沖縄建築賞
2019年5月24日更新
【第5回沖縄建築賞】住宅建築部門 正賞/「アカジャンガーの家」(うるま市)/金城豊氏(49)/門一級建築士事務所
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全26作品の中から、第5回の入賞作品6点が決定した。住宅部門正賞には金城豊氏の「アカジャンガーの家」が、一般建築部門正賞には宮城江利奈氏の「オアシスバンク」が選ばれた。
第5回沖縄建築賞入賞作決まる
住宅建築部門正賞に輝いた、金城豊氏設計の「アカジャンガーの家」。周辺環境に寄り添った敷地計画で地域とつながり、「地域の記憶」の再現を試みた。建物にはあらゆる向きからの光や風を取り入れるため、たくさんの凹凸がある
開放的なLDK。天井高は3.5メートル、テラスに面した左手の窓は開け放てば約7メートルの大きな開口となる。正面奥のトップライトや、右手の中庭など、さまざまな方向から明るい光が入る
LDKでの新築祝いの様子。金城氏は「地縁・血縁を大切にする文化を表す場として、風通しがよく、天井の高い仏間のある空間を計画した」。正面の棚には将来仏壇が入る予定
住宅建築部門 正賞
「アカジャンガーの家」(うるま市)
地域の記憶に寄り添う
凹凸駆使して光と風
アカジャンガーとは、うるま市で発掘された貝塚の名称。かつての人々の生活があったことを示す。その近くの住宅街に「アカジャンガーの家」は建つ。設計した金城豊氏は「北東側の道路が通学路になっていることもあり、地域に寄り添う建築を目指した」と話す。
その一つが庭。敷地の東側に配置し、庭を囲むフェンスは道路から50センチセットバック。その部分に琉球列島固有の植物を植栽した。「貝塚の時代の子どもたちが見たであろう風景を、現代の子どもたちも見られるように再現することで、過去の風景を未来につくり、地域の記憶を残せるようにした」。
東に開く敷地計画としたため、採光や通風は建築で工夫。LDK、洗面・浴室、個室と三つに分かれたボックスをつないでいるが、そのつなぎ目部分をずらすことで、建物にはいくつもの凹凸が生まれた=平面図、断面図。金城氏は「凹凸によって全ての部屋が外部と接し、風や光の向きが季節ごとに変化しても室内に呼び込むことができる」。
▼平面図
▼断面図
施主のOさんは「風通し・開放感・明るさという要望を全てかなえてもらった」と満足そう。審査では「各ボックスや通路、中庭が巧みに配され、内部の天井高やタテヨコのバランスも心地いい」と評価。細かく区切った造りは周囲に与える圧迫感の軽減にもつながる。
審査員は「住宅ではあるが、地域の記憶や環境、社会に寄り添う建築を目指した設計者の挑戦がうかがえる」と評し、住宅部門の正賞に輝いた。
南側から見た外観。凹凸の様子がよく分かる
テラス。目の前の海から気持ちよい風が吹く
設計者代表/金城豊氏(49)
門一級建築士事務所
施主さまとつくり上げたものが評価され、大きな喜びとともにこれからの励みになります。アカジャンガーの家は「地域の記憶」がテーマ。かつての面影を取り入れながら、周囲とのつながりを意識して計画することで、コミュニティーが生まれ、地域の記憶も伝わっていく。今後のテーマにもなっていくと思います。
審査講評・當間 卓氏 住宅部門 正賞
アカジャンガーの家
アカジャンガーとは敷地近くにある小学校から発掘された貝塚のことだそうだ。敷地はその小学校に通う子供たちの通学路に接している。セットバックした敷地、通学路への視認性など、住宅ではあるが地域の記憶や環境、社会に寄り添う建築をめざした設計者の挑戦が伺える作品である。居住空間である三つのボックスとその間にある中庭、通路が巧みに配され、パブリックとプライベート空間が明確に機能分けされたところに清々しさを感じる。内部空間においても天井の高さやタテヨコのバランスが心地よさを助長している。また、細部の納まりも丁寧に処理されており、設計者の手慣れた技が印象的な作品であった。
設計者の意図する社会に寄り添う建築が住まい手にどのように受け継がれていくのか、今回の受賞を機に、設計者は建築と住まい手に更に寄り添っていただければと思う。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1742号・2019年5月24日紙面から掲載