2025年7月25日更新
使用量見える化図る 全社的な取り組みを|省エネ診断⑭
文・写真/名嘉光男(NPO法人 沖縄県環境管理技術センター)
使用量見える化図る 全社的な取り組みを
中小企業のエネルギー使用状況を調査し、省エネの工夫を提案する「省エネお助け隊」。県内でお助け隊として活動するNPO法人・沖縄県環境管理技術センターの名嘉光男さんが実際の調査結果を基に省エネのヒントを紹介する。
今回の省エネ診断事例は
(株)嘉数グラビヤ(糸満市)
今回の省エネ診断事例は
(株)嘉数グラビヤ(糸満市)

本社工場
◆嘉数グラビヤの現状

工場内の製袋機

製袋機の制御に使用しているエアーコンプレッサー
包装資材の製造など
(株)嘉数グラビヤは各市町村指定の家庭用ごみ袋などの生活資材をはじめ、包装用フィルム製品などの包装資材の企画・製造・販売などをしています。
同社は、環境問題に対応したバイオマス原料の活用や、製造過程で8%程度発生する端材を再製品化して有効活用しています。生活に密着し、便利で環境に優しい製品づくりと廃棄ロスゼロを目指しています。
工場では多数の製袋機が稼働し、各製袋機には数台のモーターが連続運転しています。特にフィルム製造工程は24時間操業しているほか、製袋機類の制御にエアコンプレッサーを使用するなど、エネルギー多消費型の工場です。
大きな省エネ効果期待
同社で使用しているエネルギーは電力のみです。空調設備は事務所系統および製袋室は業務用のパッケージエアコンと家庭用のルームエアコンによる個別空調方式、工場系統は特定の場所を冷却するスポットエアコンを使用しています。エアコンは順次高効率型に更新しています。照明設備のLED化はおおむね済んでいます。暖房運転は実施しておらず、給湯設備は設置していません。
電力の使用状況を監視するデマンド監視装置は設置していますが、その機能を十分に活用できていません。また、エネルギー管理に必要なグラフ化などの「見える化」は実施しておらず、「管理標準」などの管理マニュアルを作成し生産設備の省エネへの取り組みも、これからという状況でした。そのため、診断を機に現状把握を行い、省エネに取り組めば大きな効果が得られると思われます。
今回の診断では、冷房温度の緩和や全社的に省エネ活動に取り組むこと、補助金を活用して変圧器を高効率型に更新することなどを提案しました。七つの提案をし、実施による予想削減金額は年間で390万886円です。
省エネ診断による提案事項
◆運用改善①冷房設定温度の緩和 ②空調機室内機フィルター清掃 (室外機フィン洗浄含む) ③こまめな空調停止 ④エアコンプレッサーの圧力調整 ⑤デマンド監視装置の見直し ⑥全員で取り組む省エネ活動 ◆設備改善 ⑦変圧器の高効率型への更新 (省エネ補助金の活用を提案) |
※提案事項の実施による予想削減量は390万886円/年の見込み。
電力削減量は139,069kWh/年
省エネ診断の補助事業(中小企業向け)
事業所のエネルギー使用状況を把握し、省エネ可能項目の洗い出し、改善策について提案するのが省エネお助け隊による「省エネ診断」。中小企業は国の補助(地域エネルギー利用最適化・省エネルギー診断拡充事業)により、1割負担で診断を受けられる。診断は5720円~(税込み)。詳細は「省エネお助け隊ポータル」で検索。
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執筆者
なか・みつお
NPO法人沖縄県環境管理技術センター理事長、エネルギー管理士、一級管工事施工管理技士。
電話=098・853・3739
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2064号・2025年7月25日紙面から掲載