眺めることができる


屋上でBBQや花火

2階は奥行き約4・3メートルの玄関からLDKや各居室に行き来できる。夫人は「買い物した荷物をキッチンに置けたり、野球をしている息子(県外に進学中)がお風呂に入ったり、と帰宅後のスムーズな動線を意識しました」と話す。動線上には大容量の収納スペースを随所に設け、「モノが散らからず雑多にならないよう、心掛けています」

また「共働きのため、家事しながらでも、子どもたちとコミュニケーションが取れることも重視しました」。キッチンをLDKの中心に据え、北側に大部屋の子ども部屋、南側に多目的に使えるプレイコーナーなどを一直線に配置。引き戸で仕切れるようにしつつ、「キッチンから子どもの様子が分かって安心。料理しながらでも会話を楽しめるよう、カウンターキッチンを選びました」

コミュニケーションを大切にするAさん一家にとって、屋上も憩いの場。夫婦は「西海岸を一望できる特等席。夏になるとバーベキューや夏祭りの花火観賞など伸び伸びと過ごしています」と笑う。各階に集い、楽しむAさん一家の暮らしは家族にとって特別な敷地でこれからも続く。



2階の玄関は奥行き約4.3メートルと開放的。右側に進めば、LDK(下写真)や多目的に使えるプレイコーナー、左側には水回りや各居室などをまとめ、回遊性のある造りとなっている。左側に延びる廊下の天井は高く設定し、高窓から採光を確保している


玄関から見るLDK。夫婦は「買い物の荷物が靴を脱がずに運べるので、奥行きをとって正解でした」と話す。(写真は建築士提供)


2階キッチンからは室内が見渡せる。子どもたちは左側にある大部屋の子ども室、右側のプレイコーナー、床の段差に腰かけるなど、思い思いの場所で過ごす

 

ここがポイント
階高抑えコスト減
段差生かし開放感

 

1階外廊下の上部にのびる2階の床。南西の駐車場にのび、雨にぬれずに室内へ行き来や荷物の出し入れができる

Aさん宅の設計では家族7人が暮らす2階の造りが中心となった。大家族に加え、Aさんからは「小さくても子どもそれぞれのパーソナルスペース」「奥行きのある玄関」などの要望もあった。

エーアンドシーワークショップの建築士・新垣朝憲さんは2階の外壁を1階よりも南西の駐車場に約2メートルせりだし=上写真、床面積を確保。その分「住宅の高さを抑えて、コストを削減。奥行きのある玄関を2階のLDKの南西側に配置することで、太陽熱を抑える緩衝帯としました」と説明する。

また、2階の玄関からはLDKや各居室・水回りに直接行き来できるよう、動線を分けた。回遊性のある造りとしつつ、「家族と来客の動線を別々にしたことで、公私の空間を緩やかに分けています」。動線上には大容量の収納スペースを随所に設けた。

子どものための空間は大部屋の子ども室や多目的に使えるプレイコーナーで対応。二つの空間とLDKを隣接させ、大空間を確保。子ども室の床はLDKよりも一段高くし、「段差が空間を視覚的に仕切るだけではなく、腰かけられるように。置く家具の数を少なくでき、室内が広く感じられます」。一方、天井高さは同じにし、空間の連続性を強調しながら、「LDKだけは掘り上げ天井とし、家族が集まる空間は縦にも横にも広がりを感じられるようにしました」。


明暗の色味で塗り分けた外観。左側にある階段を南東の駐車場側に出すことで、外壁に直射日射が当たるのを防ぎ、構造体であるコンクリートへの蓄熱を抑えた。また外壁は凹凸をつけ、彫りがある住宅とした(写真は建築士提供)
 

洗面室は横並びができ、朝の支度などで混雑しない広さを確保している



2階LDKと隣接する大部屋の子ども室。天井高さを隣接するLDKと合わせることで、空間の一体感を高めている


[DATA]

家族構成:1階 親夫婦2人
     2階 夫婦2人+子5人
敷地面積:342.87平方メートル(約103.7坪)
1階床面積:119.75平方メートル(約36.2坪)
2階   :137.50平方メートル(約41.6坪)
建ぺい率:43.45%(許容50%)
容積率:75.03%(許容100%)
用途地域:第1種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造
設計:(株)エーアンドシーワークショップ 新垣朝憲
構造:沖縄県建築設計サポートセンター
施工:(株)山城建設
電気:(有)エース電気工事社
水道:新栄設備工業

問い合わせ
(株)エーアンドシーワークショップ
電話=098・851・7797
https://aandcworkshop.com


撮影/比嘉秀明 文/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2028号・2024年11月15日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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