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2025年5月23日更新

木のかおり ホッと和む|築65年のウチナー家 自然素材で全面改修|こだわリノベ

父親が管理していた築65年のウチナー家を「どうにか生かせないか」と、健康自然素材を用いたリノベーションを選んだ50代のKさん夫妻。「木のニオイが良く、体にも優しい。仕事から帰ってきてホッと和める家ができた」と喜ぶ。

リノベーション前

LDK。リノベ前は2間続きの和室で、祖父母が暮らしていた。隣の部屋との境は収納だった(下写真)。床と腰壁は杉材で仕上げ、ナチュラルで明るい空間に。構造上欠かせない柱と梁(はり)は表面に、杉板を張って統一感を出した

 改修前のお悩み 
賃貸として使っていたため、2Kの2部屋という造り。
老朽化しているが、まだ使えそう


非日常 楽しむ

Kさん宅は、瓦屋根のウチナー家。塗り替えたサファイアブルーの外壁が印象的だ。那覇市内ながら、住宅地の路地裏に位置し、庭や畑もあるため「自然が身近。鳥のさえずり、虫の音も聞こえて、隠れ家みたい」と妻は楽しげ。

元々は妻の祖父母の家。2Kの二部屋という造りで、一部屋を賃貸にしていた。退去後、管理していた父親から今後の相談を受け、「もったいないから、リフォームして住めれば」と考えた。子どもが巣立ち、夫妻二人でのアパート暮らしは、「隣の部屋を気にして、落ち着かなかった」。

リノベのテーマは「非日常」。仕事の疲れが癒やされる家を目指した。建材メーカーが独自の手法で熟成乾燥させた杉材、漆喰(しっくい)で仕上げた空間は「匂いも良く、木に触れるとエネルギーがチャージされる。アレルギーのある体にも優しく、ホッと和めます」。
 
リビング・ダイニングからキッチンを見る。杉板の床材は足触りがよく、愛猫のひっかき傷はお湯拭きすると、木材の風合いになじむそう
 
2間続きの和室をフローリングのリビング・ダイニングに変え、書斎は和室のままにし、寝室もフローリングに変えた。畳敷きの書斎につるしたハンモックで過ごす時間が、妻のお気に入り。迎え入れた保護猫の引っかき傷も、「勲章だし、暮らしの足跡ができた」とおおらかだ。
 
北側の書斎は畳を新調。左奥の洗面・家事室とオープンにつながる

手を加え 増す愛着

築年数の古さと袋小路に建っていることがネックとなり、数社に建て替えを勧められた。あきらめきれず、以前からネットで見ていた、健康自然素材でリノベを手がける建築会社に相談。「やりましょう! という社長の明るい一言がうれしかった」と妻。

県外にある建材メーカーの工場を夫妻で見学。「建材の違いを体感し、理想の家もイメージできた」。リノベを通じて、インテリア探しやディスプレーの手作りにも目覚めた。これからの楽しみは、庭の緑と畑を充実させること。
「手をかけることで家にも物にも愛着が湧く。小さな家で十分。収納が少ない分、工夫することが楽しみになりました」と、妻は笑顔で語った。
 

リノベーション前


庭に面したアマハジ空間。元々クリーム色だった杉板(左写真)は傷んだ部分を補修・取り替えて、鮮やかなサファイアブルーに塗り替え。ヌレエンの木板も一部を張り替え、塗装し直した
 

 Kさん宅 リノベのカギ 
元々の間取りと昔の雰囲気を生かしながら、
自然素材の魅力を存分に感じる仕上げ


2カ所の水回り 利活用

築65年ながら、管理とメンテナンスのおかげで傷みが少なかったKさん宅。室内は2Kのスペースが東西にある間取り。設計を手掛けた川上優さんは、費用と廃棄を抑えるため既存の2カ所の玄関、キッチン、トイレ、浴室を生かして新たな水回りを設けるリノベプランを提案。昔の雰囲気を残しながら、健康自然素材で安全かつ快適で、機能的な空間づくりに力を注いだ。

敷地出入り口に近い東側に玄関とLDK、トイレを配置。西側スペースに書斎と寝室、洗面・家事室、浴室を設け、公私を区分けした。屋根を支える耐震性を高めるため、屋根を支える柱を5本追加した。
 

リノベーション前

キッチンは元々のスペースを生かして設け、背面収納を充実させた。片流れ屋根のため、キッチンの天井は低い分、落ち着きのある空間に
 
リノベーション前

リノベ前の和室は2間続きで、左側に水回りがあった


南側の部屋は寝室に。壁と扉で完全に仕切って、個室化​

玄関。元々の土間の奥行きを利用して、キッチンとの間に壁を設けて、奥に収納スペースを確保した
 

リノベーション前

トイレは元々、床はタイル張り(右写真)。リビングから出入り口が丸見えにならないよう、仕切り壁を設けてスペースを拡張。壁は漆喰、床は板張りに変えた


リビングダイニングは、約12畳。構造上、抜くことができない柱と梁が部屋の中央にあった。「床、腰壁と同じ健康素材の杉板で表面を覆うことで統一感を図り、空間に溶け込ませました」と川上さん。

書斎は、子どもたちが帰省した際に寝泊まりできるよう畳にし、元キッチンだった空間に設けた家事室とはオープンにつながる。書斎脇に設けた寝室は、壁を設けて完全に個室化。書斎からもLDKからも出入りできる。

敷地は車道から奥まった袋小路にあり、前面道路は人が一人歩ける程度の路地。資材や機械の搬入、車両の駐車が課題だった。「近所の皆さんがスペースを提供するなど、協力的でした。住宅密集地では、近所付き合いもリノベ成功のカギだと言えます」。

 

[DATA]
家族構成:夫妻
躯体構造:木造(在来工法)
築 年 数 :65年
施工面積:62.1平方メートル(約19坪)
工  期:3カ月
設計・施工:(有)ラムハウジング


[問い合わせ先]
(有)ラムハウジング
電話=098・936・8808
https://lamb-housing.com/


取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2055号・2025年05月23日紙面から掲載

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比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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