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2020年8月7日更新

凹凸に集う光・風・人|㈲門一級建築士事務所

[お住まい拝見〕|本島中部の住宅街、海の近くにあるOさん(39)宅は、たくさんの凹凸で光や風を取り入れる平屋。中庭を介して公私を分けた造りは使い勝手が良く、人も集いやすい。昨年の第5回沖縄建築賞では正賞を受賞した。


LDK。手前の畳間から奥のキッチンまでがフラットにつながるだけでなく、空間全体が3.5メートルの高い天井で開放的。右手の中庭や、左手の開口部、奥のトップライトなど、常にどこかから光が入って明るい

 

沖縄建築賞正賞の平屋

Oさん宅
 RC造/自由設計/家族2人 

無駄のない完璧な動線
異なる形・大きさの箱を組み合わせたようなOさん宅。それぞれの箱には違った役割の空間が収まっている。
その一つ、玄関から右に向かった先にある最も大きな箱はLDK。3.5メートルもの天井高に加え、キッチンからダイニング、リビング、畳間までの約28帖がフラットでつながる大空間だ。さらに、庭に面した幅約7メートルの大きな開口部によって、視線は外にも広がっていく。Oさんは「とても開放的で広いので、親戚が集まることも多いです」。
一方、玄関から左に行くと水回りや寝室などの箱。「LDKとはゾーンが分かれているので、来客時もプライバシーが守られる。実際、遊びに来るおいっこたちは、LDKしかないと思っていますよ」。
夫人(41)のお気に入りは家事動線。特に、寝室からウオークインクローゼット、洗面脱衣室にかけての回遊できる造りは「無駄がないパーフェクトな設計」と評価する。「洗面脱衣室で乾燥機にかけた洗濯物は隣のウオークインクローゼットにかけるだけで収納できるし、朝は寝室から着替えて洗面に行くまでの動きもスムーズ」と、使い勝手の良さに満足げな笑顔を見せる。

キッチンから見たリビング・ダイニング。右側の窓は幅約7メートルもあるため、外の景色が自然に視界に入り、窓を開けなくても外とのつながりを感じる



洗面脱衣室。奥には約4帖のウオークインクローゼットがあり、「乾燥機から出した洗濯物がラクに片付けられる」と夫人。トップライトやハイサイドライトにより、照明をつけなくても明るい


つまみは受賞演説
4年ほど前、土地探しから始めた夫婦。いとこの紹介で実家近くに土地は見つかったものの、夫婦が求める「明るくて広い、風通しの良い平屋」を提案する設計事務所がなかなか見つからなかった。
あきらめかけていた時、叔母が「私が設計をお願いした建築士ならなんとかしてくれるはずよ」と建築士を紹介。夫婦が会ってみると「頭の中が見えているように言葉をくみとり提案してくれた」ため設計を依頼することにした。
そうして完成した住まいは、第5回沖縄建築賞で住宅部門の正賞を受賞。夫人は「私たちはもちろん、周りも喜んでくれた。特に父は授賞式での建築士のスピーチの動画をおつまみに、わが家でおいしそうにお酒を飲むほどです」。
身内のつながりで生まれた住まいは、集う機会の多いOさん夫婦のライフスタイルに合うだけでなく、身内同士の関係もより密接につないでいるようだ。


寝室。設計時、事前にセミダブルのベッドを二台置くことを建築士に伝えていたため、「ベッドの周りにも余裕を持たせてもらい、使いやすい」とOさん



キッチン。左上の釣り鐘のようなものはレンジフード。二つ重ねたフードの継ぎ目を隠すためにカバーで覆われている。天井との取り合い部分にはスリットが施されており、まるで天井よりも高い部分からフードが伸びているよう


ここがポイント
採光・通風・コスト 考慮の結果凹凸に
Oさん宅の敷地は北東側の2面が道路に面しており、北側は小学校の通学路でもあった。建築士の金城豊さんは「風を取り込むには南東側に庭を設けるのがセオリーだが、幸い東にある海からの風もあったため、あえて建物を道路から離し、地域に対して閉鎖的にならないよう配慮した」と説明する。
その風や光を効率よく取り込めるよう建物の形を工夫。時間や季節で変わる太陽の位置・風向きなども計算しながら考えた結果、「一つの大きな箱ではなく、複数の小さな箱をずらして配置したり、高さを変えていくことになり、平面的にも立面的にもでこぼこした形になった」。例えばLDKなら、朝は庭に面した開口部から、午後になると中庭から光が入る。トップライトも随所に設けた。夫人は「一日中明るいし風も抜けるので、照明や冷房はあまり使いません」。
凹凸の理由はもう一つある。夫婦の「LDKの天井をとにかく高くしてほしい」という要望に応えるためだ。LDKの天井高を3.5メートルにした分、廊下や水回りの天井高は抑えてコンクリートの量を調節。コストのバランスをとった。
LDKの天井高を上げたことに伴い、キッチンのレンジフードも工夫。一般的なフードを二つ重ねることになり継ぎ目が見えてしまうため、フード全体をカバーで覆いインテリアとなじませた。
そのほか、凹凸によって中庭ができたことで、公私も分けやすくなった。中庭と水回りが緩衝帯となり、LDKの音も寝室まで届きにくい。また、東側の道路に向かって玄関扉が設けられているが、ひんぷんで正面からの視線、駐車場の車で横からの視線を遮る。金城さんは「建築だけでなく、駐車など、人の動作でも視線はコントロールできる」と話した。


LDKの上にある屋上テラスから、玄関や水回り、居室部分を見る。縦にも横にもでこぼこしていることがよく分かる


外観。道路と庭との境界は沖縄に自生する植栽で仕切った。植物が大きくなれば、目隠しになるとともに、まちの景観づくりにも一役買う



玄関。扉と壁に使われた米杉の明るい色が、白い空間に映える。扉を閉めれば、扉が壁に一体化しているように見える


真ん中で仕切って2室にできる個室。廊下との天井高の差を利用して設けた右上の窓があることにより、左手の窓を開ければ風が抜けていく(提供)

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[DATA]
家族構成:夫婦
敷地面積:366.42平方メートル(約110.84坪)
1階床面積:118.87平方メートル(約35.95坪)
建ぺい率:41.28%(許容60%)
容積率:32.44%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造
設計:(有)門一級建築士事務所 金城豊、崎浜剛
構造:建築設計 明
施工:(有)クリエイト技研
電気:(有)糸洲電気工事社
水道:(有)山商


[問い合わせ先]
(有)門一級建築士事務所
電話098-888-2401
https://www.jo1q.com/


撮影/泉公(ララフィルム) 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1805号・2020年8月7日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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