沖縄建築賞
2020年10月9日更新
【第6回沖縄建築賞】奨励賞 住宅建築部門・新人賞/「House in Matsumoto」(沖縄市)/仲本兼一郎氏(33)/岡山泰士氏(33)/森田修平氏(33)/STUDIO MONAKA
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全35作品の中から、第6回の入賞作品5点が決定した。住宅部門奨励賞と新人賞には仲本兼一郎氏らによる「House in Matsumoto」が選ばれた。
第6回沖縄建築賞入賞作決まる
外観。左側が水回り棟で、右側が居室棟。光や視線を調節するため、屋根には傾斜がついている
住宅建築部門 奨励賞
新人賞
「House in Matsumoto」(沖縄市)
2棟に分けて非日常 屋根形状で光を調節
部屋の出入りは庭から
「House in Matsumoto」は、北側の居室棟と南側の水回り棟の2棟から構成される。水回り棟の方が居室棟より高い位置にあるのは、下水道につながる排水の最終桝が、居室部分の地面より高い位置にあったためだ。
両棟の間に通路庭があるほか、居室棟は中庭を囲むように大きく開いており、外部と内部があいまいにつながる。さらに、玄関らしい玄関は設けず、各居室には中庭に面したコンクリートの土間から出入りする。
建築士の仲本兼一郎さんは「中庭と通路庭の二つの庭で自然を感じるとともに、棟を分けたり、靴を履いて行き来する造りによって、施主の求めるリゾートのような非日常性のある空間にした」と説明する。
また、敷地が前面道路より約7メートル低いことから、屋根の形状を工夫。傾斜をつけたり、アマハジのように軒を低く抑え、上からの視線や見え方に配慮した。太陽光の入り方の調節にも一役買っている。
審査員からは「切り離された水回り棟や中庭によって、沖縄の伝統的な住宅が持つような軽やかな開放感を、コンクリートで生み出すことに成功している」と評価された。
キッチンから見たダイニングとリビング。左手にある中庭に向かって大きく開くだけでなく、右手には通路庭もあり、内外がゆるやかにつながる
▼平面図
設計者/(下写真左から)仲本兼一郎氏(33)、岡山泰士氏(33)、森田修平氏(33)
STUDIO MONAKA
(仲本)自然を感じられるよう内外をはっきりさせないなど、いろいろな挑戦をさせてもらったお宅。沖縄建築賞に応募するのは初めてでしたが、正賞を取りたかったので悔しいです。
<審査講評 能勢裕子氏>
前面道路から7メートル下がった敷地での居心地はどうなんだろう? 体感したかった。この建築家たちは「沖縄らしさ」とは何なのかを探りながら、曖昧だった感覚を徐々に出来上がって来る作品の中に見つけ出す作業を続け、手応えを得て、結果をカタチにした。手と頭を動かすことで見えないモノが現れるのだ。
設計では、水回りと居住部を高低差で分け、屋根の形状や中庭吹き抜けのしつらえで外・内部の視線や光をコントロールした。敷地の特性を有効利用することで、難題だった立地環境の解決策を見いだしている。玄関を無くして「アマハジ」的空間を効果的に多用して各部屋を程よい距離感でつなげ、施主要望の「非日常性」の解決策とし、独自な表現を見いだしている。
土足での提案であったら、利便性やリゾート感が増すのではと個人的には思われたが、この建築家たちが徐々に見つけた感覚を設計に生かし、答えをカタチにした意欲と静かな闘志のうかがえる作品であると評価した。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1814号・2020年10月9日紙面から掲載