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2018年12月7日更新

焼き物と暮らす家|アトリエ・ダグ・アーキテクト

[お住まい拝見・庭囲むL字の大開口で明るく]Iさん(56)宅は、趣味で集めた焼き物が随所に飾られた、鉄筋コンクリート造平屋建て。L字型に庭を囲んだ開口部で室内は明るく、さまざまな角度から庭を楽しめる。


ダイニング。キッチンの背面を利用した造り付けの棚には、夫人が趣味で集めたカップや器などの焼き物がズラリと並ぶ。食事などの際には、家族それぞれが気分に合わせたものを選んで使う
 

解説付きのギャラリー

Iさん宅
RC造/自由設計/家族4人
塀でぐるりと囲まれたIさん宅。門をくぐり、段差を数段上がった先にある玄関では、夫人が長年かけて集めた焼き物たちが来客をもてなす。ダイニングの壁、キッチンの背面など、随所に設けられた飾り棚にも、県内で活躍するさまざまな作家の作品が並ぶ。

そこに「これは子どもが焼き物を割ってしまったのが縁でね…」と夫婦の思い出や解説が入ると、ギャラリーにいるかのような気分になる。

共働きで忙しい夫婦だが、休日の朝はコーヒーを楽しむのが習慣。大学生の子どもたちが加わることもある。その際のカップはもちろん焼き物だ。「使わないと意味がないから」と惜しげもなく、コレクションの中から各自で選ぶ。

Iさんは「運気を上げたいから今日は赤にしようかな」と楽しそう。ダイニングがお気に入りという夫人は「ここから庭や坪庭、焼き物を眺めていると、なんだかやる気が出て、気持ちよく一日のスタートを切れる」。

持ち家から巣立ちを
以前はアパートで暮らしていたIさん家族。「古い考え方かもしれないが、持ち家から子どもたちを巣立たせたかった」ため、10年ほど前に土地探しから家づくりを始めた。

情報誌を見たり、見学会に訪れる中で、コンクリート打ち放しに木を多用した、夫人好みの家を建てる建築士に出合い、依頼することに。夫婦は「焼き物がたくさん飾れる家」とともに、「光がたくさん入る家」を求めた。

そこで建築士は庭を囲むようなL字型の建物を提案。幅約2.5メートルを開け放てる和室をはじめ、庭に面した部屋は大きな開口部で光を取り込めるようにしたことで、いろいろな角度から庭を眺められる。しかし、今は芝庭のため、夫婦は「仕事が落ち着いたら、木を植えたりして庭にも手を入れたいね」と、屋外も楽しい家を目指す。

住み始めて約1年。来年には子どもの1人が県外で就職する予定だという。「短い間でも家族4人がこの家で過ごせてよかった」と話すIさんは、巣立った子が家族を連れて帰ってきて、一緒に庭でバーベキューをするのも心待ちにしている。


リビング。鉄筋コンクリート造の打ち放しだが、建具や床だけでなく、天井にまで木を使うことで、あたたかみが感じられる。夫人は「この雰囲気が焼き物によく合っていて好き」と満足そう


焼き物が出迎えてくれる玄関。写真奥と手前の2カ所から出入りできる。家中のほとんどの収納は造り付けのため、統一感がある

ここがポイント
地盤上げ防災・通風 ロフト床が梁の役割
Iさん宅が建つ地域は、大雨による浸水被害を受けたことがあった。そこで建築士の下地恒さんはまず、「設計のベースとなる地盤を道路よりも60センチ高くした。居室の床はそこからさらに50センチ上げた」と話す。
 そのため、建物を囲む塀の高さは道路から見ると2.8メートルだが、塀の中からだと2.2メートル。外からの視線を遮りつつ内部の圧迫感を軽減するだけでなく、風も入りやすいという。


約14坪の庭から建物全体を見る。大きな開口部が庭に面して並ぶ様子が分かる。浸水対策のため、庭は道路よりも60センチ高い場所にある

将来を見据え、床はフラットにしたほか、2室ある子ども室は一つの空間として使えるよう棚で仕切った。また、子ども室はコンパクトだったことから、空間を無駄なく使うために天井高を上げてロフトを設置。天井を高くした分、梁が太くなりがちだが、ロフトの床を構造体の一部として梁(はり)の役割を持たせることで、スッキリした見た目にした。

Iさん家族は「基本的にガス乾燥機を使う」生活スタイルだったため、物干しスペースはほとんど設けず、家事室に洗濯機や乾燥機などをまとめた。

一方で、ガラス張りの坪庭を設けたり、ダイニングとリビングを分けたりして、気分や状況に合わせて過ごせるさまざまな居場所を設けるよう配慮した。

暑さ対策として、屋根には遮熱ブロックを敷いた。西側には収納や水回りを配置し、西日の熱による居室への影響も抑えた。


ロフトの上と下に、幅約2.5メートルの大きな窓があり明るい子ども室。右の棚を取り払えば、隣の子ども室と一体化することもできる


坪庭。室内にたっぷりの光と奥行きをもたらす


幅約2・5メートルの大開口が目を引く和室。周囲に高い建物がないため、ウッドデッキに座ると、塀から上の空だけが見える

[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども2人
敷地面積 :248平方メートル(約75.02坪)
1階床面積:102.37平方メートル(約30.97坪)
建ぺい率 :43.14%(許容60%)
容 積 率:41.28%(許容200%)
用途地域 :無指定
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設  計 :アトリエ・ダグ・アーキテクト 下地恒
構  造 :Spa建築研究室
施  工 :與那城組
電  気 :シロマ電気
水  道 :国設備工業
キッチン :MOV


[問い合わせ先]
アトリエ・ダグ・アーキテクト
098-836-8813
http://www5.plala.or.jp/dug/


撮影/高野生優(フォトアートたかの) 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1718号・2018年12月7日紙面から掲載

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「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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