[沖縄・お住まい拝見]ワンルームの開放感|建築空間アボット|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2022年2月4日更新

[沖縄・お住まい拝見]ワンルームの開放感|建築空間アボット

[スキップフロアのある2世帯住宅]本島中部の住宅地にあるTさん(39)宅。夫人の実家を、2世帯住宅に建て替えた。夫婦憧れのスキップフロアを取り入れた、ワンルームのような広い空間を、伸び伸び楽しむ。

2階のLDK。広さ28畳、天井も高く、開放的。最奥にはスキップフロアのカウンターが設けられていて、キッチンの周りをぐるりと回遊できる

集い楽しむ大空間

Tさん宅
RC造|自由設計|家族4人

Tさん宅は、完全分離型の2世帯住宅。1階に親世帯、2階にTさん一家が暮らす。

1階にあるTさん世帯の玄関は吹き抜けになっていて、天窓からの光が、階段室まで明るく照らす。2階に上ると、和室からLDKまでが、仕切りなくつながる大空間が広がる。「将来、仏壇を継ぐので、人が集まってもゆったり過ごせる造りが希望でした」とTさん。

コンクリート打ち放しの空間は、天井も高く開放的。掃き出し窓を開け放てば、ベランダまで一体的に使える。「ベランダでイスに座って、風を感じながら過ごす時間がぜいたく。花火も見えます」

キッチンを囲むように背後に水回り、正面には子ども室。サイドには、家族のワークスペースと通路を兼ねた掘りごたつ式のカウンターがある。子ども室とカウンターは、スキップフロアで床高を変えた。「夫婦とも平屋で育ったので、階段のある家、スキップフロアに憧れがあって。水回りへの動線が良く、子どもの様子も見渡せるので、キッチンにいる時間が好きになりました」と夫人(35)。

行き止まりがないため、6歳と4歳の子どもたちは家中をグルグル走り回って遊ぶ。「子どもたちが伸び伸び過ごしているのが一番うれしい」


和室からLDKまで、一体的につながる大空間。あえてソファを置かず、ゆったりかつフレキシブルに空間を使う。和室は、引き戸を閉めれば個室に。南側(写真左側)に設けられた高窓からも光を取り込む

外観。前面にはたっぷりの駐車スペース。写真左端が、1階親世帯へのアプローチ。屋根付き駐車場を挟んだ写真右手に、Tさん世帯の玄関がある



ここがポイント
段差で快適さ高める

敷地は南北に長く、北側に前面道路、東側には住宅が近接している。建て替え前は敷地が前面道路より若干低かったため、大雨時には道路から水が浸入。湿気の高い土地だった。設計を手掛けた建築士の當山茂さんはまず、敷地環境の改善に着手。「水が流れ込まないよう、30センチほど盛り土して敷地全体を上げ、湿気がこもらない状態に整えました」

両世帯の希望で、玄関とアプローチは別々に。1階の親世帯は東側の塀沿いに、Tさん世帯は西側に玄関へのアプローチを設けて、動線を完全に分けた。プライバシーを守りながらも、つながりを感じられるよう配慮。「中庭を吹き抜けにして1階はデッキスペース、2階はベランダを配置。お互いの声や気配が、中庭を通して伝わるようにしました」

2階、Tさん世帯のポイントは、キッチン回りの空間構成。スキップフロアと回遊動線を組み合わせ、機能的かつコミュニケーションが取りやすい造りにした。キッチンの背後に水回りをまとめ、正面に子ども室、脇には、子ども室と水回りを結ぶ通路を兼ねた、カウンターを配置。ぐるりと回遊できる。子ども室とカウンターはスキップフロアに。「段差をつけることで、オープンでも空間の区切りができます。カウンターに座ると、キッチンに立つ人と目線の高さが合い、会話もしやすい」

天窓や高窓を活用した採光もポイント。西日やふく射熱、西側に建物が建った時を考慮し、西側の窓は小さめに。西側にある玄関やクロークには天窓、南の端に設けたカウンター上部には高窓を設け、柔らかな光を取り込む。

天井が高く開放的な二番座。柱や梁、屋根裏などを点検しやすいよう天井は張られていない。手前のカウンターテーブルは藤田さんが家の雰囲気に合わせてDIYしたもの
 


キッチン。夫人は「料理や洗い物をしながら、大きな窓から見える緑を楽しめる」


寝室として使っている裏座。「夜、電気を消すと、葉っぱの影が障子に映ってきれいなんですよ」と夫人


外壁。無塗装なので維持費が安く、経年変化を楽しめる。木材は角が割れるのを防ぐため面取りされている

床下は全方位、開いているので、風が通りやすい。網が張られ動物などが入らないようになっている

 

床下は全方位、開いているので、風が通りやすい。網が張られ動物などが入らないようになっている

 


[DATA]
家族構成:1階 両親
     2階 夫婦、子ども2人
敷地面積:348.69平方メートル(107.76坪)
1階床面積:114.55平方メートル(35.35坪)
2階床面積:124.15平方メートル(38.32坪)
建ぺい率:40.93%(許容70%)
容積率:68.45%(許容200%)
用途地域:指定なし
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:建築空間アボット 當山茂
構造:(有)建築設計 庵 長間大輔
施工:(有)沖忠建設 崎山喜忠
電気:(有)中原電設 仲村直也、池原啓太、隆建二
水道:前田設備 前田勲、祝嶺好範、備瀬知秀
キッチン:(株)クチーナ 福田美直
内部大工:仲村渠清行
 
問い合わせ
 建築空間アボット
 電話098・937・7334
 http://abbot-touyama.boy.jp/


撮影/矢嶋健吾 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1883号・2022年2月4日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2416

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る