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2020年10月9日更新

【第6回沖縄建築賞】タイムス住宅新聞社賞/「森の図書館 森に住まうオフグリッドの家」(国頭村) 設計:友利正氏、小谷みゆき氏(Atelier TAKE5)

県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全35作品の中から、第6回の入賞作品5点が決定した。正賞に次ぐタイムス住宅新聞社賞には、友利正氏による「森の図書館」が選ばれた。

第6回沖縄建築賞入賞作決まる

道路から見た外観。友利氏は「イタジイなど『ブロッコリーの森』が持つ円の要素に対して、建物は直線的にし対比させた」

タイムス住宅新聞社賞
「森の図書館森に住まうオフグリッドの家」(国頭村)

森に開く四角い箱

インフラは自給する
「森の図書館 森に住まうオフグリッドの家」は、国頭村の山奥に建つ住宅兼カフェ。コンクリート打ち放しの平屋で、西側の前面道路からは大きな壁に最小限の開口部しか見えず、四角い箱のような閉じた印象の建物だ。

しかし中に入ると、東側の森に向かって、幅9㍍×高さ2・6㍍の開口部で大きく開き、室内外の景色が一体化する。設計した友利正さんは「シンプルな外観にすることで、開放的な室内をドラマチックに演出する効果を狙った」と話す。


カフェスペースから外を見る。ガラス張りの開口部は緑に向かって大きく開く

一方、閉じた西側は、5800冊の本を収められる、幅18㍍の大きな本棚になっており、施主の「本に埋もれる空間で、山の木々を見ながら読書を楽しみたい」という要望にも応えている。


西側の壁全体を使った本棚。西日に対する断熱効果も狙った

また、敷地には電気や水道といったライフラインが整備されていなかった。そのため、電気は太陽光パネル12枚による電力自給システムを構築。汚水は浄化槽からパイプで蒸発拡散装置に送り、芝生の表面積を利用して蒸発させる。上水は湧き水をろ過するなど、インフラを自給するオフグリッドの住まいとなっている。「『ここに住みたい』という施主の熱意に胸を打たれ、施主の提案をサポートしながら二人三脚で計画を進めた」と友利さん。

審査では「西側は遮断し、中に入ると緑に面して大きく開放された空間が広がるという対比がおもしろい。自分らしいライフスタイルを求めるユニークな施主と建築家の合作」と評された。


ろ過装置


太陽光パネル


蒸発拡散装置

平面図




設計者/友利正氏(62)、小谷みゆき氏(49)
Atelier TAKE5




(友利)オーナーの心意気があったからできた住まい。受賞したことによって、自分で電気をつくるというユニークな住み方や、都会から離れてもおしゃれに暮らせるということを知ってもらえるといいですね。


<審査講評 西里幸二氏>

「森の図書館」は深い森につつまれている。
建物は林道に接し、西日を遮るコンクリートの大きな壁の自然な風合いが周囲の森林の中に溶け込んでいる。ゆくゆくはこのコンクリート面が雑木の中に見え隠れすることになるだろうか、と森の中に溶け込む姿を想像する。
室内は、大きく切り開かれた開口部を通して周囲の森の緑と図書館がつながる。少し暗めな室内に、あふれるような森の緑と光が入り込んでくる。ゆったりとお茶を飲み、本を読むくつろげる優しい空間がつくられている。
ここは山原の大森林の中、インフラ設備が備わっていない。林道を挟んだ敷地に太陽光発電、浄化槽+蒸発拡散装置、菜園などを位置させている。住人は自らが電気を作り、水を得て、排せつ物も自然に返すことで環境と共生した住まいを実現している。
願わくば、同敷地内のインフラ設備のある場所も、この森にふさわしいたたずまいとしてほしかった。
 

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1814号・2020年10月9日紙面から掲載

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