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2025年5月30日更新

魅せる斜めの花ブロック|築48年の実家2階を 完全分離の子世帯に|こだわリノベ

玄関からキッチンへ向け、斜めに配された4枚の花ブロック壁が目をひく大城邸。築48年の実家2階を大胆にリノベーションし、完全分離型の2世帯住宅として生まれ変わらせた。建築を託したのは幼なじみの建築家。家族の記憶を継ぎながら、自分たちらしい理想の住まいを実現した。

リノベーション前

全体を無機質で洗練された空間に仕上げた大城さん宅のLDK。斜めに設置された花ブロック壁がアクセントになっている。壁の向こう側には寝室や子ども室があり、ゆるく目隠ししている

 改修前の希望 
実家2階の35坪を完全分離型の子世帯へ。
無機質で洗練された空間にしたい。


幼なじみに理想を託し

以前は1階に祖母、2階に両親が暮らしていた。2階には六つの個室、浴室やトイレがあり、長年の増改築で複雑な間取りになっていた。それを柱と梁(はり)の構造だけを残しスケルトン状態から改修。新築のような住空間が完成した。

リノベーションを依頼したのは、大城さんの幼なじみがいる設計事務所。「理想の家をつくるには、何でも話せる関係が必要だと思った」。生活感を排した無機質な内装、趣味の熱帯魚を育てるための幅3メートル水槽スペースの確保など、細部まで理想を共有した。

空間のアクセントとなっているのは、玄関からLDKに向け斜め110度で設置された「花ブロック壁」。ひんぷんのように、LDKとプライベートスペースを緩やかに区切る。夫人は当初その設置案に戸惑ったが、「家のアクセントにもなり、とても気に入っている」と笑顔を見せる。
 
キッチン側から見たLDK。ご主人が選んだシステムキッチンが無機質な空間にぴったり。樹脂素材のエバルトで本物の石のような手触りと質感を表現

そんな「斜め」ラインに合わせて造作されたダイニングテーブルと、大城さんが「素材や色が気に入って選んだ」というシステムキッチンが、より洗練度を上げる。キッチン背面は大容量のパントリー。使いやすさにこだわり、「急な来客にも扉を閉めれば生活感を見せずに済み、満足している」と夫人も語る。
 
リノベーション前
 

以前は個室が六つあり、壁が多く空間が細切れになっていた。
その壁を取り払い花ブロック壁で緩く仕切った。花ブロックは表裏で表情が違い、裏から見ると穴が小さい。「将来は壁のこちら側に板を設置してデスクスペースにしたい」
 

梁に刻む記憶と思い出

別の土地に新築するか、実家を建て替えるか、リノベするかで迷い、幼なじみに相談。耐久性のお墨付きをもらったことや「一人っ子だし、将来を考え実家を生かした二世帯住宅にした」と大城さん。共働きの夫妻にとって「下に両親が居てくれるのは助かる。子どもたちにも思い出を継いでいきたい」と夫人。あえて梁をむき出しにした空間には、家族の記憶と新たな暮らしが共存する。大城さんは「思い出の家に、自分たちの理想を重ねられた」と話した。
 

 大城さん宅の改修のポイント 
躯体の状態は良く、2階の広さも十分。
リノベにしたことで躯体費が浮いた分、
内装や設備に予算を掛けた


躯体費浮いた分 内装に費用

施主は親から譲り受けた土地もあり、そこに新築するか、実家を建て替えるか改修するかで迷っていた。

相談を受けたNDアーキテクトンの大城航平さんは「実家の躯体を確認したところ、状態は良かった。2階の床面積も約36坪あり、建築確認申請の届け出が不要な10平方メートル以下の増築で要望はかなえられる。リノベの方がいい、とアドバイスした」。しかし、施主は「リノベは制約が多そう、と不安があったようだ」。

航平さんはそれを否定。「新築や建て替えをすると、躯体に建築費の30~40%ほど掛かるが、リノベだとそれが不要になる。その分、室内にお金が掛けられ、細部までこだわりを反映できる」。さらに「耐力壁が少ない『ラーメン構造』だったため、ほとんどの壁や天井・床を取り払うことができる。間取り変更の自由度も高い」と背中を押した。

実際、「造作家具や内装にはかなりお金がかかっている」という。特に斜めのラインが印象的なダイニングテーブルは、「木で作った上からモールテックスというモルタル風の左官塗材で仕上げた。職人泣かせの1点モノ」と話す。
 

花ブロック壁の斜め110度ラインに合わせて造作したダイニングテーブルは、モルタル風の左官仕上げ材「モールテックス」製

花ブロックの壁は、施主が「どこかに使いたい」と言っていたのを大胆に使用。「間取り自体は、よく見る3LDK。だが花ブロック壁で斜めに分断することで個性が生まれ、洗練された印象になった。その壁の裏側にはデスク板を設置して、パソコンスペースにする予定」と、ほどよく目隠しされた空間を有効に使う。
 

昔から残る梁(はり)は「この家の歴史」と、きれいに塗装してむき出しにした。「家族の思い出が詰まったこの家で、新たな歴史をつむいでいってほしい」と航平さんは話した。

 

リノベーション前

4歳と2歳の男児2人が過ごす明るく広々とした子ども部屋。二部屋に仕切れるようになっている

 
リノベーション前

リノベ前の和室は2間続きで、左側に水回りがあった


ガラスの照明が幻想的なトイレ​

洗面台の鏡は、大城さんの要望から大小二つを高さをずらして配置。「左側は妻が化粧をするときに使うので低めにし、ものを置けるスペースを確保した」

 

高級感ある浴室はスタンプコンクリート仕上げで、石造りのような質感を演出。お手入れも簡単

 

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
築年数 :48年
2階床面積:118.08平方メートル(約35.7坪)
工 期:8カ月
設 計:(株)NDアーキテクトン 大城航平
施 工:(有)大洋建設 漢那憲佑
電 気:(有)開成電設 玉那覇祐亮
水 道:(有)山商 翁長文高
ガ ス:比謝川ガス(株) 源河寛


[問い合わせ先]
NDアーキテクトン
電話=098-958-3522
https://www.nd-arkhitekton.com/


撮影/泉公(ララフィルム) 取材/赤嶺初美・東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2056号・2025年05月30日紙面から掲載

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