建築
2022年12月30日更新
[沖縄]進む!住まいの省エネ化⑥|県内初のZEH専用住宅ローンをスタート 沖縄の脱炭素化に注力|琉球銀行
ZEH(ゼッチ)や省エネ住宅の普及を目指し、県内の住宅関連企業による連携体制「ZEP Ryukyu(ゼップリュウキュウ)」をスタートさせた琉球銀行。当初5年の金利が0.5%で固定される「ZEH専用住宅ローン」もリリースするなど、沖縄の脱炭素化に向けた取り組みに力を入れている。
企業連携しZEH推進
建築業者など55社が加盟
琉球銀行は今年9月、県内の住宅関連企業による連携体制「リュウキュウ・ネット・ゼロ・エネルギー・パートナーシップ(ZEPRyukyu)」を構築した。高い断熱性能などによる「省エネ」と太陽光発電などによる「創エネ」で消費エネルギーの収支をゼロ以下にする住宅「ZEH」や、省エネ住宅の普及を目指す。
建築業者や設計事務所、電気工事業者などが加盟しており、12月16日時点で、その数は55社にのぼる。
同行審査部の棚原武昭さんは「沖縄は家庭からのCO2排出量が多いほか、当行のご融資のうち約6割が住宅関連。住宅関連企業と連携し、ZEHや省エネ住宅を広めることで、県内の脱炭素化に寄与できるのではと考えた」と話す。昨年10月に新設された「サステナビリティ推進室」が進めるSDGsの取り組みともマッチした。
ゼップリュウキュウの加盟業者向けセミナーの様子。多くの人が参加し、ZEHや省エネ住宅について学んだ
セミナーでノウハウ共有
ゼップリュウキュウでは、セミナーなどを通したZEH・省エネ住宅の建築ノウハウの共有や、省エネ計算に関わる事業者の紹介といった支援を行う。
実際、11月には加盟業者向けにセミナーを開催した。セミナーでは、(株)日本住宅保証検査機構(JIO)沖縄営業所の平良慶樹所長が、住宅の省エネ基準やZEH住宅、建物の省エネ性能を示す「BELS評価書」申請の流れなどを説明。(有)門の金城優代表取締役は、建築物省エネ法や県内における施工例、補助金申請の事例などを紹介した。
参加者からは「変化や新制度の多い省エネ住宅について理解が深まった」などの声が挙がった。
棚原さんは「ZEHや省エネ住宅を取り巻く環境が変化していく中で、ゼップリュウキュウの取り組みは重要だと認識している。今後もこの取り組みを通じて、県内のZEHや省エネ住宅の普及に寄与していきたい」と話した。
当初5年間 固定金利0.5%を適用
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マンションや中古の購入にも
ゼップリュウキュウのスタートに合わせ、琉球銀行は個人向け商品として「ZEH専用住宅ローン」をリリースした。
最大の特徴は、当初5年間の借入金利が0・5%で固定されること(2022年12月現在)。省エネ化で削減される光熱費から算出した額を収入として加算することも可能なため、借入可能額を増加させることもできる。営業統括部の當銘彩加さんは「省エネ設備導入などで借入金額が増えても、金利優遇によって総コストが軽減されることもあります」と話す。
11月からは新築一戸建てだけでなく、ZEH水準のマンションや中古住宅の購入、ZEH化・省エネ化のためのリフォームにも使えるようになった。「例えば中古住宅を購入してZEHにリフォームする場合もZEH専用住宅ローンの対象となります」
ただし利用するには、ゼップリュウキュウの加盟業者による施工や、「BELS評価書」の提出が必要となっている。
県内に7カ所あるりゅうぎんローンセンタープラスのセンター長ら
国の支援制度も充実
「住宅ローン減税や補助金など、国の支援と併用することで総コストをさらに抑えられる可能性もあります」と當銘さんは加える。
住宅ローン減税は、毎年の住宅ローン残高の0・7%を所得税から控除する制度。最大13年間にわたって控除を受けられるほか、所得税から控除しきれない場合は翌年の住民税からも一部控除される。
「ポイントは、その他の住宅(省エネ基準適合住宅の基準を満たしていない住宅)に比べて控除対象となる借入限度額の金額が大きいこと」。例えば2023年度に入居する新築住宅の場合、ZEH水準の省エネ住宅であれば控除対象となるローンの年末残高の上限が、その他の住宅よりも1500万円多く設定されている。
補助金も国土交通省や経済産業省、環境省などから、さまざまなものが出ている。中には本年度の上限に達して利用できないものもあるが、国会での予算成立を前提に、来年度も支援事業は継続される見込みとなっている。
當銘さんは「住宅の省エネ基準適合義務化が2025年に迫っている。ZEH専用住宅ローンを、国の支援制度と合わせて上手に活用してほしい。詳しくは土日も営業しているりゅうぎんローンセンタープラスへ」と呼びかけた。
ZEP Ryukyu パートナー企業の取り組み
㈲門 沖縄型省エネ住宅壁は鉄筋コンクリート造、屋根は木造の混構造の「気候風土適応住宅」。自然の風を取り込むなど、気候風土に根差しながら環境負荷低減も図った
一級建築士事務所の㈲門は、沖縄固有の住文化に根差しつつ、蒸暑地域の環境に配慮した省エネ型・低炭素型の家づくりや街づくりに取り組む。それらに関する研究開発や普及活動も行っている。金城優代表は「今後は、製品やサービスのライフサイクル全体の環境負荷などを評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)を意識したり、伝統技術を取り入れたりして、地域の人と材料による地産地消型の家づくりを考えていきたい」と話した。
㈲フロンティアーズ 3年で14棟のZEH予定
ZEHのイメージ図
ZEH実験棟を建て、琉球大学と共同研究などを行ってきた㈲フロンティアーズ。太陽光発電や、高気密・高断熱な造りのほか、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)でエネルギーの使用状況を可視化できる住まいなどを手掛ける。伊藝直代表は「省CO2の実現性に優れた計画に対して国が支援する『サステナブル建築物等先導事業(省CO2型)』に採択されたので、3年で14棟のZEHを提供する予定(補助金1棟175万円)。マンション向けのZEH-Mにも挑戦していきたい」と話した。
㈱りゅうせき建設 標準仕様でZEHに
「RC+(プラス)」の住宅。標準仕様でもZEH基準をクリアすることができる
㈱りゅうせき建設では、標準仕様でZEH基準をクリアできる「RC+(プラス)」という商品を開発。担当者は「従来の鉄筋コンクリート住宅の良さはそのままに、数字に裏打ちされた断熱性能・調湿性能・省エネ性能を標準で備えた『夏涼しく、冬暖かい』快適さを追求した住宅です」と話す。
また、2025年度には手掛ける新築住宅の50%、30年度には新築する全ての住宅をZEHにする目標を掲げている。
関連記事:進む!住まいの省エネ化① |沖縄県内の状況
進む!住まいの省エネ化②|RC造で省エネ
進む!住まいの省エネ化③ |木造で省エネ
進む!住まいの省エネ化④ |混構造で省エネ
進む!住まいの省エネ化⑤ |施設で省エネ
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1930号・2022年12月30日(第1集)紙面から掲載