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2023年12月29日更新
[高齢になっても快適に①]レトロ建材で家具造作|好みの空間づくりを楽しむ
長年住んでいる家は愛着が増す一方で、内装や外装、躯体などは劣化する。年をとっても大切なわが家で、楽しく健康に暮らし続けたいもの。そこで今号は「高齢になっても快適に」と題し特集。レトロ建材を生かしたオリジナルの家具や建具でこだわりの空間づくりを楽しむ事例や健康寿命を延ばすための自宅改修のポイント、60歳以上になっても住宅改修や購入に使える「リバース・モーゲージ」、実家を2世帯住宅に改修した事例を取り上げる。
増す味わいが魅力
家づくりでは自分好みの雰囲気を演出したいと思う人が大半だろう。年代ものの引き戸や欄間、タイル、金具などレトロ建材を家具や建具に生かし、ノスタルジックな空間にするのも一つの手だ。
大正・昭和初期の職人技が光る国産のビンテージ家具やレトロ建材を再生し、空間デザインなどを手がけている南碧想庵(なんへきのそうあん)。レトロ建材を使ったインテリアづくりについて同社の安里嗣温さんは「今では見かけなくなったデザインや色、使い込まれた材の風合いを生かしながら、オリジナルの家具や建具を造れる。時がたつにつれ、さらに味わいが増していくのも魅力の一つ」と話す。
沖縄の高温多湿な環境で長く使い続けるにはレトロ建材と新材を組み合わせるのがポイント。「建材をそのまま使ってしまうと、湿気の影響で建て付けが悪くなるなどメンテナンスの回数がどうしても増えてしまう。レトロな建材と新材を組み合わることで、昔ながらの装飾やデザインを損なうことなく、耐久性も持たせられる」と安里さん。
愛着持てエコにも
安里さんは建築士の松田まり子さんがリノベーションしたHさん宅の家具や建具づくりを担当した。レトロな木の組子やタイル、窓ガラスを使い、玄関の扉やダイニングテーブルなどを製作した=下写真。
ダイニングテーブルにはHさんが一目ぼれした青色のレトロタイルを採用。「見た目の奇麗さ以外にも、熱い鍋を置いても問題なく使えるので、便利」と使い勝手の良さを実感している。
また、「以前は古くなったり、使い勝手が悪くなった家具は買い替えるものという感覚があった。レトロな建材を使った家具や建具を取り入れてからは、自分たちで手入れして、長く使い続けたいと思うようになった」とHさん。実際にテーブルや引き戸は定期的にオイルを塗るなどしてメンテナンス。安里さんは「木の塗装が薄れてきたら植物性オイルやワックスを塗ってあげる。材を保護しながら、塗り重ねるごとに味わいも増していきます」とアドバイスする。
レトロ建材だけではなく、実家の家具や建具などを再利用することについて松田まり子さんは「家族の思い出なども相まってそのものへの愛着が深くなり、大切に使い続けたくなる。長く愛されることが究極なエコにつながっていく」と話す。
ダイニングテーブルの天板は新材を使い、オイル塗装などで風合いを出した。テーブル中央はHさんお気に入りの青のレトロタイルが目を引く
Hさん宅の玄関の二重扉。内側の木扉(写真)は古材の組子、欄間を使っている
Hさん宅の食器棚。使いやすいように高さを調整しつつ、レトロな金具やガラス、組子で装飾した
室内の小窓には古民家に使われていた窓ガラスを採用。4枚ともそれぞれ模様が違う
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第1982号 第2集・2023年12月29日紙面から掲載