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2023年12月29日更新
[高齢になっても快適に②]今の家に住み続けるには|健康寿命を延ばす高齢期の自宅改修
健康寿命(※1)と平均寿命(※2)の差は、男性は8.37年、女性は11.71年と10年近くある。最期まで自宅に住み続けたいなら、身体機能が低下した状態で10年近く過ごすことになる。今の家で、それが可能だろうか。高齢期のための自宅改修について、国土交通省が策定した「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を基に解説する。県建築士会に所属し、同ガイドラインの啓発などに取り組む久保田秀樹さん、筒井昌美さんは「元気なうちの改修が、健康で快適な老後につながる」と話す。
※1:健康寿命は日常生活に制限のない期間。2019年時点。
※2:2022年分簡易生命表より
体と住まいにズレ
「玄関先の階段がきつくて、外出がおっくう」「夜間頻尿のため、1階のリビングで寝ている」など、加齢により身体機能が衰えてくると、数十年前に建てた家での生活にズレが生じてくる。「人生100年時代、高齢期を穏やかに過ごすために、住まいを改修することも考えてみませんか」と久保田さん。
高齢化が加速する中、国土交通省は2019年に「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を策定した。心身の機能が低下しても、なるべく自立して快適に過ごすための8つの改修ポイントを挙げている。
特に重要な項目は①温熱環境、②外出のしやすさ、③トイレ・浴室の利用のしやすさ、④日常生活空間の合理化、としている。「本土ではヒートショックで亡くなる高齢者が多いので、温熱環境が一番の項目になっています。沖縄ではそう多くありませんが、暑さ対策や省エネ(節電)という観点からも重要なポイントといえるでしょう」と筒井さん。
バリアフリー化については、家全体でなく「外出のしやすさ」に重きが置かれている。社会的に孤立して閉じこもっている高齢者は、そうでない人に比べて死亡率が2・2倍に高まるという調査結果が出ており、健康寿命に大きく影響するためだ。「外出が難しくなっても、玄関にベンチを設けて友人や近所の人と交流できるようにするなどの環境を整えておきたいですね」。
久保田さんは「少しのバリアーは体を動かすことにつながる。段差をすべて排除するのでなく、自分の体と相談して取捨選択しましょう」と話す。そのほかの配慮項目は下記。
50代から準備を
自宅改修は、「なるべくプレシニアのうち(50代)から考えていた方が良い」という。「リフォームには判断力が必要だし、工事が始まれば、一時的に引っ越ししなければならないことも。気力・体力が必要になる」と久保田さん。
さらに、住み慣れた場所から新しい環境に転居することがストレスになり、心身の状態を悪化させてしまう「リロケーションダメージ」にも注意が必要。特に高齢者に症状が出やすいという。
「早めに住まいを整えることは、老後の生活の質に大きく影響します」と力を込めた。
高齢期の心身に合わせて自宅を改修するポイント
高齢期の住まい 8つの配慮項目(2019年3月国土交通省策定)詳細は「高齢者住宅ジャーナル」のホームページでも見られる
①温熱環境
住宅の断熱性を高め、冷暖房を適切に設置して「夏涼しく・冬暖かい住まい」に。熱中症やヒートショックを予防する。
改修の例
◆窓の断熱化(内窓・高断熱のサッシ、複層ガラスなど)
◆冷暖房設備の設置及び、冷暖房がトイレや廊下、浴室などにも届く間取りの工夫-など
既存窓の内側に新しい窓を新設して、二重窓にする
既存窓のガラスのみを取り外し、サッシはそのまま利用して、複層ガラスなどに交換する
この配慮項目は、寒さ対策に重きを置いたものだが、暑さ対策にもなるので沖縄でも大切なポイント。断熱性能を高めることは、冷暖房の効率化にもなり、光熱費削減にもつながる。
②外出のしやすさ
外に出るのがおっくうになると孤立しがち。緩やかな階段やスロープなどに改修し、外出しやすくお客さまも来訪しやすく。社会的に孤立し、閉じこもっている高齢者はそうでない人に比べて死亡率が2倍を超えるとの調査結果もある。
改修の例
◆玄関から道路までの段差解消や手すり、照明の設置
◆上がりかまち付近に縦手すりやベンチの設置-など
スロープを設置したり、階段はワイドステップにして歩きやすく
徳島県での改修事例。玄関のベンチは靴の着脱に重宝するだけでなく、来客との交流の場にもなる
③トイレ・浴室の利用のしやすさ
排せつの自立は人間の尊厳に関わる。トイレや浴室を使いやすくすることで、心身機能が衰えた場合にも、自宅で生活できる期間の延伸になる。寝室とトイレの近接化で夜間の頻尿対策のほか、安全な浴室で日常生活のストレスやリスクを軽減する。
改修の例
◆寝室(トイレに近い部屋を設定)からトイレまでの手すり設置、段差解消、照明増設
◆トイレ・浴室内の段差解消、広さ確保、手すり(下地)、手洗い器の設置-など
トイレの改修イメージ
③トイレ・浴室の利用のしやすさ
排せつの自立は人間の尊厳に関わる。トイレや浴室を使いやすくすることで、心身機能が衰えた場合にも、自宅で生活できる期間の延伸になる。寝室とトイレの近接化で夜間の頻尿対策のほか、安全な浴室で日常生活のストレスやリスクを軽減する。
改修の例
◆寝室(トイレに近い部屋を設定)からトイレまでの手すり設置、段差解消、照明増設
◆トイレ・浴室内の段差解消、広さ確保、手すり(下地)、手洗い器の設置-など
トイレの改修イメージ
手すりの設置のほか、車椅子などでも入れるよう広さを確保。便器の横に出入口があると体を回転させる必要がないので転倒のリスクを低減でき、介助もしやすい(イラストは高齢者住宅協会「改修提案の手引き」出典)
④日常生活空間の合理化
将来の足腰の衰えに備え、1階生活の準備をしておきたい。2階建ての場合、上階に寝室を設けることもあるが、1階にもあると安心だ。日常の上下階移動を減らしてワンフロアにすると、家の中でのケガのリスクが軽減でき、車椅子の生活にも対応できる。さらに、寝室とリビングなどを一体的にして大きな空間にすると移動しやすく、合理的だ。
改修の例
◆玄関・トイレ・浴室・リビング・キッチンと同じ階の部屋を寝室として利用
◆引き戸への変更、間仕切り壁の撤去-など
④日常生活空間の合理化
将来の足腰の衰えに備え、1階生活の準備をしておきたい。2階建ての場合、上階に寝室を設けることもあるが、1階にもあると安心だ。日常の上下階移動を減らしてワンフロアにすると、家の中でのケガのリスクが軽減でき、車椅子の生活にも対応できる。さらに、寝室とリビングなどを一体的にして大きな空間にすると移動しやすく、合理的だ。
改修の例
◆玄関・トイレ・浴室・リビング・キッチンと同じ階の部屋を寝室として利用
◆引き戸への変更、間仕切り壁の撤去-など
LDKのそばに寝室(和室)を設けた例。引き戸を開ければワンルーム的になり、行き来しやすい
⑤主要動線上のバリアフリー
日常生活における主要な動線(家事、外出、トイレなど)のバリアフリー化。
◆改修の例 出入口の幅の確保/段差の解消/手すりの下地の設置など
⑥設備の導入・更新
安全性が高く、高齢者にとって使いやすい設備の導入・更新。
◆改修の例 トイレ、浴室、台所などの設備機器の更新/電動シャッター、自動点灯照明、防犯カメラの設置など
⑦光・音・匂い・湿度など
日常生活空間を中心とした日照、採光、遮音、通風など適切な室内環境の確保。
◆改修の例 採光確保のための間仕切り壁の撤去、照明計画の工夫など
⑧余った部屋の活用
余った部屋を収納、趣味、交流などの空間として利用。縁側やテラスなど半屋外空間の整備。
◆改修の例 余った部屋の多用途転用など
余った部屋を収納、趣味、交流などの空間として利用。縁側やテラスなど半屋外空間の整備。
◆改修の例 余った部屋の多用途転用など
【教えてくれた人】
(左)久保田秀樹/県建築士会まちづくり委員会委員長、(右)筒井昌美/同会まちづくり委員会・福祉まちづくり部会長
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第1982号 第2集・2023年12月29日紙面から掲載