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2023年8月11日更新

沖縄らしい町並みの象徴 漆喰使った赤瓦屋根にこだわり|コミュニティアパートができるまで⑤

文・写真/守谷光弘(「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー)

沖縄らしい町並みの象徴

漆喰使った赤瓦屋根にこだわり

私は自身が生まれ育った家が新興住宅地にあったせいか、長い歴史の中に伝え遺されてきた技術や習慣など、文化としてその地に根付いたものへの憧れが強いようです。そのため、その地ならではの唯一無二な物事があれば、地域の象徴として、また住民のアイデンティティーや誇りとして、それを守っていくべきという使命感のような気持ちが沸くのです。思い起こせば現在私が携わっているNPOの活動もそれに等しく、「糸満らしさ」とか「沖縄らしさ」としての海洋文化にほれ込み、発信し続けているわけです。

「コミュニティ・アパート山城のあまはじや」に置き換えて考えれば、それは雨端であり、チャーギの柱であり、琉球石灰岩の石垣や石畳、琉球畳、ヒンプン、屋根獅子、石敢當などが該当するわけですが、中でも沖縄県産の赤土とクチャと呼ばれる粘土で作られた赤瓦の屋根は、絶対に他の物とは代え難い大事な要素として捉えていました。沖縄の青い空と碧い海、白い雲と深い緑の樹々に一番映える屋根は赤瓦でしかなく、その眺めこそが最も沖縄らしい町並みだと考えていたからに他なりません。またこの赤瓦に真っ白な漆喰が施された姿も、象徴的な美しさだと思っていたので、現在使われているS字瓦や工法では必要としない漆喰も、あえてデザインとして雨端に追加しました。

その製作と施工は100年以上の歴史を持つ老舗の八幡瓦工場にお願いし、屋根獅子は工場の職人さんによって製作された物です。職人さんのひらめきと技術、そして工場にあった赤瓦と漆喰で作られた二つと存在しない屋根獅子も、そのちょっといたずらっぽくもひょうきんそうな顔つきが、私はとても気に入っています。
 

こ赤瓦に真っ白な漆喰が施された姿が青空や緑に映える「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」。T字路に面する部分の石垣には「石敢當」を設置。屋根には、ひょうきんそうな顔つきの獅子(下写真)が鬼門を見据えている
赤瓦に真っ白な漆喰が施された姿が青空や緑に映える「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」。T字路に面する部分の石垣には「石敢當」を設置。屋根には、ひょうきんそうな顔つきの獅子(下写真)が鬼門を見据えている
こ赤瓦に真っ白な漆喰が施された姿が青空や緑に映える「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」。T字路に面する部分の石垣には「石敢當」を設置。屋根には、ひょうきんそうな顔つきの獅子(下写真)が鬼門を見据えている



経年による美に価値を

日本の不動産価値は一般的に新築時が一番高く、経年と共に下がっていく前提で、一定の築年数が経過した建物はその価値が認められなかったり、結果として購入時に住宅ローンが組めなかったりするので、とても不思議に思っています。私が好きなテレビ番組「ポツンと一軒家」に出てくる家は、その土地に生えていた木を切り倒し、地域の人々の共同作業で建てられたような家が多く登場します。家を直し直し住み継いでいる方々は、住み始めてから3代目だったり4代目だったりして、その美しく頑丈な家は100年を超えるものも少なくないのです。

「経年」と言えば多くの人が「劣化」を連想しそうですが、古美術品や骨董品を愛でる文化もある日本なのですから、住宅においても経年で美化するものがあることや、価値が上がることを認めても良いように考えています。世界的に見ても100年余の建造物しか現存していないコンクリート造よりも、法隆寺のように1300年以上の建造物が残る木造の方が、法定耐用年数が短いのは、見直す余地があるのではないでしょうか?

1998年の税制改正で鉄筋コンクリート造は60年から47年に、木造は24年から22年に短縮されました。1951年に制定された耐用年数が、見直され改正されるのに47年も掛かっていますから、その実現はいつの日になることやら。

そのためにも「山城のあまはじや」は100年後200年後を目指して大事にしていきたいと考えています。

 


もりたに・みつひろ
1966年東京都世田谷区出身。2007年より沖縄県在住。「コミュニティ・アパート 山城のあまはじや」オーナー 兼 管理人 兼 住人。糸満 海人工房・資料館を運営するNPO法人ハマスーキ理事。2020年、小規模土地分譲『等々力街区計画』の街区デザインでグッドデザイン賞受賞    


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1962号・2023年8月11日紙面から掲載

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