お住まい拝見
2025年8月1日更新
[お住まい拝見]友人が集い遊べる家|アーキプログレス
[住宅地で空見ながら暮らす]
子どもたちの巣立ちを控え、「友人たちと遊べる家にしたかった」と話す50代のSさん夫妻。住宅地に建ちながら、3階にあるLDKは高窓から空、テラスから海を望む大空間。集いを楽しむ暮らしを満喫する。

3階LDK。床はタイル張り、壁は塗装仕上げ。窓やガラス戸で空間を仕切ることで、光と風を取り込み、開放的な空間に。ソファはSさんの実家から譲り受けてリメイクしたもの
家中絵になる
Sさん宅
RC造/自由設計/家族3人
宜野湾市の住宅密集地ながら、朝は鳥のさえずりで目覚め、夕方はテラスでBBQをしながら西海岸の夕景や週末の花火を楽しむ。3階建てだからこそ実現した、Sさん夫妻の理想の暮らし。海が見えるようにと、3階にLDKを設け、2階にプライベート空間と収納、水回りがまとまっている。
家づくりのテーマは、「海、空を見ながら暮らす」。黒枠の室内窓を間仕切りに使ったLDKは、カーテン無しで過ごせる開放的な空間。植物で彩られたキッチンに立つと、夜は高窓から月が見える。「思い出を大切にしたい」と、親から引き継いだソファ、探し求めて長く愛用するお気に入りの家具や照明が、白壁の空間で落ち着いた存在感を放つ。「家中どこも絵になる。暗くなるともっとすてき」と夫人はほほ笑む。

タイル張りの床はひんやり気持ちよく、すべりにくいため「愛犬の足の負担も減りました。ペットにも優しい家」。リビングに集い、ホームシアターで映画やスポーツを見るのが家族の楽しみ。友人を招いて、ワイワイ観戦することも増えた。長女、次女が巣立ち、三女も社会人。「いずれ夫婦二人に。友人が集まって遊べるよう、車庫のほかに駐車スペースを確保。ホームエレベーターを設置する準備も整えています」。
将来の楽しみも
海が見える場所に一戸建てを建てたい思いは、以前からあった。同市内で所有していた自宅兼アパートの建て替えを、設計を手がける高校の友人に相談した時期に、Sさんの父から土地を譲り受けることになり、新築を決めた。設計は気心の知れた友人に依頼。「願いを全部、かなえてもらいました」。
手持ちの家具を生かすため、室内は新築だけどリノベ風の雰囲気に。予算の関係で断念した屋上への階段設置は、将来の楽しみとして温めている。「家庭を持った娘たちが孫を連れて遊びにきたとき、屋上にテントを張って、BBQや花火をしたら楽しそう」。夢は膨らむ。


ここがポイント
開放感とプライバシー両立
住宅密集地に建つSさん宅は北西側に前面道路があり、三方は隣家が近接。家族や友人との時間を大切にする夫妻の暮らしに合わせ、設計した新垣直さんは「近隣の視線や雑踏は気にせず、海を眺めて過ごせるよう、LDKを3階に配置。寝室と水回りは2階にまとめ、上下階で公私の空間を分けました」。玄関のある1階は、車庫からも直接、出入りできる倉庫と簡易な水回りを設け、利便性を高めた。

3階リビング。階段室との仕切りは黒のアルミ格子が印象的な室内窓。白壁とのコントラストで、空間のアクセントになっている。天井にプロジェクターとスクリーンを設置。工程会議に専門業者も入り、スピーカーの位置までこだわった
3階のLDKはゆったり。隣家が近接する南側は高窓を取り付け、視線は遮りつつ陽光を取り込み、空も楽しめるようにした。一方、海を望む北西側は、道路側に奥行き2.7メートルのテラスを配置。ダイニングキッチンが道路から奥まった位置になり、掃き出し窓の大開口でもカーテンいらずの開放的な環境が生まれた。
2階は、家事動線に配慮。寝室東側に設けた室内物干し場は、洗濯機のある洗面室、ウオークインクローゼット、寝室へスムーズに出入りできる。また「上下階の移動が多いので、将来を見据えて家庭用エレベーターの設置スペースも準備しています」。
コストダウンの工夫もいろいろ。まず床は、土間にタイルを直張り。「建物全体の高さが抑えられ、躯体に使用するコンクリートの量、左官や型枠などの工事費が減らせます」。ホテルライクな大判タイルも、企業在庫を有効活用し、安価に入手。塗装で仕上げた内壁はメンテナンスが最小限で済むため、ランニングコストも抑えられる。

2階寝室はスッキリ広々。カーテンの奥(ベッド後ろ)に室内物干し場がある

2階フロアから見た階段。蹴上げ板を抜くことで、軽やかに。正面に設けられた窓から入った光がもれ、階下を明るく照らし出す

1階玄関ホール。地窓から見える外の植栽が彩りに。引き戸(左)の奥は大容量のシューズクローゼット

2階洗面室。壁面収納はシンプルに棚板のみとし、洗濯機も置いた
[DATA]
家族構成:夫妻、子ども1人
敷地面積:145.75平方メートル(44坪)
1階床面積:79.69平方メートル(24.1坪)
(車庫40.5平方メートル含む)
2階床面積:79.11平方メートル(23.93坪)
3階床面積:62.96平方メートル(19.05坪)
建ぺい率:54.67%(許容80%)
容積率:128.81%(許容240%)
用途地域:商業地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:アーキプログレス 新垣直
構造:さくら構造(株)
施工:(株)隆盛建設
電気:(株)にらい
水道:(株)花城工務店
アルミサッシ:(有)太陽アルミ工業
◆問い合わせ
アーキプログレス
電話=098・892・8867
https://www.archiprogress.jp
撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2065号・2025年8月1日紙面から掲載