特集・企画
2026年2月6日更新
子が巣立った後の空き部屋、どうしたらいい? 沖縄の空間デザイン心理士が教える、3つの視点|家と心理㊼
空間デザイン心理士Ⓡで一級建築士。2児の母でもある、まえうみ・さきこさんが、空間を心理的に解析。進学や就職を控えたこの時期、子が巣立ったあとの「空き部屋」の使い方についての提案です。「自分の人生を豊かにするための空間にしませんか?」とまえうみさんは呼びかけます。

子どもの自立を応援し、親も自立する!
空いた部屋を自分へのギフトに
沖縄では桜が見ごろになる2月。春が近づくこの時期、増えてくる相談があります。
それは、進学や就職をきっかけに子どもが家を出たあとの「空いた部屋をどうしたらいいのか」というもの。
大切に育ててきた子どもが巣立つ。誇らしい気持ちになるのと同時に、心がすーっと無音になるような、うまく言葉にできない寂しさを感じる方も少なくありません。
今回は、この空いた部屋を「寂しさの象徴」にしないための、住まいの整え方についての提案です。
「空の巣症候群」
つい最近まで使われていた机。開け閉めする必要のなくなったカーテン。静かになった部屋に立つと、ため息がこぼれるのも自然なことです。これは、親として子に真剣に向き合ってきた証。決して悪いことではありません。
ただ一つだけ、気をつけてほしいことがあります。空いた部屋を「とりあえずそのまま」とか「物置」にしないことです。それは、空間のムダであると同時に、心が過去に留まり続けてしまう原因でもあるのです。住まいは不思議なくらい正直です。空いた部屋を放置すると、心の中にも「後回し」がたまっていきます。
逆に部屋の役割を変えて活用すると、人の意識も自然と前を向き始めます。だから私は、このタイミングでこう提案しています。「その部屋を、『自分の人生を豊かにするためのご褒美』として受け取り直してみませんか?」
子にも良い影響
心理学では、親が自分の人生を楽しんでいる姿を見せることが、子どもの自立を後押しすると言われています。モデリング理論と言います。「親がちゃんと笑っている」「自分の時間を持っている」「世界を広げ続けている」その背中を見せることは、子どもにとって安心材料になります。
だからこそ、空いた部屋を今のあなたのための空間に更新することが、子どもへのメッセージになるのです。「あなたは大丈夫。だから私も、私の人生を生きるね」。この無言のメッセージは、ちゃんと伝わります。
これまでの記事は、こちらから。
「私」を主役にする
では実際に空いた部屋を「自分へのご褒美」に変えてみましょう。難しく考えなくて大丈夫。まずは三つの視点を持ちましょう。
①思い出は、感謝して整理する
子どもが描いた絵や作ったもの、賞状、ノートなど、全部を残さなくていいんです。大切なものだけ選びましょう。実は箱ひとつ分で十分だったりします。
②ずっと後回しにしてきた「自分」を思い出す
あなたの好きなこと、好きなものは何でしょう。静かに本を読む時間でしょうか。絵を描いたり、裁縫などの趣味があれば、道具を引っ張り出してみましょう。
③その部屋を使う主役を、「私」にする
自分の使いやすさや好みを重視して、机や椅子、棚を変えたり、壁の色を一面だけ変えるなど。それだけで部屋の空気は驚くほど変わります。
事例① 部屋の役割を変える
【ビフォー】

部屋の役割が曖昧なままだと、住まい手の意識も過去に留まりやすくなる
【空間の状態】
・学習机やベッドは子どもが使っていたものをそのまま放置している
・段ボールや季節物の物置になり、どんどん増えていく
・使用頻度はほぼゼロ
【心理的状態】
・過去に意識が向く
・喪失感が長引く
・「まだ終わっていない」という感覚になる
・自分の時間を使うことへの罪悪感が生まれる
▼
【アフター】

部屋の役割を変えることで、住まい手の意識も次のライフステージへ移行しやすくなる
【空間の状態】
・趣味室、書斎、在宅ワーク室として使用
・椅子、照明、棚などを用途や自分の好みに合わせて配置
・使用頻度は日常的
【心理的状態】
・意識が「今」と「これから」に向く
・自分の時間への肯定感
・生活の満足度向上
・子どもの自立を安心して受け止められる
事例② 二つの部屋を一室に
以前は、二部屋あった子ども室を夫婦それぞれの部屋として使用していた。顔を合わせることがなく、会話が生まれにくい状態だった。それを一室にしたことで夫婦の関係性にもいい変化が生じた
【ビフォー】

【空間の状態】
・二つの空いた子ども部屋を、夫婦それぞれの部屋として使っていた
【心理的状態】
・メリットとしては、夫婦それぞれ個人の時間を持つことでリフレッシュでき、精神的なゆとりがうまれる
・デメリットは会話や気配りが減り、関係が希薄化して一緒にいる意味を感じにくくなる
▼
【アフター】

・夫婦それぞれの居場所を確保
・夫婦が一緒にくつろげる談話コーナーを設置
・読書や書類整理の場所として日常的に使用
【心理的状態】
・在宅時間の満足度が向上
・談話コーナーでコミュニケーションを適度に取ったりと、夫婦との関係性にも変化が生じる
・部屋を変えたことで、新しいライフスタイルへと自然とシフトできる
2月から構想を始める
こうした部屋のモデルチェンジは、3月になってからではなく、2月から構想し始めておきましょう。
それは、子との別れが来る前に、心の準備をしておくためです。ただし、お子さんが新しい環境に慣れるまでは、いつでも帰ってこれるよう部屋を残しておくことも併せて検討しましょう。
◆ ◆
子ども部屋が空くということは、家が寂しくなることではありません。あなたの人生に、余白と自由が生まれたということ。その余白は、これからのあなた自身のために使っていいんです。 この春、空いた部屋を「喪失」ではなく「贈り物」に変える選択をしてみませんか。あなたの次の新しい暮らしが、ますます豊かになることを心から応援しています。

[文・イラスト]
まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹で暮らす。
http://ielie.net
↓広告をクリックするとワークショップの申し込みに移動します

これまでの記事は、こちらから。
週刊タイムス住宅新聞
第2092号 2026年02月06日紙面から掲載
第2092号 2026年02月06日紙面から掲載












