お住まい拝見
2025年7月18日更新
[お住まい拝見]緑・小川の涼を感じて|アトリエスイミー
[ダウンフロア 広がり+家具にも]
敷地南側には木々が生え、小川が流れていた。仲本さん夫妻は「この自然を生かした家」を思い描いた。室内はどこからでも風景が一望できるよう窓を取り付け、床が下がったダウンフロアのLDKは特に開放的。腰掛けられる段差は収納としても使える。

1階LDK。外の木々が目隠しとなり、室内はカーテン要らず。視線が抜けつつ、ダウンフロアのLDKの天井は高いところで約3メートルと縦横に開放感だ
日陰の外でも憩う
仲本さん宅
木造/自由設計/家族2人
名護市の市街地近くに建つ仲本さん宅は木造2階建て。
玄関からLDKに足を踏み入れると、南側の大開口から青々とした木々が視界いっぱいに広がり、驚くほど開放的だ。木々の足元を小川が流れ、妻・苑子さんも「夜になると蛍が訪れて、奇麗なんです」とうれしそうに話す。屋根より高い緑が自然のカーテンとなり、外からの視線を遮りつつ、木漏れ日が室内をほのかに照らす。

豊かな自然が残る敷地を見つけたとき、「すぐに購入しました」と夫・智樹さん。建設会社に勤めるため、造作はおてのもの。暮らし始めてからはウッドデッキを軒下空間と足場を組んで小川の上に造り付けた。「外でのんびりしたり友人らと食事をしたり。開発が進む地元で、自然を身近に感じながら暮らせるとは思わなかった」と笑う。
弧を描く壁
総床面積は約26坪ながら、室内は広がり・機能・意匠が調和した造りが目を引く。
たとえば、ダウンフロアのリビング。DKより床が一段下がってるため、「段差を収納に仕え、ソファの代わりに。友人らが集まると自然と床に座り、くつろいでいました」と夫妻。また隣接する和室は床を上げつつ、「ひとつらなりの空間だけど、場所ごとに居心地が違っていい。アクセントに『曲線』を使おうと建築士とも話し合い、和室とLDKは弧を描く壁で仕切りました」。玄関までのアプローチや壁付けのちょっとした飾り棚にも曲線を取り入れた。

和室は曲線を描いた壁が印象的。床の高低差によって空間が仕切られ、メリハリがある

家事のしやすさも重視。1階西側にまとめた洗面室・浴室は「収納ボックスやラックなどは整えて、洗濯から室内干し、片付けまでがスムーズできるようしました」。
2階は廊下と一体になった洋室で「壁に投影してスポーツ観戦や映画鑑賞。1階と様変わりして、趣味に没頭しています」。洋室は二部屋に仕切れる造りにしたほか、木屋根をあらわにしたことで屋根裏収納としても使える。

ここがポイント
壁内の湿気や熱 風で外に逃がす
仲本さん宅の設計で中心となったのは南側の木々と小川だ。アトリエスイミーの建築士・嘉陽恵美さんは敷地にあった自然の魅力を損なわないよう、整地する面積を最小限に。「室内にいながらでも、自然をより身近に感じられるプランを提案しました」と説明する。
1階LDKの窓は高さ2.4メートルの天井に届くほどの大開口のほかに、横長の窓を設置。向かい合うように和室を配置しつつ、「曲線を使った壁などでLDKと緩やかに仕切る。優しい光が室内を照らすので、柔らかなデザイン性をプラス」。また、床の高さはDKを基準にリビングは掘り下げ、和室は上げることで、段差を生かした収納ができるようにした。

LDKにはほのかに緑色の陽光が差し込み、温かみのある雰囲気に包まれる。間接照明やダウンライトなど人工的な光は目立たないよう計画されていた
耐久性と居心地の良さを高める造りも随所に光る。その一つが「軒」。「住宅の劣化要因となる雨水や日射などをいかに直接あてないか。少しでも長く暮らし続けるためにも、欠かせないと思います」と嘉陽さん。各階の四方には深い軒を出した。

四方に軒を出したことで、劣化要因である雨水が外壁にあたる面積を最小限に。グレーのスタイリッシュな外観を長く維持できる工夫がなされている
また、「壁内の通気も大切」。気づかないうちに壁内部は太陽熱や湿気を含んだ空気により、「木材が腐食しやすい環境になることも」。そのため、木造専門の工務店にも相談しながら、「空気の通り道をつくり、湿気や熱をためこまないようにしました」。太陽熱の影響を特に受けやすい屋根にも断熱処理などを施し、住宅性能を高めた。

見上げるほど高さがある階段。上から差す込む陽光に導かれるように、2階へ

ゆとりのある洗面室にある収納ボックスやラックなどの前を通って、浴室へ

浴室。床は掃除しやすいようタイルを敷き、壁にも幾何学模様のタイルで装飾している
[DATA]
家族構成:夫妻
敷地面積:238.07平方メートル(約72坪)
1階床面積:55.48平方メートル(約16.8坪)
2階床面積:31.46平方メートル(約9.5坪)
建ぺい率:29.21%(許容40%)
容 積 率 :36.51%(許容80%)
用途地域:第1種低層住居専用地域
躯体構造:木造・在来軸組工法
設 計:アトリエスイミー 嘉陽恵美
施 工:(株)悟大
電 気:(合)明正電気工事社
水 道:(合)明正電気工事社
◆問い合わせ
アトリエスイミー
電話=098・866・3136(株式会社フリースタイル内)
https://atelierswimmy.jp
撮影/比嘉秀明 文/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2063号・2025年07月18日紙面から掲載