沖縄建築賞
2020年10月9日更新
【第6回沖縄建築賞】古谷誠章審査委員長から総評
古谷誠章氏による、第6回沖縄建築賞の総評。
沖縄の固有性引き出す建築に共感
今年から沖縄建築賞の審査委員長をお引き受けすることになりました。これまで東北、四国、中国、大阪、愛知などの建築賞審査をしてきましたが、沖縄には固有の風土があり、これまでとまた違った建築との出合いを楽しませていただきました。
15年ほど前、調査などのために数年間、本部町備瀬に通ったことがありますが、伝統的な集落や家々、祭祀などが強く印象に残っています。低くて深い軒庇、開放的な造りとフクギの屋敷林など、今でも講義でその写真を使って地域に合った素朴で豊かな生活空間の在り
方を話しています。
発想と意思に敬服
今回、応募者も参加する公開審査を提案したのですが、あいにくのコロナ禍でかないませんでした。しかし現地審査の代わりに、応募者のプレゼンテーションによる審査会ができました。
各作品を述べる紙幅がありませんが、総じて沖縄の伝統文化、気候風土、立地の固有性をそれぞれに深く捉え、その本質をどのように建築に翻訳するか、どのように現代化するか工夫されていて、とても共感を覚えました。
特に毎年多くの台風が襲来し、晴れれば容赦ない日差しが照りつける厳しい気象条件に対峙し、それらを克服し、その中でこそ可能な独特の建築空間、建築材料など創意工夫し続ける、柔軟でたくましい発想と意志に敬服しました。
四季の風を味方につける、直達日射を避け屈折・緩衝された光を採り込む、伝統的な構法を現代化する、高耐候性のコンクリート素材を開発するなどハード面での工夫に加え、土地のポテンシャルを生かした新しい生活の形、障がいの有無を超えた子どもたちの空間など、クライアントの要望に応えるソフト面でのアイデアも見応えがありました。
これからの時代に応える新しい建築を生み出す上で、沖縄という環境の持つ大きな可能性を感じさせてくれました。
(前列中央)ふるや のぶあき/建築家。早稲田大学教授
第6回沖縄建築賞 審査委員
委員長
古谷誠章氏(建築家・早稲田大学教授)
副委員長
小倉暢之氏(琉球大学名誉教授)
委員
伊良波朝義氏(日本建築家協会沖縄支部支部長)
野原勉氏(県建築士事務所協会前会長)
西里幸二氏(県建築士会前会長)
能勢裕子氏(彫刻家)
石川達也氏(タイムス住宅新聞社社長)
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1814号・2020年10月9日紙面から掲載