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2023年4月14日更新
牧草として導入 肥料にも|マメ科「ウマゴヤシ」|身近で見られる帰化植物①
文・写真/比嘉正一
県内で見られる帰化植物を紹介。「外来植物」ともいわれ悪いイメージもありますが、生態系を語る上で無視できない存在です。この連載では県内に侵入した背景、特徴、勢力拡大の秘密などを、県民の森の学芸員、比嘉正一さんが解説します。
牧草として導入 肥料にも
マメ科「ウマゴヤシ」
ウマゴヤシの花は黄色のチョウのような形。葉の付け根から咲く
莢果(きょうか)は独特の形
帰化植物とは、本来の自生地から人によって他地域に運ばれて野生化、繁殖した植物のことです。今や身近に見られる植物の多くが帰化植物です。実はデイゴやハイビスカスなど沖縄を代表する植物も帰化植物です。今回はマメ科の代表的な帰化植物「ウマゴヤシ」と、その仲間を紹介します。
地をはうマメ科植物
地中海沿岸原産のウマゴヤシは江戸時代に牧草として導入され、その後全国に広く帰化したようです。沖縄への導入も、牧草としてだと思われます。馬の飼料になるのが名前の由来でしょう。
ウマゴヤシは地面をはって生え、群落を形成します。2年生草本とされていますが、沖縄では気温の下がる12月ごろより発芽し、開花・結実したら真夏には枯れてしまうことが多いです。ミナミキチョウの食草でもあります。
そして、ウマゴヤシの仲間に「コメツブウマゴヤシ」という植物があります。ウマゴヤシと草姿が似ていますが花が小さいです。
こちらも1年生または越年生(秋に発芽して冬を越し、翌春に開花・結実して枯死する)ですが、県内では気温の低くなる12月ごろより発芽を始めます。茎はたくさん分岐し地をはうように生育します。果実は名前の通り米粒より小さく、初めは緑色ですが、熟すと黒くなります。
ヨーロッパ原産で、日本には江戸時代に入ったとされていますが、沖縄に入った時期は分かりません。私の記憶では40年ほど前には道端や芝生の中に生えていたので、それ以前なのだと思います。
ヒメシルビアシジミ、ハマヤマトシジミが花や若莢、若葉を食べます。また、ミナミキチョウが葉を食べます。
コメツブウマゴヤシ(ヨーロッパ原産)
実は熟すと黒くなる。名前の通り米粒より小さい
大気から窒素つくる
ウマゴヤシの仲間はマメ科特有の働きとして、窒素固定(空気中の窒素分子を原料とし窒素化合物を生成)することで知られています。緑肥植物として畑に種をまき、成長したらそのまま畑にすき込めば、窒素肥料要らず。作物の成長に寄与し収量が良くなります。
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4月、5月の公園情報
◆「春のチョウ類自然観察会」
日時/4月15日(土)午前9時30分~同11時
集合場所/同公園天上展望台駐車場
料金/1000円 定員/10人(大人対象)
講師/比嘉正一氏(学芸員)
名護城公園内を散策しながら自然の楽しみ方を解説。きれいなチョウが多く、県指定天然記念物のフタオチョウ、コノハチョウも生息している。
電話=0980・52・7434
【名護城公園】
◆樹木自然観察会
日時/5月13日(土)午前9時30分~同11時
集合場所/名護城公園のっぽやし広場駐車場
料金/1000円 定員/10人(大人対象)
講師/比嘉正一氏(学芸員)
園内散策路沿いに育つ樹木は、名護地域を代表するものばかり。方言名、利用の仕方などを解説する。
電話=0980・52・7434
【中城公園】
◆ハイビスカスの栽培と咲かせ方
日時/5月6日(土)午後1時30分~同3時
場所/中城公園
料金/1500円 定員/10人(大人対象)
講師/比嘉正一氏(学芸員)
ハイビスカスの上手な栽培と咲かせ方を解説。特に鉢植えでの育て方、土・肥料の選び方、せん定時期や、接ぎ木、挿し木での増やし方を説明。
電話=098・935・2666
【沖縄県県民の森】
◆樹木自然観察会
日時/5月20日(土)午前9時30分~同11時
集合場所/沖縄県県民の森総合案内棟前
料金/1000円 定員/10人(大人対象)
講師/比嘉正一氏(学芸員)
自然が多く残されている公園内を散策。樹木を観察し、関係する自然知識を得られる一挙両得の観察会。
電話=098・967・8092
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執筆者
ひが・まさかず/1956年浦添市生まれ。月刊誌「緑と生活」、東南植物楽園勤務を経て沖縄県県民の森(恩納村)の管理人、沖縄昆虫同好会会長、NPO法人沖縄有用植物研究会理事
毎週金曜発行・週刊タイムス住宅新聞
第1945号・2023年4月14日紙面から掲載