お住まい拝見
2025年8月8日更新
[お住まい拝見]内外一体のデザイン|LSDdesign(株)
[外構や構造も「インテリア」]
建物の構造体である梁(はり)の斜めラインを内装デザインとしてあえて見せる。テラスには夫人の趣味の植栽スペースがあり、室内にも癒やしをもたらす。構造・外構・内装がデザイン的にも一体化し、センス良く暮らすT邸を訪ねた。

「LDKにもたっぷり収納がほしい」という夫人の要望から、リビングをダウンフロアにした。高低差を生かして下部収納を設けたほか、対面する造作キッチンの前面をテレビ台に。西側(正面)の大開口からはテラスの植栽や街路樹まで見通せ、LDKの彩りになっている
植栽も収納もたっぷり
Tさん宅
RC造/自由設計/家族3人
県道沿いの土地を相続したことが家づくりのきっかけ。1階が親世帯、主に2階がTさん世帯で、立地の良さを生かして1階の道路側には貸店舗も併設した。
Tさん世帯の玄関は1階にある。やや暗めの階段を上り、2階に入ると一気に視界が開ける。南西2面の窓からたっぷり光が入り「夕方はまぶしいくらい」と笑うTさん。

西側のテラスには造り付けの大きなコンクリート鉢があり、夫人が手塩に掛けたアガベやバショウなどが葉を広げる。室内から見るとサッシが額縁のように緑と借景を切り取り、癒やしの“インテリア”にもなっている。「妻はガーデニングが趣味で『植栽を楽しみたい』と希望し、僕は『バーベキューができる場所』をお願いしたことがテラスに凝縮されている」とTさん。
南側には腰窓が連なる。冊子に沿って造作した木枠はキャットウオークを兼ね、2匹の愛猫の日なたぼっこスペースにもなっている。

南側は一面に窓が連なる。窓の木枠はキャットウオークを兼ねる
キッチンも「家具」
印象的な斜めのソファは、1階の梁(はり)を活用。床を下げるために逆梁(スラブの上に梁を出す工法)にし、出てきた梁の上にクッションを乗せて造作した。真上の天井も同じ斜め梁を出し、構造体が内装デザインも兼ねる。

夫人はデザインの仕事をしており、自邸の設計は旧知の建築士に依頼。キッチンや造作家具などは夫人も図面を描いた。「見た目も重視した。キッチンは設備でなく家具の一つとして捉え、ほかの家具やインテリアとの調和を考慮した」と夫人。それを建築士がコストや機能性を考えてブラッシュアップ。そのかいあり細部までこだわりを反映させつつ、無駄のない理想の住まいを実現した。

ここがポイント
柱や梁に動き 内外近づける
Tさんは当初、平屋を希望していた。しかし地盤調査をしたところ、建物を支えるためには深くまで杭(くい)を打つ必要があると判明した。そこで「地盤接地面を減らすことを重視し、2階建てを勧めた。県道沿いで立地は良かったので、1階には店舗も併設し家賃収入を得られるよう提案した」とLSDデザインの建築士・比嘉幹さんは説明する。

Tさん世帯のLDKは2階。「生活空間を上階にするメリットは多い。眺望が開け、外からの視線が気になりにくい」と説明。特にTさん夫妻は「植栽スペースがほしい」「テラスでバーベキューをしたい」など、外部空間も重視していた。そのため「2階住居にしプライバシーを守りつつ、室内でも『外』を感じられる伸びやかな空間づくりを意識した」。
構造は重量を軽くするため、柱と梁で建物を支える「ラーメン構造」を採用。シンプルな長方形をベースに、長辺(北側と南側)に柱を3本ずつ配置した。そこから、南側の3本のうち中央以外の2本北側へずらして台形にし「店舗や住居への動線を確保した」。柱をずらしたことで「柱の外側なのに室内という空間ができる。内外の境界を曖昧にする効果も狙った」。
西側にテラスや大開口を配したのは「道を挟んだ先に学校のグラウンドがあり、大きな建物が建つ可能性が低いため」。外周に並ぶ木々も借景として取り込んだ。
その西側は柱やスラブをコンクリート打ち放しで仕上げ、柱は2階テラスから1階店舗へと連続させた。スラブ(庇(ひさし))もそのまま室内(天井)へと入り込んでいくように見せて「内外を密接化させた」=下写真。

柱を移動させたことで、柱同士をつなぐ梁(はり)が斜めになったことをデザイン的にも活用。2階は天井高を90センチ上げて斜め梁を見せて「内装デザインの一部」とした。さらに1階の梁は、2階リビングの床を下げるためスラブと梁の位置を通常と逆にし(スラブの上に梁が出る形)、2階にあらわしになった梁を造作ソファとして利用した。
「構造体をインテリアに見立てたり、環境を読み解くことで生まれる形やデザインを大切にしている」と比嘉さんは話した。

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人、猫2匹
敷地面積:209.67平方メートル(約63坪)
1階床面積:88.34平方メートル(約27坪)
※うち店舗部32.55平方メートル(約10坪)
2階床面積:105.14平方メートル(約32坪)
建ぺい率:47.21%(許容60%)
容 積 率 :92.27%(許容200%)
用途地域:第二種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリートラーメン造
設 計:LSDdesign(株) 比嘉幹・山岸広幸
構 造:LSDdesign(株) 本間真生
施 工:LSDdesign(株) 新里宜広
電 気:Plug
水 道:(株)Hys企画
◆問い合わせ
LSDdesign(株)
電話=098・894・4282
https://www.lsd-design.co.jp/
撮影/矢嶋健吾 文/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2066号・2025年8月8日紙面から掲載