お住まい拝見+
2025年3月28日更新
[お住まい拝見+]面影も機能もそのままで|一級建築士事務所あまはじ
このコーナーでは、巻頭企画「お住まい拝見」「こだわリノベ」で掲載しきれなかった設計の工夫や施主のこだわり、記者がおもしろいと感じたポイントなどを紹介します。
面影も機能もそのままで

リノベ前 仏間の左右にあった収納棚や内壁を取り払ったことで、風通し・視界は良好だ
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室内は手前の一・二番座から奥のLDKだけではなく、防風林で囲まれた庭まで、ひと続きでつながり非常に大らか
3月21日号「時の痕跡残して大らかに」藤野さん宅
一級建築士事務所あまはじ
一級建築士・藤野敬史さんは築50年の借家を、自宅兼建築士事務所にリノベーション。「極力加えず、逆に省く」を設計の軸に、既存民家の造り・面影を最大限残しながら、藤野さん家族が過ごしやすい空間となっていた。
その一つが、「小窓」。人が通り抜けられないサイズで、一・二番座の掃き出し窓の上部に設けられている。藤野さんは「雨の日でも開けたままにできるよう、庇(ひさし)が南側の庭にせり出している。熱気や湿気などを効果的に外に逃がす造り」と話す。エアコンが広く普及していなかった時代、快適に過ごせるための工夫だ。
また台所や茶の間(現LDK)の天井のみ取り払い、木の小屋組や今は製造されていないセメント瓦があらわになるようにしたほか、LDKの床は張り替え、壁は一部白く塗装した。50年前の雰囲気を壊さない素材や色を使ったことにより、「この民家が持っていた意匠になじみながら、時の痕跡を際立たせてくれる」と藤野さんは話した。

表座とLDKで天井高を変えつつも、木の軸材や欄間、セメント瓦は50年前のまま。藤野さんは「屋根裏には古民家に見られる『しびらんか』があるなど、改修を通して、沖縄建築の理解が深まった」と振り返る

天井を取り払い、木の構造美があらわに。縦方向にも広がりを感じられる

屋敷囲いのフクギが庭に影を落とし地表と空気を冷やすことで、涼風が室内を抜ける
撮影/比嘉秀明 取材/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2047号・2025年03月28日紙面「今月の表紙から・2025年3月」より掲載
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2047号・2025年03月28日紙面「今月の表紙から・2025年3月」より掲載