沖縄建築賞
2020年10月9日更新
【第6回沖縄建築賞】奨励賞 一般建築部門/「T Dental Frontier」(沖縄市)/小林進一氏(47)/コバヤシ401.Design room㈱/野村庸高氏(38)/アキアーキデザイン一級建築士事務所
県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全35作品の中から、第6回の入賞作品5点が決定した。一般建築部門奨励賞には小林進一氏(47)コバヤシ401.Design room㈱、野村庸高氏(38)アキアーキデザイン一級建築士事務所が設計した「T Dental Frontier」(沖縄市)が選ばれた
第6回沖縄建築賞入賞作決まる
「ハコ(個室)」と「路地(スージグヮー)」の構成が外観にも表れている
一般建築部門 奨励賞
「T Dental Frontier」(沖縄市)
ハコとスージグヮーで構成
洗練されたデザイン
幹線道路沿いに位置する歯科医院。診察室やオペ室などの個室を「ハコ」とし、その間に路地(スージグヮー)を走らせ、プライベートな診察空間を実現した。
外観にもハコとスージグワーの造りを反映させることで、大きいボリュームを分割してみせ、存在感は残しつつも圧迫感を軽減している。「ハコの大きさを操作することで、諸室に対する要望に応えている」。シンプルな造りだからこそ柔軟性があり、内外ともにスタイリッシュな印象を与える。
審査員は「構造や意匠的にはバランスがとれている。プランもよくまとまっていて、素材の使い方も洗練されている」と評価したものの「スージグヮーから視線や風が抜けたり、外とのつながりをもっと打ち出してほしかった」と指摘した。
廊下(スージグヮー)で各個室をつなぐ。スージグヮーが緩衝帯にもなっている
▼平面図
路地が街路を引き込む
設計者/(上)小林進一氏(47) コバヤシ401.Design room㈱
野村庸高氏(38)アキアーキデザイン一級建築士事務所
(小林)プレゼンテーションは緊張しましたが、奨励賞をもらえて光栄です。厳しい指摘もあったので、今後の建築に生かしたいです。
<審査講評 伊良波朝義氏>
沖縄の集落に残るスージグヮーは、樹木や石垣で適度に囲われ、その先に見えてくる空間を豊かにし心地よい風の通り道となる。個々の家を優しくつなぎつつ、まとまりのある集落を育む沖縄固有の重要なファクターとなっている。T Dental Frontierは、歯科診療を行うための診察室やオペ室、待合室等の個室(ハコ)がスージグヮーを介して結ばれることにより、プライベート性を高めつつ診療施設としてまとまりをつくりだしている。スージグヮーで切り離されたハコは、前面道路に対するランドマーク的な外観を表し、内部空間ではハコと一体となった空間と構造の一体化に好感がもてた。
杉板打ち放し仕上げとサッシの凹凸、木材との効果的な組み合わせなど、素材も含めた建築の完成度は審査委員から高い評価を得ていたが、建物周辺の琉球石灰岩敷や駐車場舗装など、ランドスケープとスージグヮーとのつながり方に一工夫あれば更に完成度の高い建築となったに違いない。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1814号・2020年10月9日紙面から掲載