命の物語描く 理性的な視線|アートを持ち帰ろう(54)|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

特集・企画

2025年9月26日更新

命の物語描く 理性的な視線|アートを持ち帰ろう(54)

文/本村ひろみ

特集・企画

タグから記事を探す

 

構図で時間の流れを表現

「興奮暗化するロクセンスズメダイ」
770000円(税込み)
162センチ×672センチ


個展会場に入って目に飛び込んできたのは壁一面の魚たち。大作「興奮暗化するロクセンスズメダイ」。群れかと思って良く見ると右から左へかけて魚の色が変化している。画家・白砂真也が描いたのは釣り上げられた魚の体色の変化。「一番右が平常時の色で、そこから命の危機によって興奮し体色を黒く染めていきます。息絶えると黒色がサッと引いて白っぽくなり体表がやや乾いて青っぽくなります。魚の動きではなく体色の変化によって生命を表現しようとした実験的な作品です」と説明した。対象を見つめるその視線は理性的であり自然への畏敬の念が感じられる。作品「漂流種子にナンヨウツバメウオ」には幼魚が成魚になるまでの時間が絵に凝縮され、成長の過程が物語のように表現されている。画面上部の浅瀬に広がる生き物の領域から画面下の外洋へ。視線を上下することで沖へと誘う仕組み。

少年のまなざしは、今でも

迫力ある大胆な構図、精緻な筆致、独特な世界観、見れば見るほど引き込まれる白砂ワールド。実家は祖父が始めた釣り具屋だった。当時は祖父が魚の餌用に採ってくる泥の中にいるゴカイや小さなカニの独特な形状や動きにひかれていたそうだ。そんな少年のまなざしは今でも感じられる。作品「ダツとミサゴ」。獲物を捕らえたミサゴの鋭い目と爪、ダツの抵抗する動き。描かれていない釣り人の視線、防波堤のスプレーアートから漂う気配。生き物と人間の生活の場は重なる。そう白砂は語っている。

 

「漂流種子にナンヨウツバメウオ」
(販売済み)
91センチ×72.7センチ
 

「ダツとミサゴ」
330000円(税込み)
91センチ×72.7センチ
 

「礁池」
440000円(税込み)
116.7センチ×91センチ
 

「礁原」
440000円(税込み)
116.7センチ×80.3センチ


作家近況
白砂真也 沖縄県立芸術大学非常勤講師・職員
「イカタコ展」 10/18~12/14
沖縄で活動する13人のアーティストが作り出すイカとタコの美術展に参加。
ザ・ムーンビーチミュージアムリゾート1F ムーンリゾートギャラリーにて開催。
https://www.instagram.com/shirasunashinya/
 

もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2073号・2025年9月26日紙面から掲載

特集・企画

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

キュレーター
本村ひろみ

これまでに書いた記事:54

ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

TOPへ戻る