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2022年8月5日更新

[沖縄・お住まい拝見]高台の景色存分に|遠藤建築設計室

[2、3階に大開口]中城村の高台に建ち、大きな窓から北谷町や沖縄市の街並み、東シナ海まで望めるNさん宅。2階のLDKや、3階の子ども室からも見晴らしを楽しめる開放的な造りが特徴だ。

海を望む北東側に大開口を設けたNさん宅。2階のLDKや3階の子ども室からも景色を堪能できる(矢嶋健吾撮影)

吹き抜け&大開口で広々

Nさん宅
RC造/自由設計/家族5人

寝室のある1階は、やや暗め。しかし、2階のLDKに上がると眼下に北谷町や沖縄市の街並みが広がり、水平線まで望める。「近くで両親がカフェを営んでいるので、この眺めを見込んで土地を購入した」とNさん。

景色をダイナミックに切り取る大開口と、2~3階にかけての吹き抜けで開放感たっぷり。「カーテンを付ける予定だったけど、結局付けていない」。夫人も「夜景もきれいだし、雨の日もいい。向こうでカタブイしているなーって、ボーッと眺めちゃう」とほほ笑む。

ソファでくつろいでいても、ダイニングに座っていても眺望が楽しめる。それは大開口の外にあるバルコニーの床が居室より40センチ下がっているから。手すりや床が視界を邪魔しない。


中城村の高台に立ち、LDKの大開口から市街地や海が望める。2~3階にかけての吹き抜けも相まって開放的


生活感出さぬ動線

3階の子ども室からも吹き抜け越しに景色を堪能できる。オープンに見えるが、実はガラスで仕切っている。「LDKの音が上に響くのは嫌だな、って。子どもたちの集中や睡眠を妨げたくない」との理由からだ。

LDKや子ども室など長く居る場所は、ほれ込んだ見晴らしを目いっぱい楽しめる。「もはや景色も暮らしの一部。希望通りの造りにしつつ、建築費も抑えた提案をしてくれた建築士さんに依頼して良かった」。

景色を楽しめる造りとともに重視したのが、生活感を出さないこと。キッチンの脇にはパントリーを設け、冷蔵庫や食器、電子レンジなどの家電もすべて収納した。「動線が多少長くなっても、表に物が出ないことを優先した」と夫人。

洗濯物も、西側の端に脱衣所、室内物干し場、ファミリークローゼットをまとめ、LDKに出さずに裏動線だけで片付くようにした。

表と裏をきっちり分けることで、オープンな造りでも気兼ねなく過ごしていた。


2階・大開口の外側にあるバルコニー。床面をLDKより40センチ下げ、居室からの視界を広げた。その高低差をベンチ代わりに活用


コンクリート階段は、壁から「片持ち」になっている。段同士がつながっておらず隙間から光と風が通る。「朝昼晩と、それぞれ違う雰囲気になるので気に入っている」と夫人

ここがポイント
仕上げ省いてコスト減

海まで見える北東側に大きく開くNさん宅。設計した遠藤建築設計室の遠藤篤志さんは「一番大事にしたのは、『景色を堪能できる造り』と『暮らしやすさ』との両立。例えば、日差し対策のため1・8メートルの軒を設け、東側はパントリーや倉庫を出っ張らせて、朝日を遮る役割を持たせた」と話す。

3階の子ども室は、景色を生かしつつ「2階の声は響かないようにしたい」との要望を受けて吹き抜けとの間に、はめ込み式のガラスを入れた。そのため、吹き抜けからの通風が確保できなくなった。そこで階段に工夫。「段の間に隙間を設け、扉を開けていれば風が2階へ流れるように計画した」

この隙間は風だけでなく、光も通す。「夜になると、1階の寝室にいても3階の光が漏れてくる。子どもたちがまだ起きているな、って分かる」と夫人。

また、コストが掛かる3階建ての要望だったため「内装で、なるべく費用を抑えるよう考慮した」。その一つが土間床。寝室、子ども室や水回りなど、LDK以外はコンクリートの土間にして、仕上げ材分のコストを削減した。

壁もコンクリート打ち放しで左官仕上げを省いた。遠藤さんは、「私の自宅でも実験的にやってみた。あちこちに小さな気泡があいたが、耐久性は問題ない。むしろコンクリートの硬い印象が和らぐ。Nさんにも、わが家を見てもらった上で取り入れた」と話した。

2階のLDK。3階に居ても、ガラス越しに顔が見える。子ども室の下は天井高1・95メートルのリビング


(上)子ども室のデスクスペースも絶景(下)壁付けのキッチンと作業台。写真奥のパントリーに冷蔵庫や食器、家電もすべて収納している


寝室棟の浴室。眺望を際立たせるため内装は黒に

1階は、写真左奥の寝室まですべて土間床
 

海を望む北東側に大開口を設けたNさん宅。3階建てで1階に寝室、2階にLDKや水回り、3階に子ども室がある



[DATA]
家族構成:夫婦+子ども3人
敷地面積:179.90平方メートル(約54坪)
1階床面積:67.29平方メートル(約20坪)
2階床面積:68.94平方メートル(約20坪)
3階床面積:37.26平方メートル(約11坪)
建ぺい率:40.14%(許容50%)
容積率:81.42%(許容150%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設計:遠藤建築設計室 遠藤篤志
構造:(有)建築設計庵 長間大輔
施工:(株)孝建設 西野義孝
電気:長浜電気サービス 長浜道人
水道:(有)ライフ工業 我喜屋奨
キッチン:(株)クチーナ沖縄
     比嘉智恵子

問い合わせ
遠藤建築設計室
電話090・3795・9843
http://endoh.boo.jp/


撮影/矢嶋健吾 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1909号・2022年8月5日紙面から掲載

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