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2024年1月12日更新

持続可能な仕組みを作るには|できることから着実に|コミュニティアパートができるまで⑩

文・写真/守谷光弘(「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー)

持続可能な仕組みを作るには

できることから着実に

沖縄に永住することを決めた際、私は古民家を改修して住みたいと考えていました。ところが残念なことに適当な古民家には出合えなかったので、できる限り古材や古建具を活用しながら、新築でもどこか懐かしい雰囲気のあるたたずまいにしようと思い立ちました。
 

あまはじや1階の客間にあるシャワー室。引き戸は、もともと筆者の生家のトイレに使われていた扉

あまはじや1階の客間にあるシャワー室。引き戸は、もともと筆者の生家のトイレに使われていた扉
 

書斎の引き戸には、筆者のパートナーの実家で見つけた洗面所ドアを再利用。腰窓上部の波模様のステンドグラスは筆者の父親が作った物

書斎の引き戸には、筆者のパートナーの実家で見つけた洗面所ドアを再利用。腰窓上部の波模様のステンドグラスは筆者の父親が作った物
 

共用スペースの明かり取り窓に据え付けられたステンドグラスも、筆者の父親のお手製共用スペースの明かり取り窓に据え付けられたステンドグラスも、筆者の父親のお手製

 

生家のチャーギ
沖縄で雨端柱に


ちょうどその時に解体を始めていた東京の生家は、築50年を優に過ぎていたのですが、建具やドア、家具はまだ使える状態でしたので、それらの中でこれからさらに100年、200年と使えそうな物を探す作業はとても心が弾みました。中でも玄関脇に立っていた1本の木は、偶然にも沖縄で柱や梁に使われるチャーギ(イヌマキ)で、貴重な木でした。沖縄では今でも三線の胴に使ったりヒヌカンや仏壇に供えたりと特別な意味を持っています。この木を根元から掘って丸太にし茶室の前の雨端柱に据えたのは、私の成長と共に生長したチャーギを、どうしても沖縄に連れてきたかったからに他なりません。そして生家のトイレに使われていた扉2枚を、共用トイレの扉と客間のシャワー室の扉に流用しました。


処分する物再利用
廃棄物減らす意義


生家の玄関に据え付けられていた亡父自作のステンドグラス2点も、それぞれ私の書斎とコミュニティスペースの明かり取りにはめ込みました。食卓の照明器具は、近くの浜で拾ってきた流木を大工に少しだけ加工してもらった物で、駐車場に置いたタイヤ止めや外構、室内のディスプレイにも拾ってきた流木を多用しています。また同時期にパートナーの実家が売却されることになり、何か使える物は無いかと探した中で見つけたドア2枚は、われわれの部屋のパントリーと書斎の引き戸に流用していて、用務員室にありそうなモップも洗える深型の陶製シンクは、趣味室に取り付けて活用しています。

このようにそれぞれの生家の思い出の品を目にすると、日常生活の中で郷愁の念に駆られることも度々ですが、有効活用しなければ産業廃棄物として処分するしかない物を、少しでも多く再利用して廃棄物を減らすことは、意義深いと思っています。


小さなことでも
積み重ねて実現


今後入居者と共に取り組んでいきたいことは、「4世帯がそれぞれに所有する必要のない物、例えば1年に数回しか使わない旅行用スーツケースとかキャンプ用品を、共用物品としてお互いに貸し借りすることで、全世帯が必要以上に物を持たないようにすること」とか、「できるだけ自給的な暮らしに近づけるように、少しずつでも野菜や果物、ミツバチをアタイグヮーで育ててみる」とか、「アパートから出るゴミを最小限に減らせるように、生ごみを堆肥化させてこれを植栽やアタイグヮーの肥料にする」とか、日常生活の中のちょっとした工夫で実現出来ることの積み重ねです。

既に実現していることとしては、雨水利用で植栽への水やりや暑い日の打ち水ができていること、太陽光発電でほぼ電力を自給できていること、4世帯居れば誰かしらが在宅しているので、留守による再配達はほぼ皆無にできていること、などが挙げられます。「小さなことでもできることから着実に」が私の信条です。

 


もりたに・みつひろ
1966年東京都世田谷区出身。2007年より沖縄県在住。「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー 兼 管理人 兼 住人。糸満 海人工房・資料館を運営するNPO法人ハマスーキ理事。2020年、小規模土地分譲『等々力街区計画』の街区デザインでグッドデザイン賞受賞    


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1984号・2024年1月12日紙面から掲載

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