こだわリノベ
2023年4月28日更新
築46年の一戸建て 設計・施工も手掛ける家主はどうリノベーションした?|こだわリノベ
[こだわリノベ]築46年の住宅を購入し、北欧風のLDKやインダストリアルな雰囲気の書斎など家族好みにリノベーションした吉川潤一さん(43)。設備や動線計画で家事の効率を上げたことにより、一緒に映画を見たり、サバイバルゲームをしたりと家族の時間も増えた。
1階LDK。左手の三角屋根の家型に縁取られたスペース「ヌック」や、天井からつられたハンモックは「ゆっくりできる家族の居場所」と吉川さん。北欧風のインテリアがやさしい雰囲気をかもしている
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リノベーション前
改修前のお悩み
「和室で細かく区切られた空間を、家事がしやすく子どもが遊べる空間にしたい」
書斎。大きなバイクが目を引く。棚にはバイク用品のほか、キャンプギアなどが収められている。お酒も書斎に保管してあるため、「リビングからお酒を取りに来て、少しバイクを眺めてから戻る瞬間が好き」と吉川さん
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リノベーション前
キッチン。左手の扉の奥は洗濯機のある家事室になっており、料理しながら洗濯など、同時並行で作業しやすい。右手中央には、お掃除ロボットの基地がある
玄関。上がりかまちの下には、サンダルや靴を置くための隙間がある。毎回靴箱に靴を片付けなくても、散らかった印象にならない
お酒片手にバイク眺める
1階にLDKや書斎、中2階に寝室、2階に子ども室がある築46年の2階建て。白や淡いグレーを基調とした空間や、三角屋根の家型に縁どられた部屋の入り口など、彩りやデザインが北欧の雰囲気を漂わせる。
家族が主に過ごすのはLDK。ハンモックや小さな空間である「ヌック」では、夫妻や3人の子どもたちが映画を見たり本を読んだりしてくつろいでいる。
中でも吉川さんのお気に入りは広さ約2帖のヌック。「大きなソファとして使ったり、和室のようにごろんと寝転がったりもできる」
一方、書斎はインダストリアルな印象。何より目を引くのは、窓際にドンと置かれた大型バイク。一段下がった土間部分で、部屋の主役となっている。「お酒を飲みながらバイクを眺めるのが至福の時間。子どもたちがメンテナンスを手伝ってくれることもあります」
家の中でサバゲー
子どもたちが成長しアパートが手狭になってきたことから住宅取得を決意した吉川さん。自身がリノベーション事業を手がけており、内装にもこだわりたかったため、中古物件をリノベすることにした。
そんな中、巡り合ったのが今回の物件。和室で細かく区切られていたが、インナーガレージとその隣の応接室を見て「壁を取り除いて応接室の床をはがせば、部屋にバイクを入れられる」と思い、購入を決めた。
「家事ラク」「楽しむ家」をテーマに夫婦でプランを考え、回遊性のある造りで家事動線も便利にした。「家事の効率が良いおかげで、子どもたちとスキンシップをとる時間も増えた」と吉川さん。広いLDKでサッカーをしたり、回遊性のある造りを生かしてサバイバルゲームをするなど、家族で伸び伸び楽しめる住まいになっている。
外観。左手の駐車場の奥にはウッドデッキを計画中
吉川さんがリノベを選んだ理由
内装にこだわりたかったから。新築だとどうしても建物自体にかかる費用が大きくなるので、内装にかける費用は抑えられてしまう。好きな内装にするため、中古物件を購入し、リノベーションすることにした。
リノベーション前
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2階子ども室前のホール。クロス部分を除き、天井や壁はDIYで塗装した
子ども室。水色の壁がひんぷんのように通路からの視線をゆるく遮る。入り口が2カ所あり、将来は2室に分けられるようになっている
吉川さん宅 リノベのカギ
設備と動線計画で家事ラクに。既存の床や壁の上に新しいものを張ってコスト削減。
既存壁を下地に
自邸のリノベをプランした吉川さんは「建物の規模が大きいので、間取りは自由に計画できた」と話す。
配慮したのが家事のしやすさ。特にキッチンは、1日分の食器をまとめて洗える海外製(ミーレ社)の大きな食洗機や、五徳がなく掃除しやすいIHコンロを導入したほか、隣に家事室を配置した。キッチンで作業しながら、家事室で洗濯機や乾燥機も回せる。「回遊性のある間取りで動線も極力短くし、毎日の家事がラクになるよう意識した」
お掃除ロボットが動きやすいよう、上つり式で床にレールの無い引き戸を採用したり、ほこりがたまらないようテレビ台をなくしたりもしている。
コストを抑える工夫も。水回りは配置をほとんど変えずにプランしたほか、床材や壁材は既存のものの上から貼った。「下地材が不要になる上、解体の処分費用もかからない」と吉川さん。
さらに、家事室の壁や天井などの漆喰塗料は家族で施工。「プライベートな場所なので失敗しても気にならない。思い出にもなった」
そのほか、子どもたちが部屋にこもらないよう、子ども室の入り口は扉の代わりにひんぷんのような目隠し壁を設置した。
物件購入前には躯体の状態のほか、湿気やシロアリを防ぐコンクリート土間が床下に打たれているか、水道管がさびにくい塩ビパイプになっているかも確認していた。「特に水道系は意外と費用がかかる。チェックポイントの一つ」と説明した。
リノベーション前
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洗面室。壁面は光が当たるとカビなどを分解する光触媒でコーティングしている。窓は既存のデザインガラスを再利用した
中2階にある寝室。高い天井で開放的な印象
2階バルコニー。床に防滑シートを敷き、壁にはボルダリングの設備を設置。雨の日でも思い切り遊び回れる
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
躯体構造:鉄筋コンクリート造
築年数:46年
1階床面積:101.36㎡(約30.55坪)
2階・中2階床面積:63.08㎡(約19.06坪)
工期:約5カ月
設計・施工:CL Planning(トーエイ建設産業)吉川潤一
キッチン:クチーナ沖縄
[問い合わせ先]
CL Planning(トーエイ建設産業)
電話=098・998・1518
https://www.cl-planning.jp
撮影/泉公(ララフィルム) 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1947号・2023年4月28日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
これまでに書いた記事:224
編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。