建築
2022年12月30日更新
[沖縄]進む!住まいの省エネ化③|木造で省エネ|有限会社フロンティアーズ
地球温暖化の防止に向け、世界中が温室効果ガスの排出削減に取り組んでいる。建築業界でも脱炭素化、省エネ化は加速しており、2025年には住宅を含むすべての新築建物に省エネ基準への適合が義務化。さらに国は「2030年以降の新築住宅はZEH(年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロ以下を目指した住宅)水準の省エネ性能の確保を目指す」との指針も出した。県内でも、沖縄に適した省エネ住宅の在り方を模索・提案する動きが広がっている。そこで今号は「進む! 住まいの省エネ化」と題し特集。県内の取り組み状況から、構造別の省エネ住宅の事例、ZEHに特化したローン商品の紹介、一般建築物でも進むZEB(年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロ以下を目指した一般建築物)化、省エネ改修について取り上げる。
室内環境ムラなく制御
室内は夫妻好みの和テイストに。LDKの隣に船底天井の和室二間を配置。引き戸は無垢材、玄関(下写真)の上がり框(かまち)はチャーギ、ベンチは杉板
室温27度 カビ知らず
大阪出身だが「定年後は過ごしやすい沖縄で、好きなダイビングをしながら田舎暮らしを楽しみたい」と希望した木本さん(67)と夫人。海に程近い北部の分譲地を購入し、年間の1次エネルギー消費量がゼロ以下になるよう設計されたZEHで新築。2年半前、子や孫、友人らが訪れても和室二間とLDKをつなげて集える3LDKの木造平屋を完成させた。
「オール電化なら年をとっても火災の心配もない。ランニングコストや環境を考えてもZEHがいい」と決めていた夫妻。物干し場などで壁掛け式除湿機を使っているが、6・7キロワットの太陽光パネルと5・6キロワットの蓄電池2台を併用しているため、売電収入との差し引きで昨年の電気代は実質ゼロ。「大阪時代はガスと電気を使っていたけれど、今は電気だけ。自動車にも充電できるからガソリン代も掛からず、助かってます」と夫人。
特に実感しているのが、室内の快適さ。「沖縄に移住したてのころに住んでいたマンションではスーツもカバンも靴もカビて大変だったけど、今は大丈夫。小屋裏のエアコン1台をつけっ放しにすれば、夏の室温は平均27度、湿度は60%前後に保てる。冬も夫は基本半袖、私は長袖1枚に靴下を履くくらい」と喜ぶ。
外観。屋根に6.7kWの太陽光パネルを搭載。掃き出し窓には防風スクリーンを設置。台風時の飛散防止にも
沖縄型ZEHを普及
木本さん宅で快適さを生み出しているポイントは、高温多湿な沖縄で室内環境と消費エネルギーを制御する造りにある。
プランニングを請け負った伊藝直さんは、「まず家中をすっぽり断熱材でくるみ、外からの熱の影響を受けやすい窓周りは樹脂サッシ、Low-e複層ガラス、断熱ブラインドと防風スクリーンで3重に対策。湿気を含んだ外気を直接室内に入れない全熱換気システムを採用し、小屋裏エアコンによる全館冷房を実現。家のすみずみまで温度ムラをなくすことで結露しにくくした」と説明する。
ブラインドは日差しのコントロールにも一役。「夏は閉めて直射日光を遮り、冬は開けて暖かい日差しを取り込めば冷暖房費の削減につながる」と話す。
これらの工夫は「琉球大学と共同研究を進めてきたZEH実験棟での研究結果に基づくもの。木造だけでなくRCにも有効」と伊藝さん。「電気自動車を電源にできるV2Hを導入すれば、災害時も役立つ。高温多湿な沖縄でも低湿度で快適、省CO2な高性能ZEHが建てられることを広く周知したい」と話した。
ポーチ。琉球石灰岩のヒンプンと植栽が通りからの視線を緩やかに遮り、彩りにも
琉球住樂 迫力の柱梁 本格木造でZEH
太い柱や太鼓梁が目を引く軸組み工法で、「3世代住み継げる沖縄型長寿命住宅」を提案する㈱琉球住樂。外張り断熱、樹脂サッシ、Low-e複層ガラスが標準仕様の省エネ住宅で、太陽光発電の導入でZEHにも対応する。湿気の少ない春秋は風を取り込み、夏や梅雨時期は計画換気と空調で快適に。軒の深いアマハジも設けるなど気候風土にも配慮する。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1930号・2022年12月30日(第1集)紙面から掲載